LEE読者の中にも、短歌が気になっている人が急増中。そこでみんなの作品を誌上でお披露目&桑原さんからの感想やアドバイスもいただきました!
LEE100人隊も最近「短歌」が気になります
『舞いあがれ!』そして歌人の方々のSNS上の投稿などを見て、気になっている人が増加中。少ない言葉で自分の気持ちを表現するという、誰にでも挑戦しやすい創作方法も魅力のひとつ。
● No.001 icocoさん
俵万智さんの『サラダ記念日』は鮮烈な印象。一生忘れない!
● No.021 のずさん
少ないワード数で表現する、想像する世界に、言葉って素敵だなぁと、幼い頃から興味がありました。
● TB さりいさん
朝ドラ『舞いあがれ!』で話題になった短歌に、歌人の俵万智さんがTwitterで、応援歌や返歌を投稿されていたのが気になりました!
● No.011 ヤスミさん
好きな歌人は岡野大嗣さん、木下龍也さん。Twitterでも現代短歌の情報を追いかけるようになりました。
● No.100 ponyさん
OURHOME EmiさんがVoicyで短歌について話していたのがきっかけ。日常のふとした感情を忘れないでいられるのかなと感じました。
1.
No.066 canaさんの短歌
あと1時間 あと1話
気づけば真夜中
韓国ドラマ
No.066 canaさん
「家事、仕事と忙しい日々の息抜きがドラマを見ること。最近また韓国ドラマにはまってしまい、気がついたら真夜中に…! ドラマの世界の中から、現実に戻ってきたときの衝撃を詠みました」(canaさん)
桑原さんコメント
あと10分だけ、と思ったはずなのに、話に惹きこまれて見続けてしまい、気づいたら真夜中…という作品ですね。
「あと10分」「あと1時間」「あと1話」とリズミカルにたたみかけているところがおもしろく、ドラマに夢中になっているときの気持ちがよく表現されていると思いました。韓国のどのドラマかな? と想像が膨らみます。
2.
No.100 ponyさんの短歌
水浴びあそぶ その姿
春待つ空へ すずの音 たかく
No.100 ponyさん
「先日、飼っていたインコのすずが病気で旅立ったときの歌です。
悲しさの中にもすずへの愛情、そして、そらという残されたもう一羽のインコへも思いを馳せることで、力が湧いてきました。すずにも再び会えたような気がしています」(ponyさん)
桑原さんコメント
悲しみの中で詠まれた短歌ですが、「春待つ空へ すずの音 たかく」と、のびやかな明るさを感じさせて終わるところが素晴らしいと思いました。
ponyさんはこの短歌を読み返すたび、元気だった頃のすずちゃんの姿を鮮やかに思い出せますね。
仲よしだった「そら」ちゃんと「すず」ちゃんをこの短歌の中でずっと一緒にいさせてあげたい、というponyさんの優しい気持ちも伝わってきます。
3.
No.069 にこぷんさんの短歌
われ住むとこは 時計台のあるまち
No.069 にこぷんさん
「これまでにいろいろな場所に住んできましたが、今いる札幌は、ライラックやルピナスの花が家庭の庭にも咲いています。
毎年、これらの花が咲き誇る季節になると、まるで絵本の世界の中にいるような色どりに、ウキウキとしてしまいます」(にこぷんさん)
桑原さんコメント
短歌の中に地名は出てきませんが、「ライラック」「時計台のあるまち」という言葉から、札幌にお住まいなのだなとわかります。
長い冬が終わり、ライラックの香りが漂う街に、時計台の鐘の音が鳴り響く―今にも素敵な物語が始まりそうで、心が浮き立つ作品です。
4.
No.077 lovesummerさんの短歌
アレだよアレと
連発し
かつての母に
自分がなってる
No.077 lovesummerさん
「この頃、モノや人の名前などの固有名詞がまったく出てこなくなりました。子どもたちとの会話の中でも、『アレアレ』を連発中。
思い出せずにあわあわとしている私を、子どもから諦めの目で見つめられるたびに、自分も昔はこう感じていたなと、しみじみします(笑)」(lovesummerさん)
桑原さんコメント
lovesummerさんは、かつてお母様が「アレ」とおっしゃるたびに「また始まった。アレって何?」と思っておられたのでしょうか。
今は自分がそうなってる、と客観的にご自身を見つめていらっしゃる短歌です。ユーモラスな歌で、共感しました。
5.
No.085 むぎちゃんさんの短歌
タンポポの 綿毛がいざなう
幼稚園への道
No.085 むぎちゃんさん
「タンポポの綿毛を探しながら登園する息子。夢中になっていると、あっという間に幼稚園へ。
入園したてで緊張していた頃もタンポポに導かれ、励まされていました。素敵な通園路、自然の偉大さへの感謝を歌にしました」(むぎちゃんさん)
桑原さんコメント
目を輝かせてタンポポの綿毛のそばにしゃがみ込むお子さんの姿が見えるような、爽やかな作品です。
忙しい朝の時間に、「早く行こう」とせきたてることなく、お子さんを見守って短歌にされたところも素敵です。
点々と続くタンポポの綿毛が幼稚園に連れていってくれる、という視点が魅力的だと感じました。
6.
No.057 しょこみさんの短歌
自由とか幸せだとか
シナモンロール
No.057 しょこみさん
「フィンランドを旅したときの思い出です。お店でまったくわからないフィンランド語のメニューを見て、異国へやってきたんだと思いました。
そして自分が持っている自由や幸せをぐっと実感しながらシナモンロールを頬張ったことを詠みました」(しょこみさん)
桑原さんコメント
メニューに何が書いてあるのか全然読めないのは、普通に考えると「不自由」なのに、そこから「自由とか幸せだとか」を感じ取る軽やかさがとても魅力的で、シナモンロールをおいしく食べた後はきっとどこへでも行けるんだろうな、と歌を読むこちらも心が弾みます。
アドバイスをしてくれたのは?
脚本家・歌人
桑原亮子さん
1980年、京都生まれ。大学卒業後、2014年にラジオドラマで脚本家デビュー。短歌は’08年から本格的に詠み始め、皇居で行われた「歌会始の儀」の入選者に選ばれたことも。
他にも「もっと気軽に、日常を『短歌』に」を公開中!
次回は「BOOKS担当ライター 石井絵里さんの『今、手に取りたい歌集』」をご紹介。
※今特集の短歌の表記は、デザイン上の都合により、行を分けて掲載しています。
撮影/イラストレーション/酒井真織 取材・文/石井絵里
こちらは2023年LEE8.9月合併号(7/7発売)「もっと気軽に、日常を『短歌』に」に掲載の記事です。
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。