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KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、石井さんの“推し”とも言える、陶製のかわいいアートについて。
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18.
[アート]Art
Ceramist:Mika Ichihashi
市橋美佳
Item:Ceramic art
陶製アート
愛せるアートとの出会いは「かわいい!」の直感を信じて
心惹かれるアートを目にしたときの私の反応は、けっこうテンション高めです。まさに、「きゃ~、かわいい!」といった感じ。特に、陶芸家・市橋美佳さんの作品を目の前にした場合には、それが顕著かもしれません。アートはすでにそこそこ持っているので、我を忘れるほど心が掻き立てられないと、実際手に入れるまでには至らないのです。
最初の出会いは、約2年前。左ページ右側の白い立体作品です。スタイリングに使うアートを探していたのですが、気づけば仕事を忘れて作品に見入っていました。幾何学的でありながら、まるで生き物を思わせるような佇まい。白一色の世界に漂う、ほんのりした温かさ。そのユニークな存在感に、目を惹かれずにはいられなかったのです。以来、展示があると聞けば足を運び、わが家には彼女の作品が着々と増えています。
彼女の姿勢が素敵なのは、形状を問わず、陶器という素材でさまざまな表現を見せてくれるところ。白の立体作品が強い印象を残す一方で、壁掛けの陶板で見せるのは、直線や円形を組み合わせた繊細な造形と絶妙な配色。一見するとフラットな表面に、釉薬でこまやかな凹凸が施されていて、そのディテールにもぐっとこずにはいられません。
アートは、知識がないと手を出しづらいものと思いがち。でも、そんなことにとらわれず、シンプルに「かわいい!」で手に入れるのも、きっと正解。市橋さんの作品を見ていると、そのことを実感するのです。
「糖蜜画」と市橋さんが名付けた、陶板の壁掛け作品シリーズ。いくつかの釉薬を使い分け、その上に上絵を何度も焼くという工程を重ねて仕上げられる。「触ってみると、凹凸の触感がとても心地いい。緻密に作られているけれど、作品が醸し出す空気はおおらかなのが魅力ですね」(石井佳苗さん)
洗面スペースにも小ぶりな陶板作品を1枚。「絵のように気軽に飾れるので、初めての立体アートとしても取り入れやすい存在。空間が、ギャラリーのように引き締まります」(石井佳苗さん)
Ceramist:
Mika Ichihashi
Japan, 2002~
幾何学的でいて、温かみやユニークさが漂う、彼女ならではの表現に夢中です
花器としての顔も持つ立体作品。陶芸家・市橋美佳さんは1999年に多治見市陶磁器意匠研究所を修了、生活用品メーカーでデザインに携わったのち独立。現在は岐阜県揖斐郡にアトリエを構える。日常使いの器、「鳴りモノ」と名付けた鈴などジャンルにとらわれない作品を発表。Instagram(ichihashi_mika)。10/30~11/4(中1日休み予定)に東京・新木場「CASICA」で開催される石井さんのポップアップイベントでも取り扱い予定。
Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2024年LEE10月号(9/6発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。
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