実用性と美しさを両立させたシンプルなデザイン
「エレファント スツール」背伸びせず手に入れられる昭和の名作【石井佳苗さんのインテリア名品】
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石井佳苗
2024.04.23
連載
KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、日本が誇るプロダクトデザイナー・柳宗理の作品をあらためて。
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14.
[スツール]Stool
Designer:Sori Yanagi
柳 宗理
Item:Elephant Stool
エレファント スツール
室内はもちろん、水回りや屋外でも。背伸びせず手に入れられる昭和の名作
実用的なものほど、美しさを大切にしたいと思っています。毎日使い、目にするからこそ、それが気持ちのありように影響する気がしてならないのです。
例えば、バスルームの椅子。必要ではあるけれど、専用に作られたものはなかなかしっくりきません。こればかりは、水場で使うアイテムだけに素材も重要。デザインだけで選ぶわけにはいかないし……と迷っていたところ、ふと思い出したのです。昭和の時代に生まれた、この名作スツールの存在を!
手がけたのは、言わずと知れた柳宗理。思想家の柳宗悦を父に持ち、民藝運動の指導者として知られるデザイナーです。戦後日本において、インダストリアルデザインという概念を確立した人物であり、このエレファント スツールをはじめ、同様に名作として知られるバタフライスツール、キッチンボウル、フライパン、カトラリーなど、使いやすさと美しさを併せ持つ作品を多く生み出したことでも知られています。
柳作品すべてに共通することですが、主張しすぎることなく暮らしに溶け込みながら、あらためて見れば、とても美しいフォルム。このスツールも、三角形の座面と三本脚のバランスが絶妙です。実用的でありながら、ただそこにあるだけで空気が変わるほどの存在感。加えて、日常に取り入れやすい価格。日々の暮らしを美しく豊かにするという、本当の贅沢を知る一歩にもふさわしいアイテムだと感じています。
石井さん宅では浴室で使用。「わが家は来客も使う洗面スペースから浴室が見えるので、デザインも重視する必要が。座面に水はけの穴がないから若干お湯がたまるものの、くぼみがあることで安定して座れ、実用面でも文句なしです」(石井佳苗さん)
丈夫で軽いポリプロピレン製で、屋外に置けるのも人気の理由。「スタッキングできるので、いくつかそろえてガーデンチェアとして使っても。時にはサイドテーブルとして使うこともできるし、本当に使い勝手のいいアイテムです」(石井佳苗さん)
Designer:
Sori Yanagi
Japan, 1954
実用性と美しさを見事に両立させたシンプルながら、類なきデザイン
その名は、たたずまいがまるで象のようであることから。世界初の完全一体型成形のプラスチックスツールとしても知られる。誕生当初はコトブキ社によって制作され、後に廃番。2004年に、ヴィトラにより復刻。クリーム色は石井さんの私物。(各)¥17600/ヴィトラ
Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2024年LEE5月号(4/6発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。
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