世界初ミュージカル化!『ケイン&アベル(ケインとアベル)』出演の松下洸平さん、松下優也さんにインタビュー
ベストセラー小説『ケイン&アベル』の世界初ミュージカル化が実現! 本ミュージカルの製作発表イベントが行われ、主要キャストが登壇。イベント終了後に、ドラマや映画、舞台などマルチに活躍し、今回ミュージカル初主演となるウィリアム・ケイン役の松下洸平さん、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』を始め、数多くのミュージカル作品に出演してきたアベル・ロスノフスキ役の松下優也さんに、単独取材を行いました。
世界初演となるミュージカルへの意気込み、熱い思いを語ってもらいました。苗字が同じだけではなく、デビューと初舞台も同じ時期という運命的な一致を見せた(松下)洸平さんと(松下)優也さん。音楽を志す者同士だから分かる音楽とミュージカルの関係や「どうやって相手と仲良くなる?」というコミュニケーション術についても語ってくれました。
ケイン&アベルとは?
イギリスの国民的作家ジェフリー・アーチャーのベストセラー小説『ケイン&アベル』。出生日が同じでありながらウィリアム・ケインは名家の息子、アベル・ロスノフスキはポーランドの孤児という対照的な生い立ちを持つ2人が出会い交錯する運命を描いた物語は、1979年の発表以降世界中で愛されてきました。そんな名作が世界初、オリジナル・ミュージカル作品として日本での上演が決定。音楽にはフランク・ワイルドホーン、脚本・演出にはダニエル・ゴールドスタインと世界有数のクリエイターが集結します。
交わらない同士の役だからこそ、相手を見る・理解することで自分が見える
―――まずオファーを受けた時の感想を教えてください。
松下洸平さん(以降、洸平):“僕でいいんですか?”とびっくりしました。そもそもデビューはミュージカルだったのですがミュージカル出演は7年ぶり。素晴らしいスタッフやキャストの方々と一緒に作品を作り上げられるのがとても楽しみです。原作を大切にしながらも、僕たちにしかできない『ケイン&アベル』を目指せたらと思います。
松下優也さん(以降、優也):事務所移籍後初のオファーだったので、とても嬉しかったです。世界的に有名なベストセラー小説『ケイン&アベル』の世界初ミュージカルということで緊張感もありますが、その緊張感を楽しみながらみんなで作品を作り上げたいです。
―――製作発表でもちらりとお話をされていましたが、お2人は会うのが今日で2度目なんですよね。初対面の印象や、今日お会いして改めて感じた印象を聞かせてもらえますか。
洸平:前回会ったのがポスター撮影の時ですれ違った程度だったのですが、今日ちゃんとお話したらとてもフランクな方で安心しました。僕と同じように音楽をジャンルを含めて近い場所でやっていて、同じ匂いがするな、僕と同じバイブスがあるなと思って。え、お酒って飲む?
優也:めっちゃ飲む! 量というよりも毎日飲みます(笑)。
洸平:僕も飲みに行くのは好きだし、飲みの場でしか話せないことってあるじゃないですか。お互いの本音だったりとか思っていることを作品作りをする上で話せたらいいなと思います。思ったことを言い合える関係性って、すごく大事だよね。一緒に食事したり飲みに行ったりして、作品のことも作品に関係ないことも音楽のことも話したいです。ミュージカル本編ではケインとアベルはなかなか交わらないんだけど、2人の信頼関係が大切だと思っていて。今日話してみて大丈夫そうだなと安心しています。
優也:僕の洸平さんのイメージは、穏やかで優しそうだなと。今日会って話してみたら、やっぱり超穏やかで超優しかった(笑)! 洸平さんの活動って、役者が片手間に音楽をやっている感じの表現ではないんです。そんな部分でもリスペクトできるし、歌い方や捉え方もすごく好きです。お酒を飲みながらいろいろ話せるのが楽しみだし、今は見えていない“ちょっと悪い”部分も引き出したいと思っています。きっと穏やかで優しいだけじゃないはずだから(笑)。
―――原作は世界的ベストセラーとして多くのファンから愛されています。原作を読んだ感想と、それを役にどう落とし込もうと思いましたか。
洸平:原作と、過去に放送されたドラマも少し見させてもらいました。ケインとアベルは生まれた日は同じだけど性格も違うし、生まれ育った場所や環境も違うから野心も違います。僕が演じるケインは裕福な家庭で育ったこともあり内に燃える炎がずっとあるタイプで、アベルは何度も苦しい目に遭いながらも這い上がってくるタイプ。対照的な2人が交わらずに終わり、最後に小さな友情だけが残るという物語がすごく面白いなと思いました。台本にも仲良くしているシーンなんて一つもないんですよ。それをどう作っていくのかが楽しみですね。
優也:今年2月にミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』でジョナサン・ジョースター(ジョジョ)をやらせてもらったのですが、ケインとアベルは、ジョジョとディオみたいだなと思っていました。別な人間だけれど2人で1人、表裏一体というか。作品を作っていく上で“自分はこうだ”と提示していくことも大事ですが、それ以上に相手を理解することで自分の役が分かりそうな気がしています。『ジョジョ~』を作っていく過程でも、それをすごく感じていましたから。2人のシーンは多くないですし、何か感動的なシーンがあるかと言えばそうでもないのですが、相手に自分の役のヒントが隠されていそうだなと思います。洸平くんのケインと対峙するのがとても楽しみです。
