私のウェルネスを探して/中井美穂さんインタビュー後編
まさか自分が「野球選手の妻」になると思わなかった。中井美穂さんが明かす「居心地がいい夫婦関係」
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LEE編集部
2023.09.23
引き続き、中井美穂さんのインタビューをお届けします。
撮影で訪れたukafeで、ふだんよく飲むグリーンスムージーを注文した中井さん。「ここでよくお茶もしますし、お惣菜もテイクアウトするんですよ」。ukaの代表・渡邉季穂さんとはプライベートでも親交があり、「小児がん啓発月間」のコラボネイルポリッシュもukaで限定発売されています(2023年9月1日〜)。
後半では、中井さんがアナウンサーになるまでと、元プロ野球選手の古田敦也さんとの結婚生活を振り返ります。20年以上続く夫婦生活のコツや50代になった今だからこそ分かる気づき、心身の健やかさを保つために気をつけていることをお聞きしました。
テンションが低くて、子どもっぽい子どもではなかった
中井さんは、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。サラリーマンの父と専業主婦の母、祖母、6歳年下の弟という5人家族の長女として育ちます。幼少期に好きだったものは、ディズニーの絵本付きピクチャーレコード。家で本を読んだり音楽を聞くのが好きな子どもでした。性格はクールで冷静、いつも物事を客観的に見るタイプだったそうです。
「テンションが低くて、子どもっぽい子どもではなかったと思います。アイドルを好きになったり、命を捧げるほどスポーツに没頭したり、我を忘れるほど何かに夢中になったことが一度もないんです。いつも物事を斜めに見るタイプで、どこか冷めている。情熱・涙・根性みたいな体育会系のノリが苦手で、誰かと大喧嘩するとかもなくて。真正面からぶつかるのが怖いからで、そういうことができる人をどこか羨ましいとも思っていましたね」
小学校の文集に書いていた将来の夢は「アナウンサー」。「子どもの頃の夢ですから、まさか叶うとは思いませんでした。当時は“夢を持ちなさい”と言われても、夢ってなんだ? 叶わないでしょう?と冷ややかでした。大学受験についても同じで、受験する必要なんてある? 何をやればいの?という感じ。理系か文系か、じゃあ文系で、とやりたいことで選んだ進学先でした」。
「野球選手」のは彼の要素の一つに過ぎなくて、私がたまたま「アナウンサー」だっただけ
大学では放送学科があった日本大学芸術学部へ。その後、フジテレビに入社し、アナウンサーとして数々の番組に出演します。中井さんが進路や将来について考えた時、一つだけ決めていたことがありました。
「それは、大学に行って、就職して、結婚してからも働きたいということです。結婚はできれば30歳くらいと漠然と考えていて、働くことを認めてくれるような人と結婚したいと思っていました」
そんな時出会ったのが、古田敦也さんでした。スポーツ経験がない上に、「まさか自分がスポーツ選手の妻になると思わなかった」と今でも驚いているそうです。
「知り合った瞬間に“この人と結婚すると思った”という人もいますが、全然そんなことはなくて。たまたま出会う機会があり、話をしているうちに興味を持って、だんだん距離が近づいて結婚しただけです。野球選手というのは彼の要素の一つで、そこが全てではないんです。それ以外のパーソナリティの部分で縁があったんですよね。そして私がたまたまアナウンサーだった、というだけなんです」
夫から”仕事をやめてほしい”と言われたことは一度もない
結婚後は退社し、フリーのアナウンサーに。結婚はしましたが一人暮らしの経験はなく、ずっと実家で母親に家事をやってもらっていたため、掃除や洗濯、料理もほとんどできなかったとか。
「家のことは完全に専業主婦の母に依存していました。そこで苦手なことは人の力も借りて乗り切ることにしました。あとは、夫がどこまでいいと言ってくれるかです。彼(古田さん)の家は母親がずっと働いてきた人で、親が仕事でいない時は自分で料理を作ったりする人でした。だから“仕事をやめてほしい”とは一度も言われたことがなくて。彼からも彼の母親からも“やりたいようにやればいいよ”と言ってもらえたのがありがたかったです」
スポーツ選手の場合、妻が専業主婦になり夫を支えるというパターンが多く、フードマイスターや管理栄養士の資格を取る人もいます。「そういう人がパートナーだったら、夫の現役生活ももっと長くなったのかなと思うことも正直あります」。
いつもやってくれていることを当たり前にせず、相手に感謝の気持ちを伝える
結婚生活は28年目を迎えます。“夫婦仲良くするコツは?”とお聞きすると、「ぜんぜん良くないですよ(笑)」ときっぱり。
「二人で一緒に和気あいあいと何かしていることもないですし、一緒にごはんを食べるのは月に3回くらい。彼のほうが家にいる時間が多いこともありますし、自分で家のことをやることもあります。ポイントは、お互いにストレスを溜めないこと。うちは現役時代からキャンプや遠征で家にいないことも多かったし、今も甲子園の番組を関西でやっているので8月はずっと家にいなかったりもして。電話はいつでもできるし、現役時代も今も寂しいと感じたことはありませんでした」
