ガラス越しに輝く日差しのこちら側、きらきら映えるたくさんの緑。なぜかしら観葉植物があるだけで、お部屋ってものすごく”豊か”に感じられる……不思議ですよね!
緑は目にも優しいし、光合成で酸素も増えるし、”いきもの”とともに暮らす独特の連帯感もあって、そこに存在するだけで心を安らげてくれるものです。
なにかと気ぜわしいステイホームの世の中。空前の「観葉植物」ブームが世界規模で起こっているというのも、けだしうなずけてしまいます。
ただ、一方で、自然の一部を切り取って暮らしに取り入れる観葉植物は、自然ならではの不具合を家の中に導き入れてしまう側面もあり……。
今回は、なにかと気になる「観葉植物」まわりに出やすい住まいの害虫と、住まいの衛生問題についてのお話をしてみたいと思います。
観葉植物と「ゴキブリ」
えっ、いきなり……。
いきなりそこですか、と思われるかもしれませんが、キラキラの観葉植物とテカテカのゴキブリ、実は相性がよく、しばしば「出て」しまうのです。
なぜなら気温25度~30度程度、程よい湿気(水分)、エサ、暗くて湿って狭い空間、というのがゴキブリの好む典型的な環境なのですが、観葉植物まわりというのは絶妙にこの条件をクリアしてしまうことが多いから。
とくに大型で動かしにくく、水やり程度の世話を数ヶ月続けたような、置きっ放しの観葉植物の鉢と鉢カバーの間などに、気づくと産卵までされていたなどということも。ゴキブリの卵は小豆のような見た目の「卵鞘」なので、パッと見、土の塊とも見間違えやすいのです。
大事な観葉植物をゴキブリの巣にしないためには、鉢の置き場所を定期的に変えるなど、なるべく頻繁に鉢まわりを動かすようにしましょう。ゴキブリが万一来ても、ひっそり潜みにくくさせることが肝要です。
また、市販のゴキブリ用毒餌剤を意図的に鉢の近くに置いて来た者はそちらに誘き寄せるのも長期的に効果があります。
室内観葉植物のみならずベランダのプランターなどもゴキブリの巣になりやすいポイントです。屋外には屋外用の毒餌剤を使いましょう。
観葉植物と「キノコバエ」
何かわけのわからない、こまかいハエのようなものが観葉植物から、いきなり「ぶわっ」と飛び立つことがあります。
何、これ、コバエ?
「キノコバエ」です。
キノコバエは大きさにして0.5から3ミリ程度。すごく小さいです。名前の通りキノコを好みますが、それだけでなく腐敗した植物や朽木も大好物。
食べるだけでなく腐葉土などには産卵もし、孵ればもう、大発生。いかにも「土から湧いている」感がし、ゾッとしてしまいます。
季節では春と秋に多く見られ、その朝時間に突如として湧き、比較的短時間で死んでいきます。その死骸もたくさんです。
あまりのことに対処のしようがなく途方に暮れますが、かといって放置しておくとただ増えるだけなので、発生してしまったらとにかく「鉢の土を替える」処置をなるべく早めに行う必要があります。おもにショウジョウバエ対応の、市販のコバエとりなどは残念ながらあまり効果がありません。
キノコバエの発生を予防するには、観葉植物を置いている部屋では換気の際も網戸を欠かさず閉めるようにし、屋外から入り込まれ産卵されるのを避けることが大切です。ただバルコニーなどにも植物がある場合や、自然豊かな周辺環境である場合には、なかなか完全には難しいかもしれません。
観葉植物と「アリ」
観葉植物の中には、甘い液を分泌するものがあります。また観葉植物についた別の害虫が、甘い液を分泌したり排泄したりすることがあります。そのため、その甘さに惹きつけられてこまかなアリがどこからかやってくることがあります。発生源は「どこからか」としか言いようがないほど唐突に、集合住宅の高層階にも関わらず現れたりします。
見つけてしまったら、思わず殺虫剤をかけたくなるところですが、アリが列をなしているような場合には市販のアリ用毒餌剤を列の途中、できるだけ「入り口」に近い位置を探してそこに置きましょう。観葉植物の手前でそちらのほうに誘導し、毒餌を「お持ち帰り」させることで、時間はかかりますがいつの間にか、かつ長期的にいなくなるようになります。
観葉植物の分泌物を適度に拭いたり、アブラムシなどの害虫駆除をすることでも発生予防につながります。
そもそも土は「菌」
観葉植物は多くが土に生えています。土というのは、もともとが植物や虫、動物といった「生き物の死骸(が分解されたもの)」です。分解というのはミミズなどの土壌生物が食べて排泄したり、カビや細菌などの微生物が栄養にすることなどで行なわれます。当然土にはさまざまな「菌」がたくさん含まれていますので、土はそもそも私たちがいうところの「衛生的」なものではありません。
その土を、あえて「家の中(室内)」に置くには、それなりのリスクがあるということです。加えて私たちの生活環境は、エアコンで暑すぎる寒すぎずに年間通して調整されています。それはほとんどのカビや細菌にとっても繁殖に適した状態です。
菌や虫が心配、それでも植物を置きたいという場合には、普通の土と異なる特殊な植物用土(雑菌繁殖しにくい作用を持つものなど)に植え替えを行うのも一つの方法です。その上で、水受けの皿に水を溜めないようにし、鉢の位置をときどき変えることで湿気のたまりやカビのリスクを下げます。ただ、それでも「生き物」相手なのでリスクゼロにはなりません。
「緑」が欲しいニーズには近年、ほとんど本物と見分けのつかない作りのフェイクグリーンも多く販売されているので、試してみるのも一手。ただあまりにリアルで、フェイクなのに水やりをし続けてしまわないようご用心……。
LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!
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藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。
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