洸平:今手元にあるのは直訳された台本で、セリフをこれから微調整していく感じ。優也くんの言う通り、稽古をしながら相手の動きや仕草を確認して、その逆を責めることで自身の役と物語ができていくのかなと思います。歩き方、喋り方、座り方。そこからどう対照的な人物を作っていくのかが面白いと思います。2人が遠ければ遠いほど衝突する意味が分かると思うので、優也くんのことをしっかり見て、行動していきたいと思います。
相手を知るコミュニケーション術は「お酒を飲む」と「人の話を聞く」
―――ケインとアベル、対照的な2人だからこそ好みが分かれると思います。演じる役を抜きにして、ご自身はケインとアベル、どちらが好きでしょうか。
優也:人として好きなのはケインだけど、自分が演じるならアベルしかないかな。
洸平:へぇ~、僕は優也くんのケインもすごく見てみたい。
優也:正直(ケインを演じることは)全然想像できないんだけど、2人のマインドはすごく近いところにあると思っていて。メンタリティも自分自身とすごく近いところもあるので、どちらも思考から作り込んでいく必要がないくらいすんなりできる自信があります。
洸平:アベルは直感的であり、とても賢いからその両方を持っている人じゃないとできないと思うんです。優也くんはまさにそれがある人で、表立って見える強い野心と目的や目標を持って戦略的に進める頭脳派な部分、そして内側にある芯のある強さ。アベルはめちゃくちゃかっこいいですよね。僕自身も実はアベルの方が好きですね。どちらも魅力があるんですけど、大切な人を失ったり、悲しい出来事を乗り越えながらものし上がって行くアベルはかっこいいと思います。一方のケインは、裕福な家柄に生まれたことへのコンプレックスや敷かれたレールの上で生きて行かなければならない苦しみがあったりと、内に秘めた思いを感じる魅力的な人物。それを僕らしく表現していきたいと思います。
―――舞台作りの現場、人とのコミュニケーションにおいて「相手を知る」ことは重要だと思います。お2人は相手をよく知るためには、どんな方法でコミュニケーションを取りますか。
優也:やっぱりお酒を一緒に飲んだり、食事をしたりするのが早いと思います。稽古場では舞台を作るためのコミュニケーションが中心になってしまうから、世間話って意外とできないんですよね。だからこそ仕事以外の“ちゃんとしてない”部分が大事。洸平さんがお酒飲むと聞いて、ちょっと安心してます(笑)。
洸平:そうだよね、僕もプライベートの時間を共有するのは大切かなと思います。さっき言ってくれたように全然“毒”もあるから(笑)。そういうのを包み隠さず話せる相手がいるのは嬉しいです。僕の場合は、人の話をたくさん聞くことですね。相手の気持ちやどうしたいかをどこまで受け止められるかは置いておいて、まずは相手の話をしっかり聞くこと。自分と違う意見があれば、どうすり合わせていくのかも考えたいです。ものづくりをする上で、スタッフやキャスト、他の人からの意見に正解がある時があります。“絶対にこうだ”と思っていたら、実際やってみると“こっちの方が良かった”みたいなこともあって。すべてを跳ね除けずに、とりあえず言われたことはやってみる。人間関係もそれの積み重ねだと思っています。
優也:「もっと人の話を聞け!」と、自分に言われている言葉かなと思いました(笑)。僕の場合、自分のことを知ってもらうことが一番手っ取り早いのかなと思って。お酒を一緒に飲んで話して、腹の中を知ってもらって「そんな大した人間じゃないんだよ」と分かってもらえるとすごく楽になれるというか。だけどそうやって自分の話ばかりしてしまうと、見た目とかこの性格もあって「ちょっと怖そう」と思われることもあるから難しいよね。
洸平:そうなんだ。こんな優しそうな雰囲気なのに。
優也:今日は表向きの日だからね(笑)。あとは仕事場以外でコミュニケーションを取ることで、その人の人柄や考え方が知れることで、仕事場での発言や行動がより理解できるようになります。点と点をつないで線にする、みたいな。相手の思考が分かれば相手をより素直に、深く受け入れられるようになる。そういう意味で仕事場以外のコミュニケーションが必要かなと思っています。
稽古場=「遊び場」(優也さん)「失敗していい場所」(洸平さん)
―――稽古はこれからだと思いますが、どんな雰囲気になりそうですか。
優也:脚本と演出を手がけるダニエル・ゴールドスタインさんの動画が製作発表の時に流れたけど、すごく優しそうな雰囲気だったね。
洸平:優しそうだったよね。
優也:僕は稽古場は遊び場だと思っています。お客さんもいないし、いろいろ試して一番いいものをステージに持っていくための準備の場所。ステージはお客さんを迎えているから作り手の責任があるけれど、稽古場では責任はない。だからいろいろ試しますし、いろいろアイデアを出す。自分にとって稽古場は楽しむ場所です。
洸平:優也くんと似ていますけど、僕にとっての稽古場は失敗していい場所、失敗しに行く場所ですね。稽古場で失敗を重ねて、自分に何ができていないのか、何が足りないのかを見つけて、本番に一つでも残したくない。そう言う意味では何をやっていい場所だと思うし、トライすることが大切だと思います。
―――話が少しミュージカルから逸れますが、制作発表では2人の“運命的な共通点”について話されていました。詳しく教えてもらえますか。
優也:そうそう、Wikipediaで見たんだけど、洸平さんは2008年11月メジャーデビューなんだよね。僕も2008年11月のメジャーデビューなの。
洸平:本当に?
