吉本ばなな、斧屋、ナカムラクニオ
【今月おすすめの本】神原一光『WOWとYeah 小室哲哉 起こせよ、ムーヴメント』他3編
2024.07.16
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今月の注目情報をお届け!
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石井絵里さん
ライター
90代の今も活躍中のイラストレーター・宇野亞喜良さんの展示へ。膨大な作品量に圧倒されました!
『WOWとYeah 小室哲哉 起こせよ、ムーヴメント』
神原一光 ¥1980/小学館
TRF、安室奈美恵、globe。小室哲哉サウンドの核に迫る!
1990年代半ばから後半にかけて、音楽プロデューサーとして時代を築いたTKこと小室哲哉さん。30~40代のLEE読者ならば、「彼の楽曲とともに育った」と言っても過言ではないはず。かくいう私、ライター・石井もその一人。膨大な量の新曲と、プロデュースされるグループや歌手の幅広さに「一体、いつ寝てるの?」と、思ったこともしばしば。カラオケは友人たちと楽曲を奪い合って歌っていました。マーク・パンサーのラップを“いかにそっくりに”表現するかも、みんなで頑張ったな……。
今月は、個人的にも敬愛するTKが、J‒POP史に足跡を残すまでの過程を語った、インタビュー本をご紹介。
小室さんは幼少期にバイオリンを習い、音楽に開眼。その後、日本のシンセサイザーミュージックの第一人者、冨田勲の楽曲に感銘を受けたそう。またロック、R&Bなど洋楽への見識も深めるうちに、「音楽を総合的に演出したい」と思うように。
そしてTM NETWORKの活動のかたわら、楽曲提供を積み重ね、日本初のテクノレイブグループtrf(現TRF)の演出と大ブレイクを経験。本著は、’90年代音楽シーンの中枢に昇りつめる頃の気持ち、華原朋美、安室奈美恵、globeなどの曲を「どう届けるか」工夫していた様子を語る。あの歌のイントロや詞にはこんな思いが、と、どの話題も胸熱。ちなみに私は、クラシックの要素が盛り込まれた華原朋美の楽曲が、上品で今も大好き。“華原さんは僕がプロデュースした以上の力で、自分の音楽を作り上げた”という話にも大感動。
昭和の昔、歌謡曲は職業作家が作り上げ、歌い手は彼らがイメージする姿に徹する例が多かったそう。そんなやり方を覆し、プロデュースされる側の個性と、その奥にある時代性を音と言葉に反映させたのが、TKのすごさ。天才音楽家の心の機微に触れながら、今、頑張っている自分のことを自分で褒めてあげよう。もちろん、H Jungle with tも大好きです!
『幸せへのセンサー』
吉本ばなな ¥1650/幻冬舎
デビュー小説『キッチン』から、一貫して“幸せ”について書き続けている著者。最新刊は「今、生きている中でどうやって幸福を感じるか」に焦点を当てたエッセイ。体の感覚を研ぎ澄ませる、時の流れに身をゆだねる、本当に落ち込んだときの乗り越え方など、著者自身の体験も交えた意見は、毎日を乗り越えるヒントに! 忙しい日々の中で、心のお守りになってくれそう。
『パフェとデートする。~ひとりパフェ活のすすめ~』
斧屋 ¥2200/集英社
SNSでも人気のパフェ評論家による、ひとりパフェ活の指南本。季節感がある食べ物ゆえに、カレンダーを作って毎月の活動計画を立てる、気になるお店をはしごするための“セットリスト”を作る、完全予約制の店をチェックする、コンビニパフェを味わう……など、いくつもの楽しみ方を伝授! 自分だけの特別な時間に“パフェとデート”をしたくなる一冊。
『こどもとできる やさしい金継ぎ』
ナカムラクニオ ¥2090/集英社
思い入れのある器が割れてしまうことはむしろチャンス!? 日本の伝統技法「金継ぎ」なら、割れてしまった器に新しい命を吹き込めます。子どもでも安全に修復ができるように、かぶれない“新うるし”を使用。読みがな付きの文章とわかりやすい手順の写真が多く、初めてでも失敗しない工夫がちりばめられています。「金継ぎ」をこの一冊から始めてみませんか。
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2024年LEE8・9月合併号(7/5発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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