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日本の家電の歴史を振り返るのが楽しい! 家族で行きたい「東芝未来科学館」

  • 神原サリー

2023.02.10

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#55/東芝
「東芝未来科学館」

入口

川崎にある東芝未来科学館の入り口

今回はお気に入りの家電をご紹介するのではなく、川崎駅からすぐ近くにある「東芝未来科学館」の取材レポートをお届けしたいと思います。1961年に誕生した「東芝科学館」を前身とし、2014年1月に川崎駅前の「スマートコミュニティセンター」2階に移転。「東芝未来科学館」としてリニューアルオープンしてから丸9年を迎えています。3つある展示エリアの中のうち、主に取材したのは東芝のあゆみを振り返ることができるヒストリーゾーン。日本初、世界初の家電が並ぶ興味深い展示の様子をご紹介します。

目次

  1. 「からくり儀右衛門」と「日本のエジソン」、2人の創業者が東芝のルーツ
  2. 日本初、世界初がいっぱい。東芝の「1号機ものがたり」
  3. 洗濯機、冷蔵庫、テレビが「三種の神器」だった昭和40年代
  4. 日本初の自動式電気釜は外釜に水を入れる二重構造
  5. 東芝のDynaBookが世界初のA4ノートパソコンだったとは!
  6. ラゾーナ川崎プラザに隣接したワクワクの施設は事前予約制

「からくり儀右衛門」と「日本のエジソン」、2人の創業者が東芝のルーツ

今回取材させていただいたのは、エントランスを入ってすぐ右のエリアにある「ヒストリーゾーン」。まずは「からくり儀右衛門」と呼ばれた田中久重氏と、「日本のエジソン」としてその名を知られた藤岡市助氏という2人の創業者について詳しく解説した『創業者の部屋』を見ていきましょう。

マップ

今回取材したヒストリーゾーンのほか、サイエンスゾーン、フューチャーゾーンもあります(フロアマップは、パンフレットを撮影したもの)

ニューヨークにあったエジソン電灯会社(これが後のGE社とは!)を訪問した若き研究者・藤岡市助が帰国後、白熱電球の国産化に成功するまでの軌跡やエジソンに宛てた手紙の下書きの展示など、「日本のエジソン」と評される理由に納得する一方で、「からくり儀右衛門」のユニークな発想力にも触れ、東芝のルーツを知ることができ、興味津々になること請け合いです。

特に田中久重氏のからくり人形や重要文化財となっている万年時計(万年自鳴鐘)、空気銃の原理を応用して発明した灯器・無尽灯などの作品の数々には驚くばかり。お子さんも目を輝かせて楽しめるのではないでしょうか。

ちなみにヒストリーゾーンでは日英中韓の4か国語に対応した音声ガイド端末(テキスト、音声、動画などで展示解説をしてくれる専用タブレット)の貸し出しもしてくれるのでゆっくり見学される場合は利用してみるとより理解が深まりますよ。

日本初、世界初がいっぱい。東芝の「1号機ものがたり」

続いては、家電を扱っている私が最も興味をひかれた「1号機ものがたり」のコーナーです。おもに白物家電にしぼって見ていきましょう。まずは洗濯機から。

1930年に製作が開始された国産初の撹拌式電気洗濯機“ソーラー(Solar)”の洗濯容量は約2.7kgで自動絞り機付きです。価格は370円ですが、小学校教員の初任給が約50円という時代ですから、一般の家庭では手が出せないものだったのですね。

洗濯機

1930年(昭和5年)に製作が開始された国産初の撹拌式電気洗濯機“ソーラー(Solar)”。洗濯容量は6ポンド(約2.7kg)で、価格は370円

自動反転噴流式洗濯機VQ-3が登場したのは、それから27年も経った1957年のこと。これと似た洗濯機が実家にあったのが思い出されます。パルセーターを採用し、洗濯量が少なくても経済的に使用できるように改良されたのもこの洗濯機から。今も、全自動洗濯機の洗濯槽の底にはパルセーターがあることを考えると、感慨深いものがあります。

洗濯機2

自動反転噴流式洗濯機VQ-3(1957年)。パルセーターを採用し、洗濯量が少なくても経済的に使用できるように改良されました

1965年(昭和40年)には洗濯機の普及率は40%を達成し、白物家電の定着に貢献した製品とのこと。私は1962年生まれなので、まさにこうした白物家電の普及と進化とともに生まれ育ってきたわけです。白物家電の誕生と進化について、今さらながら感謝の気持ちでいっぱいになりました。



洗濯機、冷蔵庫、テレビが「三種の神器」だった昭和40年代

「三種の神器」という言葉を聞いたことがありますか? 元々は皇位とともに歴代の天皇に伝わる宝物で、鏡と剣、曲玉のことを言います。電化製品の「三種の神器」とは、豊かさや憧れの象徴で、昭和40年代には電気洗濯機、電気冷蔵庫、(白黒)テレビのことを指していました。

先ほど、洗濯機の1号機をご紹介しましたが、続いては憧れの2番目となる電気冷蔵庫です。1930年に誕生した日本初の家庭用電気冷蔵庫は内容量125L、重量157kgで米国GE社製をモデルに研究開発されたとのこと。

冷蔵庫

1930年に誕生した日本初の家庭用電気冷蔵庫。内容量125L、重量157kg。米国GE社製をモデルに研究開発されました

1957年(昭和32年)に登場した冷蔵庫GR-820は、丸みを帯びたデザインが懐かしさを感じさせます。扉の内側にはドアポケットが設けられ、利便性も考えられているのがわかりますね。