長く一緒にいるからこそ、忘れてはいけないと思うことも。いつもやってくれていることを当たり前にせず、感謝の気持ちを伝えることです。
「やってもらう側は、なぜか当たり前だと思ってしまうんです。前にやってくれたことをやってくれなかったら、“なんでやってくれないの!”と怒ってしまう。慣れが増長してしまうといけないので、それは気をつけています。折に触れ“ありがとう”と言葉にする。分かっているから言わなくていいではなく、きちんと言葉で伝えることが大事だと思います。
出かける時に“行ってらっしゃい”とか置き手紙をしていくことがあるんですけど、見た形跡がなくってそのままだったりして(笑)。誕生日にプレゼントをしても、“ありがとう”と言いながら、プレゼントは置いてけぼりになっていたこともあります(笑)。でも、それでいいかな、って。二人が長く重ねてきた時間、その上にある今の形が私にとって居心地がいい関係性なのかなと感じています」
目下のテーマは「自分の体について知る」「自分を知る」
子宮筋腫や腹膜炎、病気を乗り越えて50代になった今、改めて健康であることの大切さを実感しています。「自分の体について知る」「自分を知る」ことが、目下のテーマだと言います。
「言葉にならない気持ち、病気になる前の未病。心や体と対話をすることで、いろいろなことに早く気づけるんじゃないかと思って。人それぞれ、体に個性ってありますよね。年齢によっても変わってくることで、10年前は大丈夫だったけれど今は違うかもしれない。だから、きちんと今の自分を見る鏡を作ること。シワやたるみ、脂肪のつきかたなど加齢による変化もそう。それをきちんと見ること、見たいところじゃないところもきちんと見ることです。それをジャッジしないことにしています」
アンテナを立てて、自分のケアをする。以前に読んだ本『私という植物を育てることに決めた』(キム・ウンジュ著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)に、それが重なるそう。
「水をきちんとあげなきゃいけないし、水をやりすぎて根腐れしているかもしれない。つぼみのままかもしれないし、途中で枯れるかもしれない。枯れるのにも理由があって、土が悪いのか日当たりが悪いのか。自分という人間をどう育てていくのか、客観的に見る目を持つことが大切だと思います。歳を取れば取るほど、セルフプロデュースが必要で、外向けの商品ではなくてプライベートな自分を育ていく。そして発言や自分の体にも責任を持つ。50代になってからは、よりはっきりと自分に責任を持てる生き方をしたいと思っています」
いつだって学びや気づきを得たい。そのために心も身体も元気でいたい
「仕事には学びと発見がある」という中井さん。好きな仕事を続けられるために、いつも元気でいられるように心がけています。
「アナウンサーであれ、NPOの仕事であれ、演劇の仕事であれ、できる限り続けていきたい。いつだって学びや気づきを得たいんです。ただ、仕事は求められなければやれません。求めていただく場がある限りは、自分の培ってきたものや時間をかけてやってきたものを役立てていきたい。そのためには健康でないと、感情がすぐに揺さぶられますし動くのも億劫になってしまいます。心も体もいつも元気でいたいなと思います」
My wellness journey
中井美穂さんに聞きました
心と体のウェルネスのためにしていること
「若い頃は心と体が分かれていて、心が弱いと体でカバーするということもありましたが、歳を重ねてくると心がダメだと体も落ちるんです。心と体、分けることはせずに両方からケアしてあげることが大切。体が疲れていたら心からケアするためにアロマの香りをかいだり、音楽を聴いたり、演劇を観たり。心が落ちていたら、体を動かすために散歩したりマッサージに行ったり。そうすることで整っていくのかなと思います。
実はここ1年ほど、やっと続いている運動があって。寝たままバレエストレッチです。山本浩未さんや林真理子さん、知り合いが集まってやっています。3〜4時間寝ながらゆっくりストレッチをやるんですがこれが楽しくて。運動の何が嫌かと言えば、自分ができないのをまわりに見られるのが嫌で。それがないことと激しい運動がないので心拍数も上がらないから楽なんです。途中、お菓子を食べるモグモグタイムもありますよ(笑)。50代に入り、ずっと何か運動をしたいと思って、ジムに通ったり、ヨガ、ピラティスもやりましたが続かず。やっと続けられるものが見つかりました」
インタビュー前編はこちらからお読みいただけます
Staff Credit
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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