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佐々木はる菜

駐妻ライター佐々木はる菜の 海外で見つけた「暮らしのヒント」Vol.21

タンゴと「結婚生活」の意外な共通点とは?40代が始めどき「アルゼンチンタンゴ」の魅力を、本場ブエノスアイレスからレポート

  • 佐々木はる菜

2024.05.25

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駐妻ライター佐々木はる菜の海外で見つけた「暮らしのヒント」
タンゴレッスンの様子

今私は、ブエノスアイレスでアルゼンチンタンゴを習っています。
…といっても、憧れのピンヒールでヨロヨロとしか歩けない超初心者ですが、姿勢や歩き方など体の変化に加え心にも良い影響が起きており、是非その魅力を伝えたい!と思うようになりました。

そこで今回は、タンゴの聖地ブエノスアイレスで「タンゴライフアドバイザー」として活躍する日本人女性AKANEさんのご協力を得て、おしゃれなタンゴシューズのお買い物や、タンゴ愛好者の集まるダンスホール「ミロンガ」にも潜入!
始めて間もない私のリアルな感想と現地レポートを交えつつ、「40代こそ始めどき」だというタンゴの魅力をお伝えします。

タンゴダンサーAKANEさん

教えてくださったのは…

AKANEさん

タンゴに魅せられ35歳でブエノスアイレスに留学。現地でタンゴダンサー・講師/タンゴライフアドバイザー/ライター・コラムニストとして活躍中。国際結婚を経て、現在は子育てに奮闘する一児の母でもある。

意外!実はおばあちゃんになっても楽しく続けられる「タンゴ」

「タンゴ」といえば、セクシーな衣装に身を包んだ女性とイケメンの男性がアクロバティックに踊る、色っぽい雰囲気のダンスというイメージがあるのではないでしょうか。私もまさか自分が習えるとは思ってもいませんでした。

タンゴショーの舞台
実際、何度か観に行ったタンゴショーはまさにそのイメージ通り!

でもそれらはあくまでもステージ向けの「ショーダンス」で、本来のアルゼンチンタンゴは人々が「ミロンガ」などで日常的に楽しむ「タンゴサロン」と呼ばれるもの。例えば90歳になる老夫婦が静かに寄り添って踊ることもできるようなダンスだと知り、興味を持ちました。
そのきっかけを作ってくださったのが、現在タンゴを習っているAKANEさんです。

おしゃれなピンヒールなど、テンションの上がるタンゴグッズ

タンゴを始めるにあたってまず楽しかったのが、タンゴシューズのお買い物!

タンゴの聖地だけにブエノスアイレスの街なかにはおしゃれなタンゴグッズのお店がたくさんあります。
ご自身が手探りで現地での生活を切り拓いてきたからこそ、街の情報やお店にも詳しく知人も多いAKANEさんに付き添っていただき、靴選びだけで1日3店舗も周って素敵なシューズに出会うことができました。

ミロンガへのお出かけや、日本だと発表会など、ドレスアップする機会が多いこともタンゴの楽しさのひとつだと話すAKANEさん。

「ドレス、アクセサリー、髪型やメイクなどを考えることは、いくつになってもワクワクするし日々の張り合いになりますよね。買うだけでなく衣装を手作りするなど、日本でも素敵なおしゃれをしてタンゴライフを楽しんでいる方々がたくさんいます」

タンゴダンサーAKANEさん
現地で活躍するプロの目線で選ぶ靴や衣装はエレガントかつ踊りやすいと評判。お買い物同行だけでなく、依頼者の方に合ったデザインやサイズを見立て、日本へ送るサービスも人気を集めています。


タンゴレッスンは自分の心身と向き合う貴重な時間

「歩く踊り」とも言われるタンゴの基本は「歩くこと」。まずはピンヒールで美しく歩けるようになることを目指します。

AKANEさんのレッスンで印象的だったのが「自分の体とおしゃべりしながら、どんな体の使い方をしているか感じてね」「どうやって足を出して、地面を踏みしめてる?その移動する過程も楽しんで」といった言葉。
私はこれまでそんな風に自分の体に注意を向けたことはありませんでした。
普段は、家事や仕事など常に頭の中が忙しいですが、自分の動きに集中している時間は頭が空っぽになり、それが貴重なリフレッシュにもなっていると感じます。

そして、太ももの内側や足の裏などの筋肉を意識してしっかり使うせいか、ただ歩いているだけなのにすぐじんわりと汗が出てきます。

「私は素敵に歩ける人は人生も素敵に歩いていけると思っています。普段は歩き方について深く考える機会はあまりないし、ウォーキングレッスンはモデルさんなど特別な人がやるものという印象が強いのではないでしょうか。でもヒールを20年以上履いているだろう大人の女性こそ、颯爽と歩けたらかっこいいですよね。普段の歩き方まで美しくなることも、タンゴを習う良さだと思います」

