MONEY

子どもに「お金持ちになりたい」と言われたら?

社会的金融教育家・田内学さんと読者が対談!

【『きみのお金は誰のため』著者・田内学さんとLEE読者が対談】子どもにお金についてどう教えていけばいいですか?

2025.01.02

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悩めるLEE100人隊が、話題の“社会的”金融教育家に相談しました

Roundtable discussion マネー育座談会

「お金についてどう教えていけばいいですか?」

お金の早期教育が大事というけれども、一体どうすればいい? 小説『きみのお金は誰のため』の著者・田内さんとLEE読者たちが考えます。

社会的金融教育家 田内 学さん

教えてくれたのは?

田内 学さん

社会的金融教育家

1978年生まれ。東京大学工学部卒業後、同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2003年ゴールドマン・サックス証券株式に入社。’19年に退社後、社会的金融教育家として活動中。

発行部数25万部超えの大ヒットお金小説

きみのお金は誰のため

『きみのお金は誰のため』

中学生の優斗は〝ボス〞との交流を通じて、お金の価値や意味を知る。田内さんの金融教育観が詰まったお金をめぐる長編小説。(東洋経済新社)

TB はなさん

聞き手は?

TB はなさん

13歳と10歳の息子、8歳の娘がいる。目下の悩みは、長男のおこづかい教育。どういう形でいくら与えたらいいのかなど、基準が定まらないまま中学生に…。



No.053 ブルーさん

No.053 ブルーさん

8歳の息子と4歳の娘がいる。マネー育をしなければと思うも、「何をどうやって」すればいいのかわからず。また世に氾濫する投資情報にも、お疲れぎみ。

「マネー育迷子」になりがちな親世代。まずは何を知るべき?

わが家なりのお金ルールを模索中… TBはなさん マネー育って何をやるべきですか? ブルーさん お金への考え方は変化しています! 田内学さん

教えるのでなく親の普段からのお金とのかかわり方がマネー育になるんです

外資系投資会社に16年間勤務した後、「社会的金融教育家」として、お金と社会、さらにお金と人とのかかわりについてメッセージを発信し続けている田内さん。子育て中のブルーさん、はなさんとともに、子どもたちへのマネー育について考えてもらいました。

ブルー うちには8歳の息子と4歳の娘がいますが、子どもたちのマネー育に焦りがあります。金銭感覚の養い方についてはもちろん、最近では「子どもの頃から投資の知識も」といわれていますよね。親の私ですら、お金との付き合い方が見えていないのに。

はな わかる! うちも家族みんなで迷子状態です。夫は「老後のことを考えるとやっぱり投資はしたほうがいい」と、いろいろな金融商品を研究しているみたいなんですが、実際には彼が何を調べているのかよくわかっていません。

一方で私は中2の長男に対して「いまだにおこづかいを渡さずに欲しがったものを買ってあげているけど、それでいいの?」と悩んでいて…。家族みんなのお金に対する意識がバラバラの中、「投資も含めたマネー育を急げ!」といわれても、焦っちゃいますよね。

金融教育が話題になっていますが、それはお金の本質的な理解につながっていません

田内 お二人とも、お金の悩みにきちんと向き合っていますね。問題意識があるのは、とてもいいことだと思います。

金融の世界にいた僕からすると、投資の知識なんて、大人になってから学んだって遅くないですよ。ところが、「お金の教育」=「投資教育」だと思っている人も多い。大人が投資の勉強をするのはわかりますが、お金の稼ぎ方や使い方も理解できていない子どもが、投資の勉強をしても意味ないでしょう。そもそも本人が必要性を感じないことを教えても、身につきません。

焦る必要はないですよ。僕が一番にお伝えしたいことは、「不安に煽られないこと」です。現代社会では、不安を煽ることがビジネスの常套手段になっています。「みんなやっている」「やらないと損をする」こういった言葉に僕らは弱い。

その対象になりやすい代表例に、「投資」と「教育」があります。「投資教育」はその両方が入っているから、不安に駆られやすいんですよね。ちなみに僕は、証券会社にトレーダーとして採用されたのですが、最初は投資の知識はゼロでした。

お金の向こうには、「ありがとう」と言う人がいる

お金という道具を通して人はつながり、未来を作っていくのです

田内 そもそもお金は、誰かの役に立ったから得られるものです。昔も今も、人は一人では生きられないから、役割分担をしてきました。

そのうちに貨幣経済が発達して、知らない誰かとも役割分担をするようになった。お金を受け取るとき、その向こうには必ず「助けてもらった」「便利になった」と幸せを感じている人がいます。きれいごとではなく、「誰かの役に立つからお金はもらえる」と教えることが一番大事なんです。

昔と違い、「名前が知られている会社に入れれば、安泰」の時代ではありません。どんなに有名だったとしても需要が薄れてしまった会社や業種に、人はお金を払おうと思わないですからね。

それから子どもは投資するのではなく、される側の存在ではないでしょうか。お金を持たない子どもがマネーゲームをするのは、不思議な感じがしませんか?

