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じつは今がジャストシーズン! 今どき「キッチン換気扇」掃除の最適解

  • 藤原千秋

2023.09.16

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年末大掃除、といえばすなわち「キッチン換気扇掃除」というくらいの大仕事。まとまった時間を取って、強い洗剤を買って……。固まってしまった油のこびりついた大きなレンジフード、複雑なファンの掃除、考えるだけでも憂鬱で……。

「暮れの大掃除で必ずやりたいところはどこ?」と聞くと、あまたの媒体のアンケートで、ぶっちぎり1位を獲るのが「キッチン換気扇」なのですが、じつはこの換気扇大掃除に最適な時季は、冬ではなく夏、とくに晩夏と初秋の間ごろなんです。

でも、「どうして冬じゃダメ?」「どうやって掃除すればいいの?」「カンタンな掃除法ってあるの?」「業者さんに頼む目安は?」

まさに今!が旬の「換気扇」掃除法を今回はレクチャーしたいと思います。

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キッチンの「換気扇」って、どんなもの?

では改めて「キッチン換気扇」と聞いて、イメージするものは、どんなもの? 換気扇掃除をするとき、掃除しなければいけない場所ってどこでしょう? 

まずは「ファン(羽根)」。ファンに加えて「フィルター」。それから「レンジフード(覆い)」。それくらいまでを思い浮かべるのが、まあまあわかっている方でも通常なのでは。

かつて、ふた昔前の住まいの換気扇といえば、コンロ同様壁ぎわに設置、外壁に直接穴をうがって排気するタイプの扇風機のような「プロペラファン」が主流でした。「フィルター」はあっても後付けで、レンジフードすら無いことも。

しかし、時代が進み、エアコンの効きの良い気密性の高い住まいが戸建てや集合住宅問わず当たり前となり、キッチンの位置や造り、コンロの配置なども多様になるにつれて、ネズミの回し車のような「シロッコファン」タイプが席巻していきます。
加えてここ10年ほどの間に、不織布やガラス繊維や金属でできていた「フィルター」部分をもなくした構造の「フィルターレス換気扇」というものも増えてきています。

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かくして「換気扇掃除とは、これこれ、こう!」と単純に説明しにくい、家ごとに状況がまるで異なる、そんな過渡期にあるのが今、2020年代の住まい事情だったりします。
わが家の換気扇といえど、取説を読んでも構造がイマイチよく分からなかったり。分からないままむやみに触っていいのかも不安だったり。そんなこんなで、ついつい年単位で放置してしまいがちな「換気扇」。だって放置しても腐らないし臭いも出ない。虫も(たぶん)わかないし、汚れの部分は目に見えない……で放置したぶんだけ、触りたくなくなってしまう、悪循環。

”3年もの”の換気扇なら、業者さん一択

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さて冒頭からこう言ってしまうとせっかくのヤル気を削いでしまうかも知れませんが、ほとんど毎日自炊をしている(コンロを使い、換気扇を稼働させている)うえで3年以上キッチン換気扇、ファンを触ったことがないし中身を覗いたこともない、掃除をしたことがない……のであれば、まず”自力で掃除をすること自体を見送る”のを、おすすめします。

3年以上の放置による油を主にした汚れのこびりつき具合を予想するに、全体的に固まり癒着し、塗装や金属部分が汚れを超えて「腐食」しているだろうことが考えられるからです。
そうなると慣れない手で触ったところで事故のもと。場合によってはほとんど「掃除」というより「工事」に近い作業になるだろうことも想定できます。

いよいよなんとかしよう、そう思ったならできるだけ早いうちに、家庭のキッチン現場に慣れた業者さんを探して依頼しましょう。暮れの大掃除需要にかからない間、11月の初旬までに依頼すれば先方のスケジュールにもゆとりがあるでしょうし、若干の割引などもあるかも知れません。
後でお話しする気温・水温のメリットも、真冬よりはまだ享受しやすい点でも、早いうちがおすすめです。
ちなみに換気扇を含めたキッチン全体の掃除の依頼で、費用は3万円からが目安なので参考までに。