そんなAKANEさんの言葉通り、普段から姿勢や歩き方を意識するようになったことは嬉しい変化でした。

タンゴと「結婚生活」の意外な共通点

AKANEさんが出場したタンゴの舞台
AKANEさんが一時帰国中に行ったエキシビジョンの様子

決まった振付があるわけではなく、男性のリードを女性が受けながら即興で踊りを作っていくタンゴサロン。自分だけではなくパートナーの動きにも集中し、「相手と共に歩く」ことが大切だと考えられています。

AKANEさんはタンゴを始めて相手に集中する練習を繰り返す中で「誰かと共に歩くってこういうことなんだ!」とハッとしたといいます。

「真剣にタンゴを学ぶほどパートナーに求めることも増えていきます。若い時は人生についても『自分は一人で歩ける!』なんて思っていたこともあり、相手に変わってほしいと思いがちでした。でもタンゴの練習と年齢を重ねる中で『目の前の人と共により良く歩き踊るために、自分はどうしたら良いか』と考えるようになりました。すると相手を責めることはなくなり、相手に求めていたことが自分の課題になる。それって結婚生活や人間関係にも通じるものがありますよね」

「自分の軸」があるからこそ相手を尊重できる

「でもただ相手に合わせるだけでは、振り回されて自分が苦しくなってしまう。私が尊敬するタンゴダンサーたちは、どんな人と組んでも心地よい距離感で自分らしいタンゴを踊っています。それは、ちゃんと『自分の軸』を持っているから。素敵なタンゴを踊る人は、年齢に関わらず人間関係でも相手との距離の取り方が上手。だからいつも周りに人が集まっていて人気者ですよ!」

そんなふうに話すAKANEさんの「タンゴでも人生でも、まず自分の軸でしっかり立つことが大切。すると目の前の相手のことも尊重できる」という言葉は、私自身も結婚や子育てを経て40代に入ったからこそ、なおさら胸に響くものがありました。

ブエノスアイレスのミロンガの様子
AKANEさんに連れて行っていただいた本場のミロンガ「La Rosa Milonga」。こちらは日曜午後に開催のもので、比較的カジュアルな雰囲気なのだそう。オープン後1時間は、無料で簡単なレッスンを受けることもできます。

年を重ねても楽しめるタンゴは、40代こそ始めどき!

「タンゴは美しいものや綺麗なものだけでなく、踊りや音楽を通して人間の醜さや愚かさを表現することも大切に考えています。私はそういう『人間くささ』や哀愁にも惹かれてきたし、年を重ねることで若い頃はできなかった深みを出せる部分もある。実際にタンゴの競技会で80代過ぎのペアが若いダンサーたちを押さえて高い評価を得るなど、長く楽しめるだけでなく、人生経験を重ねていくことが魅力になる『懐の深いダンス』だと感じます」

ブエノスアイレスのミロンガに集まる世界中の人々

タンゴの聖地ブエノスアイレスの「La Rosa Milonga」で目にした、さまざまな国籍の老若男女が集まりタンゴを楽しんでいる様子は圧巻!
世界中で踊られているからこそ「タンゴはパスポート」という言葉があるそうですが、違う考えを持った相手と手を取り合い、国や年齢を越えて共に歩くことができるタンゴの魅力を垣間見せていただきました。

まだまだ体が動き、でもそれなりに人生経験も重ねてきた40代は、タンゴを始めるのにぴったり!奥深いですが間口は広く、まずは音楽を聴きながら歩くことから始められるので、アルゼンチンでは数回レッスンを受けただけでミロンガに遊びに来る方もたくさんいて幅広い楽しみ方ができます。それに人生100年時代、今から始めたら何十年も楽しめるし、自分の足で歩くから健康寿命も長くなるはず(笑)
 日本にもレッスンやミロンガなどタンゴを楽しむ場所はたくさんあります。もし興味を持たれたら、まずは自分が素敵だなと思う先生や教室を見つけることから始めてみてください!」

超初心者にも関わらず私がタンゴに心惹かれているのは、美しさと哀愁を併せ持つ独特の雰囲気に加え、「長い人生に寄り添ってくれる、懐の深いダンス」だと教えていただいたから。
まずはちゃんとピンヒールで素敵に歩けるよう、自分の心身と向き合いながら練習を重ねたいと思います!

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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