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映画『碁盤斬り』に出演

【草彅 剛さんインタビュー】最後に感じるすがすがしさの中に大事なものが隠されている

2024.05.22

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最後に感じるすがすがしさの中に大事なものが隠されている

草彅 剛さん

草彅 剛さん
ジャケット¥352000(パンツとのセット価格)・ネクタイ¥28600/カナーリ シャツ/スタイリスト私物

朝ドラ『ブギウギ』ではヒロインの恩師・羽鳥先生を軽妙洒脱に演じ、日本中を笑いとリズムで包み込んだ草彅剛さん。「ウ~ンウ~ンと思い悩む格之進を演じた後だから、反動とギャップで羽鳥さんがよりフワッとなったのかもしれないな」と草彅さんが引き合いに出すのは、主演映画『碁盤斬り』で演じた武士・柳田格之進。自分の汚名と妻を死に至らしめた恨みを晴らすため、命がけで仇討ちに身を投じるという鬼気迫る演技で、観る者の目をくぎづけにします。

「なんの準備も役作りもしなかったのに、観たらちゃんと格之進になっていて、“俺スゲーじゃん”と思いました(笑)。いや、やっぱり京都撮影所の持つグルーヴの力だね」

相変わらず飄々(ひょうひょう)と力の抜けた発言で笑わせてくれる草彅さんですが、だからこそ余計に“天然と天才”という対極の面を併せ持つ、唯一無二の魅力がきわだちます。しかも、格之進への共感はゼロだと言います。

「演じながら“この人、イヤだな”と思って。可愛い娘がいるのだから、あの長屋で穏やかに暮らしていけばいいじゃないですか。それなのに昼から切腹しようとしたり、仇討ちにこだわったり。彼にすごくイライラしたのが、逆にいい感じに(格之進らしさに)つながったのかもしれないな」

確かに観る私たちも“何もそこまで……”と感じるかも。けれど実直な生き方を貫いてきた格之進には、それ以外の道はなかったのでしょう。

「今の時代からすると理解が追いつかないけれど、最後まで清く生きようとする格之進を何カ月も演じて、イライラもしたけれど撮影終盤にラストシーン前後を撮ったとき、なんか悪くなかったんですよ。どこかすがすがしい気持ちになれた。あぁ、この作品には僕らにとって大事なものが、たくさん隠されているんだなと感じましたね。だからといって、それが何かはわからないけど(笑)」

本作の監督は『凪待ち』『凶悪』『孤狼の血』のほか、話題作を連発している気鋭の白石和彌さんです。

「実は“新しい地図”を立ち上げた直後、(香取)慎吾ちゃんが『凪待ち』に出て。あの人見知りの慎吾ちゃんがすごく仲よさそうにしていたので、珍しいなと。“頭がよくて優しい監督”と聞いて、とても気になっていたんです。それもあって距離もすぐ縮まり、とても楽しい現場でした。監督は碁を打つ手のアップなど、撮り方にすごくこだわりがある方。だから過去のバイオレンス作品も、あんなに美しい画が撮れるのかと納得がいって。僕も大きな刺激を受け、満足のいく作品になりました」

主演のドラマや舞台や映画に、さらに朝ドラまで加わって、昨年から大活躍が続きます。

「こんな豪華キャストがそろった本作をはじめ魅力的なお仕事ばかりで、どれも断る理由なんてなくて。本当に幸せな奴だなって、自分でも思います。それに(愛犬の)クルミちゃんとレオン君のごはん代も、稼がなきゃならないからね!」

そんな多忙な草彅さんが心地よく過ごせる“おうちのこだわり”について聞きました。

「大好きなヴィンテージ・ジーンズと同様、家具もヴィンテージに惹かれます。特に北欧家具。誰かが使っていたものだけど、しっかりしていて、たとえ汚したり傷をつけても、それさえ味になる。そういうものがやっぱり好きなんですよね」

PROFILE

1974年7月9日、埼玉県出身。1991年にCDデビュー。近年の代表作に映画『台風家族』(’19年)、『ミッドナイトスワン』(’20年)、大河ドラマ『青天を衝け』(’21年)、連続テレビ小説『ブギウギ』(’23〜’24年)、舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』(’20年、’21~’22年)、『シラの恋文』(’23~’24年)ほか広く活躍。
Instagram:tsuyoshikusanagi_official
X:ksngtysofficial
公式サイト:https://contents.atarashiichizu.com/?page_id=28

『碁盤斬り』

『碁盤斬り』
©2024「碁盤斬り」製作委員会

身に覚えのない罪で彦根藩を追われ、妻も喪った柳田格之進(草彅剛)は、娘のお絹(清原果耶)と江戸の貧乏長屋で暮らしている。そんな格之進は囲碁の達人で、碁の勝負にも実直な人柄が表れる。ある日、冤罪事件の真相を知った彼は、自分を陥れた柴田兵庫(斎藤工)へ復讐を誓い、武士の誇りをかけ、仇討ちの旅に出る。5月17日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。

Staff Credit

撮影/木村 敦 ヘア&メイク/荒川英亮 スタイリスト/細見佳代(ZEN creative) 取材・文/折田千鶴子
こちらは2024年LEE6月号(5/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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