LIFE

本音で語る、発達凸凹(でこぼこ)な子どもとの暮らし

自閉症の子どもの子育て。YouTube「えぬくんちゃんねる」えぬくんママに親としての思いをお聞きしました

2023.02.25

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動画やエッセイで発信されている方に聞きました “発達凸凹”な子どもとの日常って? 親の思いとは?

発達凸凹がある子どもと家族のリアルな日常をルポ。また、周りに期待することや子どもの将来への不安など、親としての率直な思いも語ってもらいました。

おかわりの無限ループに、靴へのこだわり。
大変だけど、楽しい毎日を発信したい

YouTube『えぬくんちゃんねる』
えぬくんえぬくんママ

えぬくん&えぬくんママ

ASD(自閉スペクトラム症)と知的障害がある6歳のえぬくんと、ともに暮らしサポートするえぬくんママ。親子でYouTube『えぬくんちゃんねる』を配信。ユーモアたっぷりの動画には大きな反響が。
Instagram:sum.722

『ママと呼べない君と 自閉症の息子「えぬくん」との、もうアカン!けどしあわせな日常』

著書に『ママと呼べない君と 自閉症の息子「えぬくん」との、もうアカン!けどしあわせな日常』(KADOKAWA)。

えぬくん&えぬくんママの
1日のスケジュール

7:00
起床

9:30
療育園へ送り、登園
週2回の幼稚園の日は8:30に出発

12:00
療育園で給食
給食なら苦手な食材を食べられることも。幼稚園は、お弁当を持参

15:00
療育園からお迎え、帰宅
幼稚園のときは、14:00からバス送迎で療育園とは別の療育施設へ

16:30〜17:00
夜ごはん
「おかわり」がしたい! 1回の食事で20回のおかわりも

17:30
お風呂
お風呂大好きなえぬくん。30分〜1時間入ることもあり

18:00〜20:30
大好きなYouTubeを見たりと、遊ぶ時間

21:00
就寝
以前は2〜3時間かかった、寝かしつけ。受診して、今は数十分で入眠

慣れ親しんだ療育園。この1年は、幼稚園にも通っています

ASD(自閉スペクトラム症)と知的障害がある6歳のえぬくんの日常を、ありのままに伝えるYouTube『えぬくんちゃんねる』。えぬくんとの生活で笑ったこと、つらいこと、ママの少しダメなところまで包み隠さず伝えて、その微笑ましい親子の様子に注目が集まっています。動画配信を始めたきっかけとは?

「単純にえぬとの生活が楽しいし、親バカだけどわが子はかわいい。普通にSNSをやる感覚で育児のことも発信できたらいいなと思い、YouTubeを始めましたが、まさかこんなに反響があるとは! 子どもの発達凸凹についての正しい知識を広める方は他にもたくさんいるし、私にはおこがましい。でも、凸凹がある子どもとの暮らしが楽しいと伝わってイメージがよくなったり、私と同じようなお母さんが少しでも前向きな気持ちになってくれたりするといいなと。

最近では、大学生や高校生が『動画を見て発達障害児にかかわる仕事がしたいと思った』というメッセージをくれることもあって。現状を知ってもらえて、ちょっとでも人の心を動かせるなんて、本当にうれしいことだなと感じています」(えぬくんママ)

現在えぬくんは「療育園(専門知識のある先生が常駐し、発達凸凹を持つ子どもたちが1日を過ごす)」と、一般の幼稚園の両方に通っています。

「うちの自治体では近所に大きな療育園があり、診断を受けた2歳の頃から行っています。一般の幼稚園、保育園に比べると団体での行動が少なく、えぬの成長に合わせて無理のない活動ができて、先生も1人1人をしっかり見てくれると感じます。偏食が多いえぬですが、先生や友達と一緒の療育園の給食では苦手なトマトを食べたことがあるらしく、家での様子しか知らない私からしたら『うそでしょ?』と思ったことも(笑)。療育園は安心できる第二の家のような場所で、これまでのえぬの成長すべてに、大きくかかわってくれていると思います。

今年の4月からは小学生になり、特別支援学校に通うことが決まりました。このまま進学すると、いわゆる健常児の子どもたちと触れ合う機会がなくなってしまう。年長の1年間、週2日は幼稚園にも通うことを決めました。新しい環境に慣れるのに時間がかかるえぬにとっては、ものすごい変化でチャレンジ。幼稚園の日は少し朝が早かったり、午後は別の療育施設にも行ったりと慌ただしいのですが、頑張ってくれています」(えぬくんママ)

えぬくん&えぬくんママ 日常フォト

えぬくんの毎日の自然な表情を切り取った写真の数々。えぬくんのまっすぐさ、キュートさが伝わるはず!

