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『フィンランド くらしのレッスン』刊行記念! 週末北欧部chikaさんインタビュー【前編】

【週末北欧部chikaさん】休み下手な日本人必読!フィンランド人に学ぶ「上手な休み方」

  • ろこも子

2024.10.05

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フィンランド くらしのレッスン
『フィンランド くらしのレッスン』より

20歳のときに訪れたフィンランドに衝撃を受け「私、ここに移住する!」と決意し、フィンランド通いを13年以上続けた、自他ともに認める「フィンランドおたく」の週末北欧部chikaさん。大学卒業後は会社員として働きつつ「週末北欧部」としてフィンランドについてSNSで情報発信し『マイフィンランドルーティン100』シリーズ(ワニブックス)や『北欧こじらせ日記』シリーズ(世界文化社)等、フィンランド愛を凝縮したコミックエッセイを多数出版しています。移住を目指して寿司職人の修業を始め、2022年にはフィンランドの首都ヘルシンキのレストランに寿司職人として就職が決まり、念願の移住を果たします。

残念ながら勤務していたレストランは倒産してしまいましたが、現在は個人事業主としてフィンランドのビザを取得し、ヘルシンキで暮らすchikaさん。最新刊『フィンランド くらしのレッスン』(集英社)では、フィンランド移住を実現するまでは“仮暮らし”だから大型家具は買わない、住まいもアパートで……と“暮らし作り”を後回しにしてきた結果、念願のフィンランド暮らしを始めたものの「家具すらまともに選べない“暮らし初心者”になっていた」というchikaさんが、少しずつ「自分らしい暮らし」を学んでいく過程が描かれています。出版を記念してヘルシンキのchikaさんをリモートでインタビューしました!(この記事は前後編の前編です)

週末北欧部 chikaさん

LEEweb初登場!

週末北欧部 chikaさん

Shumatuhokuo-bu chika

作家

北欧好きをこじらせてしまった元会社員。大阪府出身。フィンランドが好き過ぎて12年以上通い続け、ディープな楽しみ方を味わいつくした自他ともに認めるフィンランドオタク。移住のために会社員生活のかたわら寿司職人の修業を始め、ついに2022年春に移住。モットーは「とりあえずやってみる」。好きなものは水辺、ねこ、酒、一人旅。著書に『マイフィンランドルーティン100』『北欧こじらせ日記』『北欧こじらせ日記 移住決定編』『かもめニッキ』『世界ともだち部』などがある。

観葉植物を置くためのスツールをDIY、家具を「買う」だけでなく「作る」という選択肢が新たに増えた

(chikaさんの着ているmarimekkoのウニッコ柄の洋服を見て)日本で見たことない配色ですね、初めて見ました。渋い配色だけど差し色でピンクが入っていて。

週末北欧部chikaさん(以下chika):ありがとうございます。そうなんです、派手すぎず着やすいです。ヘルシンキの街中でマダムがお召しになっているのを見かけて「素敵!」と気になっていたら見つけたので、買ってしまいました。

とってもお似合いです、お顔出しできないのが残念ですが(笑)。『フィンランド くらしのレッスン』では北欧デザインのインテリア用品を扱うショップ「Finnish Design Shop」のアドバイザーサービスを利用してインテリア選びのコツを教わったり、フィンランド人のお友達の部屋の素敵なアイデアを参考にして模様替えをしたり、その一部始終が描かれています。その後、何か新たに採り入れたインテリアやアイテムはありますか?

chika:インテリアアドバイザーさんに「ものを床に直置きするのではなく、何かに載せて目線を上げることで部屋が広く、整って見えますよ」と助言されて、観葉植物を置けるスツールを追加しました。元家具デザイナーのフィンランド人の友人に相談したら「自分で作れば?」とアドバイスされて。友人宅のDIYスペースを借りて、フィンランドでよく採れる白樺で小さなスツールを作りました。フィランドにはDIY用の作業スペースを設置している一軒家やアパートが多いんです。周囲のフィンランド人の友人がDIYをしている様子を見て「大変そうだな」と思ってたんですけど、いざやってみたら3時間ぐらいで完成して「やれば出来るんだ!」と。家具を「買う」だけでなく「作る」という選択肢が新たに増えた瞬間でした。フィンランドでは「古いものこそ価値がある」と、古いものも修繕しながら大事に使うんです。ちょっとお得に古いアパートを買ってDIYでリノベーションして使う人も多いですね。ちなみに今、私が住んでいるアパートも築100年です。

仕事は人生の一部、パートオブライフ。休みを取ることに固執する

フィンランドはDIYが盛んなようですね。現在も“仮暮らし”から脱却し、フィンランドに根を下ろしている真っ最中だと思いますが、それに伴う日々の戸惑いや喜びなどありますか?

chika:「夢を叶えるため、今が頑張りどき」「20代、30代のうちは打席に立て!」とずっと“仮暮らし”してきた余韻が、実は今もまだ残っていて。目に見えない、フィンランドの暮らしのリズムを少しずつ学んでいる真っ最中です。フィンランドでは年に一度、1カ月程度の長期休暇を取ることが一般的なのですが、いざ実践してみたら自分にはすごく難しくて。移住1年目は就職1年目でもあり、法律的に就職2年目以降でないと長期の有給休暇を取れないので、移住2年目で個人事業主になって初めて1カ月の休みを取ることになりました。が、個人事業主になった焦りもあって、予定していた夏休みを何度も延期してしまって。起業するタイミングでヘルシンキ市の起業アドバイザーさんに「起業家の方はおろそかにしがちですけど、一番大事なのは休暇を持つこと。熱心なのもいいですが、起業家が陥りがちなのはリソースを使い果たしてしまうこと。始めるのは簡単だけど続けるのは難しい、だからこそ休暇を取りましょう」と言われ、休暇をどう取るのかも教えてもらっていたんですけどね。