欲張って1日で終わらせようとしないこと

とかく「大掃除」と銘打つと、「徹底的に!」とか「一気に!」といった体育会系の文言が並びがち。でもこの夏の終わりから取り組む換気扇掃除については、できるだけ「小分け」にして行うのがおすすめです。

そもそもなぜ換気扇大掃除に最適な時季は冬ではなく夏、とくに晩夏と初秋の間ごろなのでしょう。
それは、気温の高低と油汚れの固着度合いが、明らかに連動するから。

夏の気温下ではトロトロのハチミツ状の油が、冬になるとカチカチのべっこう飴になってしまうと例えれば分かりやすいでしょうか。べっこう飴を剥がすため強い洗剤やお湯を使って格闘する手間と、ハチミツを拭い落とす手間。より大変なのはどちらでしょう?

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ただ真夏の盛りはそれはそれで、ダクト(排気管)を通しても外気と直接触れてしまう換気扇周りの気温が高くなるがために熱中症のリスクがあり、おすすめしにくいのです。暑すぎてぼーっとしてきてしまい、作業になりません。

油も固まらず、すすぎのために沸かすお湯にかかるコストも低く済む、ちょうどいい気温下での無理のない作業が可能なのが、夏の終わりから秋の今の時季なのです。

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そのうえで、日を分けて「レンジフード外側」→「レンジフード内側」→「フィルターないしは整流板外側」→「整流板内側」→「油受け(オイルトレー)」→「ファン(羽根)」の順に取り組んでいきましょう。
目につきやすい順でもありますので、途中でやめてしまってもそれなりに効果と満足感も得られますし、一度にすべてをやろうとして疲れ果て、収集がつかなくなるリスクもありません。



道具は専用のものを使うこと

この、小分けにする換気扇掃除に便利な道具が”使い捨ての掃除シート”です。それも油汚れ専用のものを使います。

油汚れ専用の掃除シートは、ポリプロピレン、ポリエステルなど、石油をもとにつくられた樹脂、合成繊維は油と結合しやすい性質があり、それだけに油汚れを効率的に除去するのに向いています。
たとえハチミツ状でも、抵抗の強い油汚れに対して、破れにくいというメリットもあります。

このシートを1~2枚ずつ使いながら、まずは洗剤を用いず、油汚れを拭き取っていきましょう。途中のどこで切り上げても問題ありません。

この拭き取り作業で、ある程度油汚れそのものを減らしたところで初めて洗剤を使う方が、洗剤の浸透も良く、かつ使いすぎずに済みます。風呂敷を広げすぎて手に負えなくなるような事態にも陥りにくいのです。

換気扇掃除に用いる住居用洗剤は、弱アルカリ性のもの、かつ溶剤が添加されているような強いものが多いです。そのため掃除に際してはそれなりに準備や装備が必須(ゴム手袋やメガネなど)。また、漬け置きを行う場合に人気の過炭酸ナトリウムやセスキ炭酸ソーダも、ぬるま湯で用いればアルカリが強くなり、目に入れば危険。必ずしも手軽な道具とはいえませんし、漬け置いてドロドロに油の溶けた液の始末も厄介です。

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小分け掃除のメリットの一つには、どんなに頑張ったところで掃除と掃除の合間に1~2回の調理をしてしまえば、再び油の飛沫であっという間に換気扇周りは汚れてしまうものだということが、容易に理解できることがあります。

枝葉末節にこだわることよりも、おおらかに大きな汚れを取り去ることを行う(例えば塗装を溶かしてしまうような大きな油だまりを作らないようにする)などといった、掃除に対してのある種の諦めを持つというのも、換気扇掃除には必須の「ポイント」なのです。

藤原千秋 Chiaki Fujiwara

住生活ジャーナリスト、ライター

掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。

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