子ども・若者の「近視」が急増
スマホ、ゲーム、タブレット学習で…【子どもの「近視」が急増】目を守る“正しい”方法をアップデート!
2024.02.12
スマホ、ゲーム、タブレット学習で…近視が急増!
子どもの目が、危ない!?
夢中で画面を覗き込んでいるわが子を見て、「視力が悪くならないかな?」と気を揉んでいる親も多いのでは? タブレット学習も定着し、もはやデジタルデバイスなしでは生きられない時代です。いまだかつてないほど子どもの近視も増加中の今、目を守る“正しい”方法をアップデート!
教えてくれたのは…
富田 香さん
日本眼科学会認定専門医
小児眼科専門医。「平和眼科」(東京・池袋)院長。子どもの目の発達や病気に詳しく、弱視や斜視、先天性疾患による視力障害の治療を中心に行う。メディア出演も多数。
今、小学生の3人に1人は、視力1.0未満という事実!
子ども・若者の「近視」が急増! 将来的な失明のリスクも
今、世界中で近視の人は20億人超、2050年には「世界人口の半数である50億人が近視になる」と推定されています。
「日本も例外ではなく、特に若年層では深刻。視力が低い子が右肩上がりに増え続け、小学生の3人に1人は視力1.0未満というのが現状です。近視は遠くが見えづらいという不便さ以外にも、網膜剥離や緑内障、近視性黄斑変性症といった失明につながる病気のリスクになります。特に早くから近視の子は、その後強い近視になるケースも。近視の予防や抑制は、将来のためにも大切なのです」(富田さん)
子どもの「近視」が急増! その理由は?
子どもの近視は30~40年前から徐々に増え続け、近年、文科省も子どもの近視抑制に取り組む方針を表明するほど問題視。さらにコロナ禍を経て世界的にも一気に増加しています。その理由は、生活スタイルの大きな変化にあるようで……。
理由1
デジタルデバイスの普及で、手元を見る時間が増えた
今や小学校入学と同時にスマホを持つのも珍しいことではなく、学校や習い事のタブレット学習も増加。ポータブルゲーム機の普及もあり、30㎝以下の近い距離でものを見る時間が増えたことが、大きな原因の一つ。中学生の近視も多いが、低年齢からゲームや動画を楽しむ子が増え、小学校低学年から近視になる子の割合も大幅に増加中。
理由2
外遊びや外活時間が、大幅に減少した
放課後や週末は塾や習い事などで埋まり、外で友達と遊ぶ機会が減るなど、社会の変化にともなって子どもたちが「外にいる」時間が減少。加えて、コロナ禍でステイホームの時期が続いたため、近視を抑制する効果のある外遊びの時間が激減。外に行けなくなれば、必然的にデジタルの時間が増え……と近視を招く悪循環に。
乳幼児期の弱視、小学生以降は近視に注意!
子どもの「視力」の基礎知識
視力がいい・悪いとは何を指すのか、眼科にはどのタイミングで行けばいいのかetc. 子どもの目の基礎知識を、あらためておさらい!
「見えていない」に気づくには、学校や自治体の健診を大切に
実は、近視以前に幼児で気をつけるべきは、「弱視」。
「視力の発達のスピードは1歳半までがピークで、8歳あたりで頭打ちに。この時期に遠視や乱視などの屈折異常によってきちんと見えないままでいると、視力は発達せず『弱視』になってしまいます。子どもは片目でも見えていると普通に生活ができてしまうので、親は見えていないことに気づきにくいことも。屈折異常などの目の機能障害は、早く気づいて治療を開始することが何より肝心。3歳以下のお子さんは特に気をつけてほしいです。
小学生以降になると、今度は『近視』の問題が大きくなります。学校での視力検査の結果も含め、心配があれば眼科を受診しましょう」(富田さん)
「視力」=目〜脳で情報を得る機能。視力が悪い原因は何?
