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将来もらえる年金額は? 5年に一度の試算でわかる【どうなる「年金」?】2024年夏は年金に注目!

  • 松崎のり子

2024.07.09

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5年に1度の「財政検証」が行われる年

今年は「年金の年」と言ってもいいでしょう。5年に一度の「財政検証」が行われるからです。

これは、「年金の健康診断」と言われるもので、今後の人口の増え方や経済の見通し等をもとに、将来の年金の給付水準がどうなっていきそうか試算をするもの。

もし出生率が改善し、働く現役世代が増えれば、経済は成長していき年金保険料を払う人も増えます。そうなれば年金財政も一安心。

が、残念ながら、少子化の流れは止まらず、15~64歳の生産年齢人口が増えていく未来は描きにくいですね。

財政検証では「所得代替率」と言って、現役世代の賃金に対して何割くらい受け取れるかを出すことになっています。

7月3日に出た結果を見ると、現在の経済成長が横ばいだった場合は、所得代替率が50.4%となりました。これは、2060年に年金をもらい始める世帯で月21.4万円ほど受け取れるという想定です。

また、実質賃金が1.7%のペースで進むという成長型経済移行のケースでは、2060年から受け取れる年金は月額33.8万円ほどになるということでした。

他に、もしこうなった場合は?というオプション試算も行われました。

話題になったのは国民年金(基礎年金)の保険料の納付期間を、今の60歳までから5年延ばし、65歳までに延長した場合の試算です。保険料の納付期間を延ばし、その分、給付額も増やすという考え方です。

企業に勤めている人の場合、60歳で定年を迎えても多くの人が再雇用等で働き続けています。60歳~65歳の人のうち7割以上が就労しているというデータもあり、現状に即して、年金保険料を納める期間も延ばせないか――というのですね。

今回の試算で期間の延長により基礎年金の給付は増えますが、負担が増える人が出たり、財源の問題などもあり、2025年の年金改正に盛り込むことは見送られることになりました。

パート労働者への厚生年金加入はますます進む

もう一つは、パートやアルバイトで働き、現在は厚生年金に加入していない人たちも、加入対象とする「適用拡大」を進めた場合の試算です。

現在は、従業員101人以上の企業で週に20時間以上働き、月8.8万円以上の収入がある人が、厚生年金に入ることができます。なお、今年10月からは、対象企業の条件が51人以上に拡大される予定です。

財政検証では、対象企業の規模や賃金の条件を撤廃し、誰でも加入できるようにした場合の試算も行われています。むろん、適用拡大を進めれば進めるほど、年金額の所得代替率も6割に近づいていきます(現状と横ばいの経済の場合)。

もし、多くのパート労働者が厚生年金に加入すれば、年金保険料を半分負担することにはなりますが、老後の年金額を増やせるのはメリット。平均寿命がどんどん延びる現状では、働けるうちに働き、年金を増やしておく方が安心といえるでしょう。

また、日本は慢性的な人手不足で、企業側は賃上げしないと人が集まらないため、今の106万円という賃金ハードルはすぐに超えてしまい、無意味になっていくでしょう。

「定年後も働く」「パートであっても週に20時間以上働き、月8.8万円以上の収入がある」というのは、決して珍しいケースではありません。そういう人たちに、年金保険料の負担をしてもらったら――という検討がされるのは自然な流れといえます。

年金は全員で支えるということを、改めて考えていかねばいけませんね。

松崎のり子 Noriko Matsuzaki

消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。

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