優也:そう、さらにびっくりなのが洸平さんの初舞台が2009年とあったんだけど、僕も2009年初舞台なの。
洸平:えええ! すごいね。
ミュージカル畑じゃない、同じ音楽を目指す2人だからできる新しいミュージカル表現
―――同時期にデビュー、そして初舞台とは運命的です。お2人は音楽と役者の仕事を並行しているのも共通していますが、音楽のジャンルにも共通点があるそうですね。
優也:僕らみたいな音楽をやっている人って、実はそう多くはないんです。好きなもの、マニアックな部分、いろいろなバランスを見ながら表現しているわけですが、最終的なアウトプットは多少の差があっても、すごく似ていますね。その辺りについてディープに話せる相手は貴重です。
洸平:さっき撮影の時にちょっと話したら、共通の友人が何人もいたよね。音楽の現場だとたくさんいるけど、こういう音楽以外の現場で会う人が音楽界隈の友達が一緒というのがあまりないので、とても嬉しいんです。
優也:『ケイン&アベル』は僕と洸平さんという、ミュージカル畑の人じゃない2人が新作を作っていきます。僕らだからできること、僕らの歌だからできることがあるんじゃないかと思っています。日本のミュージカルのイメージって、割と古典的でクラシックだと思いますが、世界的に見ればここ10年20年で大きく変わってきていて。例えば僕が出演させてもらった『イン・ザ・ハイツ』という作品は、ラテンやヒップホップが使われていて、同じ作曲家のリン=マニュエル・ミランダが作ったミュージカル『ハミルトン』はラップやR&Bもある。アリシア・キーズやマイケル・ジャクソンのミュージカルがあったりと、新しいミュージカルがどんどん増えている。昔から受け継がれている素晴らしいものも残しつつ、そこから新しいものを作っていく。洸平さんと僕の歌で、どんな新しいものが作れるのか。開拓者になった気持ちで、初演の僕たちにしかできないものを作りたいです。
洸平:僕も全く同じで、ミュージカルの経験が決して多いわけではない僕ら2人がキャスティングされたということは、新しい試みだと思うし、オリジナリティあふれるものができるんじゃないかなと思います。ベテランの山口祐一郎さん、咲妃みゆさん、知念里奈さんらが入ってくれる安心感もありながら、泥臭い僕らがどこまで面白く崩していけるか。楽しみにしていてください。
LEEweb読者へメッセージ
―――世界初演、お2人でしか見られない『ケイン&アベル』に期待が高まりますね! 最後に作品を楽しみにしているLEEwebに読者にメッセージをお願いします。
洸平:ミュージカルを普段ご覧にならない方も、ミュージカルファンの方も、『ケイン&アベル』は、本当に新しい作品になると思います。暇だから「今日はミュージカルを観よう」でもいいし、デートに使ってもらってもいいし。ラフな感じで、それぞれの目的に合わせて『ケインアベル』を愛していただければと思います。
優也:ミュージカル好きの方はぜひとも来てもらいたいですし、ふだん仕事、子育てにと、いろいろ忙しいと思うんですけど、息抜きは大事。息抜きにミュージカルは(価格が)高いかもしれませんが、人生が変わる可能性もあります。だからこそ、ちょっとだけ無理してでも見に来てもらえたら嬉しいです。僕らの新しい姿、ここにしかない『ケイン&アベル』をぜひ見守ってください。
ケイン&アベル
■東京公演
会場:東急シアターオーブ
公演:2025年1月22日(水)~2月16日(日)
チケット一般発売日:2024年11月23日(土)
■大阪公演
会場:大阪新歌舞伎座
公演:2025年2月23日(日)~3月2日(日)
Staff Credit
撮影/山﨑ユミ ヘア&メイク/宮田靖士(THYMON Inc.)(松下洸平さん)、礒野亜加梨(松下優也さん) スタイリスト/丸本達彦(松下洸平さん)、山本隆司(style³)(松下優也さん) 取材・文/武田由紀子
(松下洸平さん衣装)スーツ¥176000/BEAMS F(ビームスホールディングス)、その他、スタイリスト私物
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。