網膜上に焦点が来ているか否かが、鮮明さのカギ
目が外からの光を取り込み、その光を画像として処理するのが脳。目と脳の働きが合わさったものが「視力」。「目に入ってきた光の焦点が、きちんと網膜上に来ていればものがハッキリ見え、焦点が手前や奥になるとボヤけて見えます(下記参照)。焦点が手前や奥になることを『屈折異常』といい、視力のよし悪しはここが大きい。先天的な屈折異常による弱視は、治療せず成長すると、眼鏡などで矯正しても十分な視力が出なくなってしまうので、注意が必要です」(富田さん)
目から入った光が網膜上に投影され、それを視細胞がキャッチ。視神経を通して脳の視覚中枢に達して、ものが見えた状態に。
「弱視」の治療は幼少期がカギ! 気づくには「3歳児健診」が重要
先天的な目の機能障害による弱視は50人に1人といわれ、決して少ない数ではありません。ですが早い時期に眼鏡やアイパッチなどでの治療を開始し、6歳までに治療が終えられれば、ほとんどの弱視が治ります。近年、近視・遠視・乱視の度数を測る機械(スポットビジョンスクリーナー®等)が普及し、導入する自治体も増えています。屈折異常による弱視の発見率が上がっているので、必ず3歳児健診を受けてください
富田 香さん
「近視」「遠視」「乱視」の違いは?
焦点が網膜の手前にあるのが近視、奥にあるのが遠視
近視は目の奥行きが伸びて正しい位置で焦点を結ばない状態
目に入った光が網膜上で焦点を結び、ハッキリ見えている状態が「正視」。焦点が網膜より奥に行っているのが遠視、角膜や水晶体が歪み焦点が複数できるのが乱視。「近視は、焦点が手前に来てピントがボケた状態。近視の目は目の奥行きが伸びているのが特徴で、近視が進むと目の奥行きもさらに伸びていき、元には戻りません。目と体の成長はほぼイコールなので、成長期は目の奥行きが伸びて近視が進む子が多いのです」(富田さん)
小学校の視力検査で「B以下」なら眼科を受診して
Bから近視の始まりと考えて! 先のばしせず、眼科へ相談を
眼科を受診するのは、視力検査でB以下であることが一つの目安。「Bは視力0.7~0.9で、後ろの席からでも黒板は見えますが、近視の始まりかもしれません。成長期は近視が進みやすく、また視力低下の陰には目の病気が隠れていることもあるので、様子見は厳禁。すぐに眼科を受診しましょう。小児眼科であればベストです」(富田さん)
近視と診断されたら、処方箋をもらって眼鏡などで視力矯正を
近視の進行が速い成長期は、4カ月に1回の検診がマスト
成長期は眼鏡を第一選択に。扱いやすく、角膜を傷つける恐れも少ない。
角膜保護の点から、必ず眼鏡と併用を。2時間/日は眼鏡の時間を作って。
小学生なら視力矯正は眼鏡が一般的。中学生ならコンタクトレンズも。「眼科で処方箋が出るので、購入の際はそれを持参して。その後は小学生なら4カ月に1回、コンタクトレンズは3カ月に1回を目安に検診を。眼鏡の度数は段階的に変えないと気持ち悪くなるなど弊害が出るので、久々に測ったらかなり進んでいた、とならないよう必ず定期的に検診を受けてください」(富田さん)
近視は遺伝が要因だけど、環境も影響が大きくなりつつある
遺伝はなくても、“近業”の多い生活習慣で近視になり得る
遺伝の要素が大きいのが近視。でも近年はそうとばかりもいえなくなってきているそう。「昔に比べて最近はデジタルデバイスの利用や勉強時間の増加など、手元でものを見る『近業』がとても増えました。両親ともに近視でも、1日2時間以上の屋外活動をすることで近視が抑制されるというデータも出ており、環境が与える影響の割合が昔とは変わってきています」(富田さん)
Staff Credit
イラストレーション/miho miyauchi 取材・原文/遊佐信子
こちらは2024年LEE3月号(2/7発売)「子どもの目が危ない!?」に掲載の記事です。
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