休暇の取り方、ぜひ知りたいです!

chika:「仕事を頑張るのと同じぐらい、休暇を取ることに固執してください」と。アドバイザーさんによると、健康状態は休暇開始1週間以上経ってから回復し始めるという研究データがあるそうです。なので年に一度長い休みを取るのがオススメだし、それが難しくても1日、2日とバラバラに休暇を取るのではなく、3日以上の連休を取るようにしましょうね、と。ヘルシンキ市のビジネス支援課が作成した起業マニュアルにも「休暇について」という項目がありました。

——自治体のアドバイザーさんが「休むことに固執してください」と、しかもエビデンスデータを出して説得してくるとは……日本と大違いですね。chikaさんご自身は日本で会社員として勤務していましたし、フィンランド移住後の最初の職場でシェフとして働いていた時期も繁忙期は1日12時間労働されていましたが、以前から「休み下手」という自覚はありましたか?

chika:はい、まさしく「休み下手」ですね(笑)。働くのが好き、ということもありますし、自己犠牲の上、身を削って長時間働くことや目標達成することで「自分は組織の中で役立っている」と実感することが癖付いてしまっていて。フィンランドに来た頃は(職場の共通語である)英語のレベルも、お寿司スキルも日本のレベルではまだまだだし、それをカバーするために「休まず働くこと」で頑張っていることをわかりやすく示す……となってしまって。でも職場で「“休まず長時間働く”以外のことで職場に貢献できているよ」とフォローされ、「休むことは誰しも必要で、あなたが休まないと他の人も休みづらくなるし、休んでもいい環境を作ることが大事なんだよ」とも言われました。

フィンランドでは「仕事は人生の一部、パートオブライフ」という考え方を持つ人が多く、働いていたレストランのボスの口癖でもありました。「仕事はもちろん大事だけど、一番大事なのは自分の人生と家族。だからこそ健康が大事だし、ちゃんと休もう」と、従業員の休みを積極的に調整してくれました。印象的だったのが「プライベートで辛いことがあって、それが仕事にも影響するのであれば、そういう状況であることだけは伝えてほしい、詳細は不要だから。そうすれば助け合えるから、正直に言おう」と言っていたこと。同僚が「彼氏と別れたから悲しくて働けない」と繁忙期に1週間休んでめっちゃ大変だったこともありましたが(笑)、何かあったときはお互い様だし良いルールだな、と思います。私も二日酔いの日には正直に「今日は本当に無理だから、何かあれば助けて欲しい」と申告していました(笑)。



“何もしない日”という予定を持ち、上手に休むフィンランド人

——(笑)フィンランド人に比べてどうにも休み下手な日本人に、フィンランド流の「上手な休み方・余暇の過ごし方」を教えてください。

chika:参考になったのが、フィンランド人の友人の「“何もしない日”という予定を持つこと」という考え方。例えば私が誰かに予定を聞かれたとき、カレンダーを見て何も予定がなければ「その日は大丈夫」と返答してたんですけど、フィンランド人の友人に予定を聞いたら「その日は予定があるんだ、“何もしない日”という予定がね」と返ってきて、それがすごく新鮮で。それまでは週末の予定を聞かれたとき「いい感じのやること」を返答したかったんですが、今は“何もしない日”を予定としてきちんと確保しています。土日のどちらかは必ず“何もしない日”にして、その日の気分で過ごし方を決める。家でのんびり過ごすのもいいし、海辺にピクニックに行ってもいいし、エネルギーがあれば電車やバスに飛び乗って日帰り旅行に行ってもいい。そういった自由を持つことがすごく大切だな、と感じています。

(インタビュー後編ではchikaさんおすすめ「フィンランド流・頑張らない日の夜ごはん」を教えてもらいます。お楽しみに!)

週末北欧部chikaさん最新刊!

『フィンランド くらしのレッスン』

移住の夢をかなえたら、「くらし」が私を待っていた!
北欧好きをこじらせた著者が、フィンランド式スタイル、考え方を学びながら、自分らしい生き方を見つけていくコミックエッセイ。

【目次】
LESSON 1  COMMUNICATION ……言葉にすること、余白を持つこと フィンランド人のコミュニケーション術
LESSON 2  WORK&CAREER ……自分らしい働き方とキャリア観
LESSON 3  CULTURE&NATURE ……自然や文化を知り楽しむ
LESSON 4  TIPS TO HAPPINESS ……心地よく暮らすための秘訣
LESSON 5  INTERIOR COORDINATION ……フィンランド風部屋づくりを学ぶ

ろこも子 LOCO MOCO

LEEwebコンテンツディレクター

出版社勤務を経てフリー編集ライターに。LEEwebのコンテンツディレクターをしつつ、書籍編集&WEB記事編集・執筆も。アラサーで結婚するも13年後に離婚、バツ1。ハワイ好きっぽい名前だけどハワイには行ったことすらありません。香港映画と1960年代邦画好き。似顔絵は漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんに描いていただきました。

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