「幼稚園の日のお弁当。偏食のため、からあげ、ウインナー、チーズ、ごはんという毎回まったく同じラインナップ」(えぬくんママ)

「幼稚園の日のお弁当。偏食のため、からあげ、ウインナー、チーズ、ごはんという毎回まったく同じラインナップ」(えぬくんママ)



3時間かかっていた寝かしつけが、受診してスムーズに

えぬくんの1日のスケジュールを教えてもらうと、えぬくんならではのこだわりや特性が。

「最近だと、食事中のおかわりの無限ループ。白いごはんが大好きで、少しでも減ると私にお茶碗を渡し、何度もおかわりを要求します。今はお茶碗ひとつでは足らず、ふたつ並べてどちらにもめいっぱいのごはんを。1回の食事で10~20回、私がテーブルと炊飯器を往復しなければいけないことも。テーブルにおひつを用意したこともあったのですが、えぬにとってそれはおかわりにあらず……。えぬはほとんど言葉を話せないので、なぜなのかはよくわからないのですが、えぬの一番のこだわりです。

また、お風呂が大好きで最近は泡遊びにハマり中。ただ、えぬが遊んでいる間に私は髪を乾かしたりと自分のことができるので、これは助かっています。あとは、ずっと悩んでいたのが睡眠について。えぬはなかなか寝られず、寝かしつけに3時間ほどかかることもあったんです。それを動画で配信したら『睡眠障害かもしれないから、受診してみては』と意見をもらって。

私も知識がなく、病院にかかるほどのことなのかわかっていなかったのですが、受診して薬を処方してもらったら、すぐに寝られるように! この6年間悩み続けてきたので、えぬが寝てから自分の時間を持てるようになり、大きな変化でした。他にも、絶対に同じメーカーの同じ形の靴しか履かない、物が陳列されている様子が大好きで先に進めないのでスーパーにもコンビニにも一緒に行けない、なんてこともあります」(えぬくんママ)

そんな中でも、YouTubeを見ている人からや、SNSの情報に助けられることも多いそう。

「えぬの睡眠障害に気づけたのは、動画を見てくれた方のおかげです。慣れない場所が苦手なえぬは、歯医者にも行けなかったのですが、SNSで障害児のための歯科があると知って。診察台にはまだ乗れないものの、最近は診察室のドア前でハミガキだけはしてもらえるようになりました(笑)! 発達の凸凹があると一度の嫌な経験がトラウマになってしまうこともあるようで、配慮してもらえるのはありがたいなと思います。以前はどうしようと困ることしかできなかったので、こうして頼れる人・場所があると思うと心強く、育児中の気持ちが少しラクになりますね」(えぬくんママ)

「おかわりの無限ループの様子。ひと口分でもごはんが減るとおかわり。私が炊飯器まで行くことが大事なようで、落ち着いて食事できません(涙)」(えぬくんママ)

「おかわりの無限ループの様子。ひと口分でもごはんが減るとおかわり。私が炊飯器まで行くことが大事なようで、落ち着いて食事できません(涙)」(えぬくんママ)

\同じ靴を3足用意しています/

「同じメーカーの同じ形の靴しか絶対にダメなえぬ。汚れても翌日履けるように、同じ靴を3足用意。実はひとつ上のサイズも購入済み」(えぬくんママ)

「同じメーカーの同じ形の靴しか絶対にダメなえぬ。汚れても翌日履けるように、同じ靴を3足用意。実はひとつ上のサイズも購入済み」(えぬくんママ)

「障害児歯科に頑張って通うえぬ。すぐ出られるようにドア前は確保しつつ(笑)ハミガキができるように」(えぬくんママ)

「障害児歯科に頑張って通うえぬ。すぐ出られるようにドア前は確保しつつ(笑)ハミガキができるように」(えぬくんママ)

えぬのおかげで発達凸凹の理解が深まり、ママの価値観も変化

大変なことがある反面、えぬくんの純粋さに心が洗われたり、えぬくんのおかげでママ自身の視野が広がっていると言います。

「えぬは人を嫌ったり疑ったり、嘘をつくことがない。楽しいときは本当に楽しそうだし、怒るときは全身で怒りを表現して。すべてが100%で、そんなえぬの表情に救われることはたくさんあります。切り替えが早く、さっきまで痛い治療をしていた先生にも笑顔でバイバイする様子を見ると、学ばなければと思うことも。また、発達凸凹への理解が深まり、ショッピングモールなどで暴れている子どもを見ても、何か事情があるんだなと思える。えぬのおかげで価値観がどんどん変わっていると思います」(えぬくんママ)

周りの人たちの変化や対応に、励まされることも。

「私の両親がえぬの発達凸凹を理解することは時間がかかったのですが、だんだんと受け入れてくれて、今では一番の頼れる存在です。周りの友達に伝えたときは、自然に受け止めてもらえたことがありがたかった。その後も変わらずえぬに接してくれて、一緒に遊んでくれることがとてもうれしいです」(えぬくんママ)

「病院で痛い治療を受けても、すぐに切り替えて笑顔でバイバイが言える。病院に行きたくないと駄々をこねることもなく、感心します」とママ。

「病院で痛い治療を受けても、すぐに切り替えて笑顔でバイバイが言える。病院に行きたくないと駄々をこねることもなく、感心します」とママ。

\電車や新幹線が好き。動画にも夢中!/

「電車、新幹線が好きで、家ではプラレールで遊んだり、電車の動画にも夢中。食事中も動画視聴をOKにしてルールはゆるめに」(えぬくんママ)

「電車、新幹線が好きで、家ではプラレールで遊んだり、電車の動画にも夢中。食事中も動画視聴をOKにしてルールはゆるめに」(えぬくんママ)

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イラストレーション/二階堂ちはる 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2023年LEE3月号(2/7発売)「本音で語る、発達凸凹(でこぼこ)な子どもとの暮らし」に掲載の記事です。

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