子どもたちのためになるかどうかを判断の基準に
PTA会長を経験。芸人・ヤナギブソンさんが「キッズファースト」で取り組んだ活動とは?
2024.04.08
声に出せば、行動すれば
ちょっとずつでも変わる!
みんなのPTA奮闘記
昭和の時代から脈々と引き継がれてきたPTAのルールややり方に、これおかしくない?と疑問を感じ、それぞれのやり方で、よりよいほうにと動いたヤナギブソンさんにインタビュー。理想のPTAとは、どんな形なのでしょう?
「キッズファースト」の目線で必要のない役目は取りやめに!
芸人
ヤナギブソンさん
●1976年生まれ、大阪府出身。2002年よりザ・プラン9のメンバーとして活躍。舞台のほか『かんさい情報ネットten.』(ytv)などにも出演。
Instagram:yanagib
X:realyanagibson
公式サイト:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=88
Interview
子どもたちのためになるかどうかを判断の基準に
’21年に、小学校のPTA会長を務めたヤナギブソンさん。「PTAに関する知識も経験もまったくなかった」ところから、なぜ会長に?
「僕は、もともと子どもが好きで、教育という分野にも興味を持っていたんです。前年にPTA役員をやっていた妻から『次に会長を引き受けてくれる人がいなくて困っている』という話を聞いて、『ほんならやるよ!』と。不安やプレッシャーは感じなかったですね。引き継ぎのときに、とんでもない量の書類を渡されたときはびっくりしましたけど(笑)。幸い、副会長さんが経験も熱意もある方だったので、かなり助けていただきました」
具体的には、どのような活動に取り組んだのでしょうか。
「最初にしたのは、スローガンを掲げること。とにかく子どもたちのことを第一に考えようと、『キッズファースト』に決めました。子どもたちのためになるならやりましょう、そうでないならやめましょう、と活動の方向性を明確にしたかったんです。その年は、学校が周年を迎える節目だったので、本当は芸人仲間を呼んだりして楽しいイベントを企画したかったんですが……世の中はコロナ禍で厳戒態勢。制限が多かったのはもどかしかったですね。
そんな中でもできることを探って、風船飛ばし、航空写真の撮影、全校生徒の手形を押した横断幕作り、といった催しはなんとか実現できました。平日の朝から、黙々と手作業で横断幕の布に穴を開けたり金具をつけたり。真夏にエアコンのない講堂でやっていたので、地獄のような暑さ(笑)! でも学校の様子を知れたり用務員さんと親しくなれたりと、おもしろい体験もできましたよ」
一方、PTAの組織に独自のアプローチを行ったエピソードも。
「うちのPTAには、“地区委員”という役職があったんです。主な仕事は、旗振りなどをして通学時の子どもたちを見守ることなんですが、どうも人気がないらしい。話を聞くと、地区委員は地域の飲み会に出席必須という慣習があったみたいで。それこそ『キッズファースト』から外れているので、やめようと提案して、本来の仕事を行う“通学委員”に変えました。僕は、知らないことだらけやけど、誰とでも平気で話せるタイプ。このときも文科省に直接電話して教えていただいたんですよ。『通学時の安全確保って、どういう仕組みになっているんですか?』って」
少しだけ動いてみたら、何かがちょっと変わるかも
子どもたちへの思いを軸に、コミュニケーション力と行動力を駆使して、任期満了。自然体で淡々と振り返りますが、企画や改革をするのは大仕事だったのでは──。
「いえいえ、僕は何もできなかったと思っているので。コロナ禍で行事はほとんどなくなったし、改革も1年では難しいと実感。PTAって、『1年我慢すれば終わる』と思われがちじゃないですか。『終わってよかった』と感じられる組織であってはいけないのに、ただ踏襲するばかりじゃ何も変わらない。そこがPTAの課題やと思います。中には本当に役員をやりたいと思っている方もいらっしゃるので、そういう方を中心に前向きな組織になっていくといいですよね。
これから挑戦される方は、『明らかにおかしい』『変えたほうがいい』と思うことがあれば、まず仲間を増やしていただいて。それからちょっと勇気を出して、会長さんや校長先生と話す機会を持つなど、少しだけでも動いてみると、気持ちも変わって手ごたえも感じられるんじゃないでしょうか」
今、ヤナギブソンさんのビジョンはさらに広がっているようです。
「“教育”をはじめ、子どもたちの環境づくりへの関心が高まりました。僕は子どもの頃にお笑いに出会って、テレビで漫才を見たり学園祭でネタをやったりするうちに、『将来は芸人になろう』と考えるようになったんです。そんなふうに、いろんな夢を持つ子どもたちの才能や情熱を引き出せる社会を作っていけたら、と。
例えば、スポーツや将棋の世界では、小さい頃から能力を伸ばす環境が整っている。同じように、医療や法律やITといった分野でも、知識や情報の吸収力が凄まじい小中学生のうちから、専門的な勉強ができる環境を整えられると、未来はもっとすごいものになるはず! 今後は、PTAに関してはもちろん、大きな意味での教育についても、僕なりの考えをメディアや講演を通して伝えていきたいです」
私がやったこと、続けたいこと
- 子どものためになることはやる。不要な業務は撤廃
- PTA活動や教育環境がよりよくなる発信をしたい
Staff Credit
撮影/石川奈都子 取材・原文/藤本幸授美
こちらは2024年LEE5月号(4/6発売)「令和のPTA、進化しています!」に掲載の記事です。
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