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石井絵里さん
ライター
女友達と4人で熱海へ。一人が持ってきた「UNO」に全員ドハマりし、観光よりも“ゲーム”の旅に!
『さいわい住むと人のいう』
菰野江名 ¥1870/ポプラ社
お屋敷の謎と、姉妹の愛に浸れるドラマティックな物語
皆さんは「お屋敷」って好きですか? 私・ライター石井は、大のお屋敷マニア。豪邸に縁のない人生を送っているせいか、“旧〇〇邸”的な建物を見つけると、興味津々&素通りできません。もちろん、小説でも大きな家が出てくる作品は大好物。今月の一冊は、そんな“お屋敷もの”のひとつとしても、興味をかき立ててくれます。
物語の舞台となるのは、東京から少し離れた地域に建てられた、とある邸宅。室内にはらせん階段やシャンデリア、書斎が設けられ、二階の部屋からは大きな桜の木を眺められる……という豪華さ。ところがこの家に住む80代の姉・桐子と、妹の百合子が、ほぼ同時期に亡くなります。姉妹が亡くなる2週間前に、たまたまこの家を訪れていた地域福祉課の若手男性職員・青葉は、初対面だった2人の、急な訃報にショックを受けることに。豪邸とはいえ「築20年ぐらい」で、姉妹が幼い頃から住んでいた家ではなく、青葉は初めて訪れた場所だったはずなのに、家や姉妹に不思議な懐かしさも覚えていたことにも戸惑いが。そして物語は桐子と百合子の姉妹の人生を、20年ごとに振り返っていくことに――。
ずっと独身&一人暮らしで、中学校の教員だった姉の桐子。そして約40年間、夫婦2人家庭の主婦だった百合子。戦争で両親を亡くし、唯一の肉親としてお互いを思いやりながらも、それぞれが「自分の幸せとは?」と、模索しながら生きていく姿に心を揺さぶられます。理想を目指して努力や挑戦を重ねる桐子と、与えられた環境に幸せを見いだす百合子。性格が異なるがゆえに、それぞれの選択に戸惑いを覚えることも。でも、どちらの生き方もちゃんと幸せで、2人の“よい部分”が、老年期からの同居へとつながるくだりには、じわりと感動が。数ある“お屋敷もの”の中でも、心地よいドラマを見せてくれるこの長編。そして「やっぱり邸宅には何か特別な物語がありそう……」と、お屋敷に対するさらなる妄想や憧れが、膨らんでやみません。
『ようやくカナダに行きまして』
光浦靖子 ¥1595/文藝春秋
50歳でカナダへ留学した、芸人の光浦靖子さん。コロナ禍真っただ中の’21年に出国し、3年を経た今もカナダに滞在中。人生初のホームステイ、語学学校に通ってあらためて感じた自分の性格についてなど、留学先での思いを書き連ねたエッセイ。笑えるエピソードを交えつつ、見知らぬ土地で奮闘する彼女に、励まされる! 人は何歳からでも挑戦できると思わせてくれます。
『さすがに日本は、戦争なんてしないですよね!?[そもそも戦争ってなんですか?]』
監修:西谷 修 ¥1760/東京新聞出版
子どもから「戦争って何?」と聞かれたら、どのように答えますか? 戦争ってよくないことだけど、それ以上にうまく伝えることが難しい問題。本書では戦争の定義や歴史、争いにブレーキをかける社会の動きから現在の日本を巡る世界情勢まで、対話形式で知っておきたいことをわかりやすく学べます。
『ことばの番人』
髙橋秀実 ¥1980/集英社インターナショナル
文章の正誤を確認する「校正」。この校正の仕事に携わる人へのインタビューを中心に、多くの文献や辞書をひも解き、日本語について考察したノンフィクション。話すことと書くことの違いとは何か? 書いたものと“正しさ”の認識のズレなど、私たちにとって身近な言葉への、気づきがいっぱい。校正者の細やかな仕事に驚きつつ、言葉の世界の奥深さが楽しめる一冊。
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2024年LEE12月号(11/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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