ブルー 確かに! 私たち大人が多くの経験を与えたり、気づきを促して、未来を心豊かに生きていってほしい人たちが子どもですよね。なぜか「より儲けられる人間に育てなければ」と思い込み、プレッシャーを感じてました。

はな 私もです。一方で「稼ぐためのマネー術」などにも違和感があり、混乱してるのかも。

働くことはお金を稼ぐだけではなく、人の役に立つことで社会を支えることなんです

今の社会はお金に重きを置きすぎています

田内学さん

田内 儲けられる人間、おおいに結構ですよ。ただ、近道は「働いて稼げる力」を身につけること。これは〝人的資本〟ともいいます。人的資本を増やせる知識を吸収する場や、経験を積める場は用意したいですね。

最近の大学生には、バイトしてお金を貯めて投資を早く始めようとする人もいますが、人的資本を増やすために大学に通うのに、もったいない時間の使い方をするなあと感じます。お金を学ぶというのはお金の増やし方を学ぶことではなく、幸せのためにお金や時間、人的資本をいかに有効に使うかを学ぶことです。

自分軸を持ち、社会全体のお金について考えていく

田内 例えば家庭内で家事を分担するときは、基本設定としてお金の受け渡しはないですよね。

はな はい。子どもたちには、家事をした人に対して、まず感謝の気持ちを持ってほしいと思っています。といいつつ、実は悩みが…。

身の回りには「お手伝いをしたらおこづかいをあげる」家庭もあって。ひとつの方法として、お手伝いとおこづかいを合体させてもいいのか? でも金額の基準は誰が決めるの?など、モヤモヤしています。

田内 そのモヤモヤ、わかります。〝知らない誰か〟に協力をしてもらう、「見返り」として発明されたのがお金です。見返りがないと、家族のために協力しない子にはなってほしくないですよね。家族という集団の意味を考えつつ、おこづかいの金額も含めて、よく話し合ってみてください。

はな なるほど。家族で、あらためてお金について考えてみます。

田内 「経済」という言葉があります。これは「経世済民」の略称で、〝世の中を収めてみんなを救う〟という意味。この言葉に立ち返ってほしいんです。

お金に流されすぎない、お金持ちは人の役に立つからなれるもの、お金は道具で、みんなで支え合うために使うもの、と考えていきましょう。

ブルーはな そうですね!

Manabu Tauchi
“お金”について伝えたいこと

口先のマネー育よりも親が態度で示しましょう

「おこづかいは計画的に使おう」と教えても、親が浪費家では伝わりません。「大人になれば、好き勝手使えるんだ」と思うだけです。
親の生き方を子どもは見ています。生き方ですから、マネー育に正解はありません。
僕が、小説の中で一番伝えたかったのは、学校では学べないお金の「本質」です。その本質を知ったうえで、マネー育を通して、親自身も生き方を見つめ直してもらえたらと思います。

息子に「お金の本質」を伝えられました!

No.053 ブルーさん

No.053 ブルーさん

「田内さんのお話を聞き、焦りが整理できました。先日、息子が『お金持ちになったら何しようかな~』と言っていたので『お金持ちは誰かの役に立つ人がなるものだよ』と伝えたところ、彼なりにどんな社会貢献ができるかを考えていました。また私も再就職を検討中ですが、働くことへの目的が明らかになった気がします」(ブルーさん)

おこづかいを渡したら子どもの成長を実感!

TB はなさん

TB はなさん

「対談中に『おこづかいは家族で話し合って』とキッパリ言われたのが印象に残りました。その後、夫&長男と相談し、お手伝いの課金制ではなくて定額を渡すことに。『貯めるもよし、使うもよし。使い道を報告しなくてもOK』と伝えたところ、自立心や責任感が芽生えたみたい。今のところ、いい方向へ転じています」(はなさん)


Staff Credit

撮影/山崎ユミ イラストレーション/福田玲子 取材・文/石井絵里

こちらは2024年LEE12月号(11/7発売)「子どもに『お金持ちになりたい』と言われたら?」に掲載の記事です。

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