冷蔵庫2

冷蔵庫GR-820。扉の内側にはドアポケットが設けられています

国産カラー受像管純国産カラーテレビ17型17WGが誕生したのは1960年(昭和35年)。白黒テレビ誕生からわずか7年後にカラーテレビの本放送が始まったと聞くとそのスピードに驚かされます。高度成長期と呼ばれるのは1955年から1973年までの19年間を指すそうですが、まさにその最中に生まれたのですね。

テレビ

国産カラー受像管純国産カラーテレビ17型17WG(昭和35年・1960年)

日本初の自動式電気釜は外釜に水を入れる二重構造

日本のキッチンに欠かせない家電の1つ、炊飯器ですが、タイムスイッチを使って指定した時間にご飯が炊ける「自動式電気釜」の出現は、家庭の主婦たちの家事労働にかける時間を大幅に減らし、早朝に起きてかまどの火をおこす必要がなくなるという点でも生活様式に大きな変化をもたらしました。

1955年に発売された日本初の自動式電気釜の誕生までには苦労も多かったようです。最終的には外釜にコップ一杯(約20分で蒸発する量)の水を入れ、それが蒸発した時、釜の温度は100℃以上になります。それをバイメタル式のサーモスタットが検知できればスイッチが切れることに着想し、水の蒸発をタイマー代わりに応用したものとなりました。

炊飯器

1955年に発売された日本初の自動式電気釜(写真右)

展示ではこの自動式電気釜の隣に可愛らしい「ゆで卵器BC-301」が並んでいて、ちょっとびっくり。1959年に誕生したものだそうですが、今も便利なキッチン家電の1つとして愛されているエッグスチーマーのルーツをここに見たように思いました。

茹で卵

1959年に誕生したゆで卵器BC-301

1931年に誕生した日本初の電気掃除機も展示されていて、こちらの価格は110円で小学校教員の初任給約2か月分ということなので高級ですね。吸込用床ブラシとモーターが一体化した先端部には走行車輪がつき、軽く手で押すだけで掃除ができるよう工夫され、柄の角度も可変できる構造になっているなど、今のスティッククリーナーを思わせます。でも、電気掃除機の本格的な普及は約25年後の1955年(昭和30年)以降とまだまだ時間がかかったようです。

掃除機

日本初の電気掃除機。価格は110円で小学校教員の初任給約2か月分に当たる高級家電でした

 

東芝のDynaBookが世界初のA4ノートパソコンだったとは!

最後に、今や当たり前のようにみんなが使っているノートPCのことをお話しましょう。

1985(昭和60)年4月、デスクトップに比べ重さは1/7の4.1kgにまで小型化した世界初のラップトップPC「T1100」を最初に欧州で販売したのも東芝ですが、その後、世界初のA4ノートブックPCとして「DynaBook J-3100SS 001」を1989年(平成元年)にも世に送り出していたと知り、かなり驚きました。

当時画期的なマシンとして業界に衝撃を与え、ポータブルPC時代の幕開けになったといいます。19万8000円という普及価格での発売も話題になったようです。

PC

世界初のA4ノートブックPC DynaBook J-3100SS 001(平成元年・1989年)

私がこんなに驚いた理由は、この「DynaBook J-3100SS 001」がわが家にあったから。新しもの好きでAV機器などに目がなかった夫が、意気揚々と手にして帰ってきたことや、使いこなせるようになるまでの悪戦苦闘の日々が鮮やかに思い出されます。でもね、いくら普及価格と言っても、19万8000円もしたなんてちっとも知りませんでした。取材から帰宅後、夫に「あのDynaBookって、少し経ってから後継機を買ったんでしょ?」と聞いたところ「001、初代機。発売してすぐに買ったよ」という返事に驚くしかないではありませんか。

でも人生に無駄なし。だから今でも職場では最長老なのにPCに詳しい人として仕事をしているのですからね。

DVD

世界初のDVDプレーヤーSD-3000(1996年)

 

ラゾーナ川崎プラザに隣接したワクワクの施設は事前予約制

というわけで、家電の歴史を振り返るとともに、自分の暮らしを振り返るきっかけにもなった東芝未来科学館のヒストリーゾーンの見学体験は、とても貴重なものとなりました。

どんな世代に生まれたとしても、その時に使っていた家電というのは思い出の中に残っているものだと思いますし、話題が尽きないように思います。だから、1人でも同世代の友人とでも、ご両親と一緒でも、お子さんとでもどんなシチュエーションでも楽しめること間違いなし。

東芝未来科学館はJR川崎駅から徒歩3分ほどのところにスマートコミュニティセンター(ラゾーナ川崎東芝ビル)の2階にあります。大規模商業施設のラゾーナ川崎プラザに隣接しているのでわかりやすく、火~土曜日の9時30分~17時の開館で一般の方でも無料で入場できる施設ですが、事前の予約が必要です。

今回、取材させていただいた「ヒストリーゾーン」以外にも、「サイエンスゾーン」「フューチャーゾーン」もあります。特に、サイエンスステージ、超電導の実演、静電気の体験などを通して科学のおもしろさを楽しみながら『見て、体験して、学ぶ』ことができるフューチャーゾーンは、お子さんと一緒に楽しめそうですよ。

施設情報を公式サイトで見る

 

 

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神原サリー Sally Kamihara

家電ライフスタイルプロデューサー

新聞社勤務、フリーランスライターを経て、家電ライフスタイルプロデューサーとして独立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、東京・広尾の「家電アトリエ」をベースにテレビやラジオ、雑誌やウェブなどさまざまなメディアで情報発信中。商品企画やコンサルティングの仕事も多数。

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