私のウェルネスを探して/肉乃小路ニクヨさんインタビュー前編
肉乃小路ニクヨさんが「女性に優秀な人が多いのは家事のPDCAサイクルを回しているから」と分析する理由
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LEE編集部
2024.01.29
今回のゲストは、経済愛好家でコラムニスト、ニューレディーの肉乃小路ニクヨさんです。ニクヨさんは大学卒業後に金融業に10年以上携わり、その経験を活かし“お金のプロ”として発信を続けてきました。ニクヨさん初の著書『確実にお金を増やして、自由な私を生きる! 元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方』(KADOKAWA)が昨年10月に発売されました。
前半では、ニクヨさんがお金を好きになったきっかけから、みんなに知ってもらいたい“お金にまつわる作法”、お金を使うときのルールについてお聞きします。実は家事には経済にも通じる女性を強くする理由があるとか。年初めだからこそ見直したい、生活や自己投資について考える良いきっかけになるはずです。(この記事は全2回の第1回目です)
子どもの頃からお金にまつわる数字やニュースに関心。数字と経済がつながっていくのが面白い
肉乃小路ニクヨさんは、小さい頃からテレビや新聞が大好きでした。「プロ野球選手の年俸○億円」「株価が○円下落」「政治家の給料」といったお金にまつわる数字、ニュースに興味があったそうです。
「昔は野球が好きでよく見ていました。野球って、数字がたくさん出てくるスポーツなんです。打率、勝率、ホームラン数、勝ち点、球場の大きさ、観客数。当時は選手の年棒だけ見ても“読売ジャイアンツってすごいなあ”と思って。でもなぜジャイアンツはお金を持ってるんだろうと考えてみると、本拠地となる球場が東京ドーム。その観客数を見ると5万5000人。それに対して、他のチームの球場は観客数が少ない。プロ野球って、経営の小さなお手本なんですね。そんなふうに数字と経済がつながっていくのを面白く見ていました」
祖母が洋品店を営んでいたので、レジのお金のやりとりや銀行でお金を両替している様子を見るのも好きだったそうです。高校は進学校へ進み、大学は慶應義塾大学総合政策学部へ。卒業後には証券会社に入社。その後、銀行、保険会社などを経て、お金にまつわる知識と経験を積み重ね、2017年に独立。以降、お金のプロとしてメディアでの発信を続けてきました。
お金はたくさんの出会いとチャンスをくれる。使うときのポイントは「どうしたら自分が幸せになれるか」
ニクヨさんがお金が好きな理由は、「たくさんの出会いとチャンスをくれるから」。お金はどう使うかが大事で、使うときのポイントは「どうしたら自分が幸せになれるか」。そのためのお金の貯め方、使い方、稼ぎ方、増やし方のポイントをまとめた本が『確実にお金を増やして、自由な私を生きる! 元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方』(KADOKAWA)です。
「例えば、“お金を貯めたい”と思っても、貯める前に“使い方”を気をつけないといけないし、そのためには“稼ぎ方”を変えないといけない。“増やす”には原資が必要です。それぞれを分けることはできないので、その関連性を解きながら分かりやすくまとめた本です」
“お金を扱うお作法”の解説書とも言えるこの本は、LEE世代はもちろん、20代30代の人も、楽しく読み進めながら自然とお金が集まる構造を知ることができます。そして、生きるのがより楽しくなる方法を教えてくれます。本の中では、月給別の支出シミュレーション、年代別のお金を増やすシミュレーションも紹介。LEE世代にも多い〈40代会社員、子ども2人〉の“増やす”例はこちら。
- 目標は、夫婦で1000万円の貯金
- 毎月6万6000円分ずつ「つみたてNISA」の全世界型株式のインデックス連動ファンドへ
- 毎月4万円を「iDeco」で日経平均株価連動の株式型投資信託を など
「増やすのは簡単ではありませんが、きちんと選べば年利4%くらいならうまく回せることが多い。銀行に預けて1円も増えないよりも、投資に回した方がいいんじゃないですかという提案です。“この株を買いなさい”“この株を買えば2倍に”とは言いません。世界のお金持ちも年利4%か5%あたりで回せていれば十分だと考えています。増やすことに過度な期待は持たない方がいいんですよ」
お金を増やすためにはまず「稼ぐ力」をつける。報酬に納得がいかないなら、働く業界を変えてもいい
増やす前に大切なことが“稼ぐ力”です。よく「給料(時給)が上がらないんだよね」という悩みを聞きますが、そのためには「適切な報酬がもらえる仕事に変えることも必要」とニクヨさん。
「稼いだお金を増やすお金に回していく循環が大切。報酬に納得がいかないなら、働く業界を変えてもいい。私の本を買ってくれた方から“ずっと置かれた場所で咲きなさいと人から言われていたのですが、本を読んで、必要とされる場所を探してもいいんだと思えました”と言われたことがあって、とても嬉しかったです。
