コロナ禍を生きた子どもたちの未来が描かれた成長物語
【今月おすすめの本】瀬尾まいこ『私たちの世代は』他3編
2023.09.20
Culture Navi
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今月の注目情報をお届け!
『私たちの世代は』
瀬尾まいこ ¥1870/文藝春秋
コロナ禍を生きた子どもたちの未来が描かれた成長物語
コロナ禍による緊急事態宣言の解除から1年以上がたって、私たちの生活も、かなりスムーズになってきたこの頃。でもあの時期の体験が、人生の分岐点となってしまったとしたら? 今回の作品は、同い年の2人の女子の、約15年にわたる姿を、コロナ禍を挟んで描いた物語。
公立小学校に通う冴は、母親と二人暮らし。3年生のときにコロナ禍が始まり、学校へ通えなくなる。しかし母親の機転により、近くに住む同級生・清塚君と冴の母娘3人で集まる時間を作ることができ、不自由な生活の中でも楽しみや安らぎを得られていた。一方、私立小学校へ通う小晴は、学校へ通えなくなった代わりに、母親からオンラインでの習い事を詰め込まれ、閉塞感を覚えてしまう。さらに休校明けに学校へ通うタイミングを逃して、引きこもりになったまま、小学校を卒業。そのままずるずると中学生へと突入する。そして冴は、中学進学のタイミングで、母子家庭をからかわれてしまい、初めて集団生活の難しさに直面する。
「自粛生活が終わったあとをどう過ごすか」は、年齢にかかわらず、今の私たちが直面している、テーマのひとつ。何もなかったように元の生活に戻れる人もいるけれども、冴や小晴のように、違和感を抱えたまま、新しいスタートを切らなくてはいけないケースも、少なくない。友達を作らず、部屋の中で勉強をするだけの生活になってしまった小晴。クラスで浮いてしまった冴。それぞれの生き様を追うのは、小説を読む醍醐味。ただし大人の読み手としては「自分だったら、この2人にどういう手助けができるのか?」と、現実の問題に置き換えて、想像を巡らしていくのがいいかもしれない。
さらに、制限のある暮らしの中で、子どもたちに少しでも楽しさを見つけてほしいと工夫する、冴と小晴、それぞれの母親の言動にも注目。子どもたちの受け止め方は違っていたけれども、2人の母親たちの健気さや、一生懸命な姿には共感できる部分は多いはず。子どもたちへの愛情の示し方のひとつとして、大きなヒントになりそう!
『私的甘もの放談』
内田真美 ¥2090/アノニマ・スタジオ
料理家の内田真美さんが、公私ともに交流のある、山本祐布子さん、重信初江さん、なかしましほさんなど計8名と甘いものについて語る対談集。特別な日に食べたいスイーツ、印象に残る喫茶店、おやつの思い出。お菓子は生きるために必要ではないかもしれないけれども、人生を豊かにしてくれる。読み終えたら自分にとっての甘いものを、リストアップしたくなりそう!
『大丈夫、私を生きる。』
山川記代香 ¥1650/集英社
顔の骨がうまく形成されないため、聴覚障害や呼吸トラブル、瞼が閉じにくいなどさまざまな症状が現れる「トリーチャー・コリンズ症候群」に生まれた29歳の著者。幼い頃から、見た目に対する心ない視線や言葉、態度に悩み苦しみながらも、両親や周囲の人たちの支えで自身の運命と向き合っていく。「幸せとは」、「生き方とは」、著者の人生を通して何が大切なのか気づかされる。
『「いくつになってもキレイな人」のメイク』
レイナ ¥935/三笠書房
マスクで顔を隠すことに慣れすぎて、自分の見た目の変化を受け入れにくくなってはいませんか? そんな悩みを持つ方に、気持ちの持ち方や魅力を「活かす」メイクの仕方など、メイクのプロがわかりやすく手ほどき。たるみ、しみ、くまなどの大人の悩みもすべてカバー。諦めさえしなければ、いくつからでもキレイになれる、という教えに勇気をもらえるはず!
Staff Credit
取材・原文/石井絵里
こちらは2023年LEE10月号(9/7発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。
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