たくさんのニュースやエンタメがあふれている今の時代。スピード感のあるものが主流になっているからこそ、本を手に取り、時間をかけて物語の世界へ没頭しているときのリラックス感は格別なもの。
今回は、書店店主・木村綾子さんの「これぞ」というおすすめの小説を紹介します。
お話を伺ったのは?
書店店主 木村綾子さん
読者モデル、タレントなどの活動を経て書店員に。2021年8月に自身のお店「COTOGOTOBOOKS」をオープン。
●Instagram:kimura_ayako
●Twitter:kimura_ayako
「言物語に飛び込むことで現実にパワーをもらっています」(木村綾子さん)
高校生のときに読んだ文学作品。その激しい内容に励まされた!
ネット上で本のセレクトショップを主宰する木村さん。「私が小説を伝えるのが好きになった原体験は、高校生のときに出会った『人間失格』なんです」と言います。
「ちょうどその頃、人生で初めてともいえる挫折を経験して。タイトルから、読み手を慰めてくれる物語を期待して手に取ったら、まったく違う話が繰り広げられていました(笑)。でも主人公の人間オンチぶり、苦しさ、それでも生きているエネルギーに触れたことで『私、まだ頑張れるかも!』と思えたんですよね。興奮し、友人たちに感想を話したのも覚えています。
その後大学入学とともに上京し、ファッション誌の読者モデルをしていた頃も、太宰治の作品を含めて読んだ本の話を、人に伝えるのが好きでした。
『小説の魅力を多くの人に知ってもらうにはどうしたらいい?』と考え…。結局、大学院まで太宰を研究。そしてその先に、今やっている、セレクト書店の経営へたどり着きました。
私の中で癒しになる小説とは、慌ただしい現実を生きる力を湧き立たせてくれるもの。だから自分で選ぶ本も、日常に根づいた設定で、街ですれ違っていそうな人々が出てくる作品が中心なんです」(木村綾子さん)
現実の延長線上にある物語に癒される
そんな木村さんがLEE読者に「大人のお楽しみとして読んでほしい」と選んでくれたのが、村山由佳さんの連作短編恋愛小説。
「50代のヒロインと恋人の、ゆっくりとした時間の流れが心地いいんです。お祭り、花火、風の音など季節の描写がリアルで、私は読みながら現実と言葉がリンクするような感覚を味わいました」(木村綾子さん)
親子で感想を共有できる一冊として、前田エマさんの短編も。
「表題作は小学四年生の女の子の気持ちが描かれていますが、私自身がその年齢では説明できなかった、恋心や性欲にも似たような、なんともいえない気持ちが心によみがえってきました。子どもが読むと、また別の感じ方がありそう。読んだ後に話し合うひとときを癒しの時間にしてほしいです」(木村綾子さん)
長編にも挑戦したい、物語にどっぷりハマりたい!という人におすすめなのが『夏日狂想』。
「明治~昭和期を生きた女性の一大ロマン。実在の人物をベースに描かれた物語ですが、ヒロインのパワーに満ちた生き方に、背中を押される人も多いかもしれません。またこの小説で過去の時代とつながることにより、あらためて今を見つめ直せる気もします」(木村綾子さん)
木村さんにとって“小説を読む”とはどんな行為でしょうか?
「活字の中で物語をイメージするって、すごく能動的な行為だと思います。同時に、自分だけの世界にひたることでくつろげる面も。何かを気にしたり、追い立てられることもないですから(笑)。そして飛び込んだ小説の世界から現実に戻ってきたときにも、また新しいパワーを得ている気がします」(木村綾子さん)
木村さんの
ストーリーに癒してもらえる小説 3選
#01
『はつ恋』
村山由佳
穏やかな大人の恋物語。“何も起こらない”良質な時間を堪能して
2度の離婚を経て、愛猫と海沿いの町で暮らすハナ。そんな彼女に寄り添う恋人・トキヲとの日々が描かれる。
「激しい恋愛小説が苦手な人や忙しい人にぜひ。純粋に誰かを愛おしいという気持ちが味わえる一冊」(木村綾子さん)
#02
『動物になる日』
前田エマ
日常が放つきらめき、かけがえのなさを再確認できる短編集
小学生の主人公の友情を描いた表題作と、飲食店に勤める店員が語り部となる掌編『うどん』の2作を収録。
「どちらも日常と地続きのお話なので、今の生活や、自分の居場所を慈しみたいときにおすすめです」(木村綾子さん)
#03
『夏日狂想』
窪 美澄
激しい物語の世界に身をまかせたい人は、文芸×歴史長編ものを!
良妻賢母が美徳とされた20世紀初め~半ばに、表現することに格闘しながら生きたヒロインの一代記。
「長編ロマンですが、窪さんの筆力でぐいぐい読めます。熱量の高い物語を読んでみたい、という人にぜひ!」(木村綾子さん)
木村さん主催
COTOGOTOBOOKSってどんな書店?
木村さんセレクトの本と、特典も楽しいブックショップ
オンライン上の書店で、木村さんがセレクトした書籍が月に約10冊ほど紹介されます。おすすめの本は、どれも木村さんが企画し、著者の方と制作した特典付き。グッズ、オンライン読書会など、いろんな角度から本を読む楽しさを提供&提案している、新しいスタイルのブックショップです。
●公式サイト:https://cotogotobooks.stores.jp/
他にも「『小説』の世界にひたりたい!」を公開中!
次回は「今の気持ちに寄り添う小説『優しい気持ちになりたいときに』『言葉にならないモヤモヤが渦巻くときに』編」をご紹介。
撮影/名和真紀子 新谷真衣(物) 取材・文/石井絵里
こちらは2022年LEE12月号(11/7発売)「『小説』の世界にひたりたい!」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
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