経済や社会をずっと見てきて感じるのは、景気のいい業界・悪い業界は実際にあるんです。私も同じことを経験しました。保険会社で働いていた時、変額個人年金保険がブームになったことで私の実績がアップし、給与もアップ。遅れてきた新人ですがポンポンと出世できたんです。この業界に入って、本当に良かったと思いました」
仕事を選ぶ時、業種や職種にこだわってしまう人は多いはず。しかし、そこに固執せず、もらえるお金で考え直すと人生はさらに豊かになるという考え方です。
「仕事は誰かの役に立つからお金がもらえる構造で、自分ができることを活かせる場所と社会のニーズをマッチさせればいい。業界を変えて給料が上がれば、残業代のために長時間働かなくても手元にお金が残り、時間にも余裕が生まれ、生活が楽になる、ということです」
女性に優秀な人が多いのは、家事のPDCAサイクルを回しているから
人生は自分で経営するもの、お金はそのための“幸せになるための道具”と考えます。ニクヨさんには、お金を使う時のルールがあります。それは「今買ったものが1年後の自分が喜ぶかどうか」。
「10年後は想像できないと思うので、まずは今それを買うことで1年後の自分が喜んでいるかどうかを考える。例えば果物とお菓子、どちらを選ぶと身体が喜びますか?ということです。健康に役立つものと考えると、自然と果物になるはずですよね。自分を客観視して、1年後の自分を想像して買い物をすると自然と賢い使い方ができるんじゃないでしょうか。1年後が難しいなら1ヶ月後、それが難しければ1週間後でもいい。ぜひやってみてください」
最近ニクヨさんが買って良かったものは、全粒粉パスタ。「10袋くらいまとめて買いました。ワンパンでパスタを作るレシピがあって、それを真似してやっています。全粒粉なら丸ごと栄養が摂れますしね。そばも十割そばが好きだし、果物も食べられるものは皮ごと食べます」。家事は苦手ですが料理は好き。その理由は、料理がPDCAサイクルを回せるから。PDCAサイクルとはビジネス用語で、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のプロセスを繰り返し、業務効率を改善する方法です。
「献立を何にしようか考えるのが“Plan”、実際に作る“Do”、味見する“Check”、この調味料を足してみようかなと“Action”を起こす。実は、家事全般がPDCAサイクルなんですよね。女性は家事を毎日繰り返しながら、PDCAサイクルをいっぱい回しています。
向田邦子さんはエッセイで“女は、毎日小さく博打をしている”と書いています(『向田邦子ベスト・エッセイ』(丁半)より、筑摩書房)。日々の勝負がPDCAサイクルを回していることなのかもしれないと、最近自分の中でリンクして。女性って優秀な人が多かったり、より実践的で強くなっているのは、家事のPDCAサイクルを回しているからじゃないかと思って。家事は毎日のことで大変だとは思いますが、そこを大事にしてほしいと思っています」
一番コスパのいい自己投資は読書。有吉佐和子さんの小説のヒロインにちなんで「肉乃小路ニクヨ」と命名
ニクヨさんが一番コスパのいい自己投資、アップデート法として実践しているのが読書。昔から国語が苦手で受験対策として本を読み始めたそうですが、これまで多くの作家の言葉に救われてきました。“肉乃小路ニクヨ”という名前は、有吉佐和子さんの本に出てくる登場人物の名前にちなんでいます。
「もとは“肉棒”というニックネームだったんですが、有吉佐和子さんの『悪女について』(新潮社)が好きで、ヒロインの『富小路公子』にちなんで名前を決めました。最初は向田邦子さん、有吉佐和子さんにハマって、大学生くらいまではこの2人に育ててもらったようなもの。
社会人になってからは内館牧子さん、塩野七生さん。内館さんはOL経験が長かったこともあり、その頃のルサンチマンを全てぶつけているような作風が好きでした。一方、塩野さんは骨太で、大局的な視点から生きるということを教えてくれる。内館さんには心のケアを、塩野さんに骨格を築いてもらったイメージです」
My wellness journey
私のウェルネスを探して
肉乃小路ニクヨさんの年表
1975年 | 千葉県生まれ |
15歳 | 渋谷教育学園幕張学園高等学校に入学 |
18歳 | 慶應義塾大学総合政策部に入学、大学在学中より女装をスタート |
24歳 | ドラァグクイーンの全国大会DIVA JAPANにて初代Miss.DIVA JAPANの座に輝く。証券会社に入社、入社前に肝炎を患い、3ヶ月で退社。証券会社のコールセンター、銀行で派遣社員、夜は2丁目のバーで働く |
29歳 | 銀行で証券外務員1種や保険販売のための資格を取得。その資格を武器に転職、外資系生命保険会社に入社 |
42歳 | 退社、フリーランスに |
48歳 (2023年) |
『確実にお金を増やして、自由な私を生きる! 元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方 』(KADOKAWA)を発売 |
Staff Credit
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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