「膣ケア」「膣トレ」など、デリケートゾーンまわりの言葉を耳にすることが増えた昨今でも、性器や膣まわりの状態チェックやセルフケアを習慣にしている人は、まだ多くないのが現状。でも、膣の健康やホルモン状態のバロメーターとも言えるほど重要なのが、このゾーン。まずは直視して、正しく知ることから始めましょう!
教えてくれたのは
宋 美玄さん
産婦人科医。丸の内の森レディースクリニック院長。周産期医療、女性医療に携わる傍ら、女性のヘルスリテラシー向上のためメディア等でも活躍。LEEwebのPodcast連載「聴く婦人科診察室」のお悩み回答も好評。
Instagram:mihyonsongkobe
Twitter:mihyonsong
公式サイト:https://www.puerta-ds.com/son/
30代・40代女性も、デリケートゾーンへの意識が低いことが判明!
デリケートゾーンのケアについて、実践しているかどうかをアンケート。“自分ごと”として取り入れている人は意外に少数、という結果に……。
Q
デリケートゾーンを洗うとき、専用のソープを使っている?
Q
デリケートゾーンを専用の保湿剤でスキンケアしている?
Q
膣トレをしたことがある? 続けている?
Q
自分の女性器(外陰部)を鏡でしっかり見たことがある?
Q
アンダーヘア(VIOゾーン)の脱毛は?
円グラフの白の部分が示すのが、デリケートゾーンのケアを実践していない読者の多さ。このアンケート冒頭で、膣ケアや膣トレなどに「興味がある」と答えた読者は約6割と多かったけれど、行動に移して習慣化している人は、まだごく一部のよう。
※LEEメンバー411名にアンケート
まず知っておきたい!
デリケートゾーンの構造
膣の外側、外陰部のこと(V・Iライン)
そもそもデリケートゾーンって、どのエリアを示すのか、はっきりわからないという人も多いのでは? 主に外側から見える外性器周辺の「外陰部」、つまりV・Iラインを指す。
●「外性器」の構造
「外性器」はいわゆる女性器のこと。外側に大陰唇、その内側にヒダ状の小陰唇があり、尿道口や膣口などの体への“入口”を守る役割が。小陰唇の上に包皮に包まれたクリトリスがある。
●内部の構造
体の中には子宮や卵巣、直腸などの臓器があり、女性のデリケートゾーンという場合、外性器まわりのV・Iラインに加え、膣の中までを指すことが多い。
「自分のデリケートゾーンに意識を向けることが婦人科系トラブルを防ぐことにつながります」(宋 美玄さん)
自分の性器を見たことがない!? タブー視せずにケアしよう
「雑誌やネットなど、メディアではデリケートゾーンまわりの話題が増えましたが、いざ自分のこととなると、自分の性器を見たり触ったりしたことがない、という女性もまだまだ多いです」と宋さん。
「それでも、デリケートゾーンへの意識が高まっているのは確かで、それ自体は素晴らしいこと。生理のつらさやデリケートゾーンの不快感を“仕方のないこと”とするのではなく、より快適でラクに過ごすための情報や商品も増えました。実際、正しい知識に基づいたケアをすれば、婦人科に行く前に解消できるトラブルやお悩みも多いのです。
ただ、中には根拠がなかったり、むしろデメリットやリスクのある情報が混じっていることも。高価なフェムテックアイテムの中には、効果が不明なのにいい面ばかりが強調されているものも見受けられます。ご自身のことはもちろん、お子さんに正しい知識を伝えたいと願う人も多い30代・40代には、ここで一度、情報を整理してもらいたい。そして、医学的に正しいこと、本当に必要なことだけを見極めてほしいと思います。
自分の体にタブーはありません。まずはきちんと見て、触って、意識を向ける。そして、正しい方法で日々シンプルにケアする。ケアが習慣化すれば、トラブルを未然に防いだり、病気を早い段階で発見できるなど、将来的にもQOLの向上にきっと役立つはずです」(宋 美玄さん)
体のほかの部位とどう違う?
デリケートゾーンの特徴
●粘膜に近い皮膚で、体の中で最も繊細なパーツ
膣の中は粘膜で、膣をおおう外性器は粘膜と隣り合う部分。外陰部も含めたデリケートゾーンの皮膚はとても薄くてやわらかく、傷つきやすい部分なので、ケアの際は丁寧かつやさしく。乾燥にも弱いため、お肌と同じように保湿するのが望ましい。
●ほかの部位とpH値が違う
デリケートゾーンのpHは3.8~4.5。子宮内に雑菌が入ったり増殖するのを防ぐため、顔や手などほかの部位よりも弱酸性に保たれている。体を守るためには、適正なpHを保つことが大事。洗う際の洗浄剤などにも気をつけたい。
●膣の健康やホルモン状態のバロメーター
おりものは、子宮・膣・外陰部から分泌された液体が体外に排出されたもの。ホルモン周期や年齢によっても変化する。おりものの色やニオイなどから、ホルモンバランスや膣内の状態などもわかるので、「いつもと違う」と感じたら、婦人科へ。
ここを意識しよう!
日常生活の中のこんなタイミングで目を向けよう
●ショーツを脱いだとき
月経の前後ではないのに血液がついていないか、おりものの色やニオイやいつもと違うことはないか、目視でチェックを習慣に。
●お風呂で体を洗うとき
複雑な構造の外性器は、手でやさしく丁寧に洗いたい。しみないか、触って違和感やできものがないかも、あわせてチェック。
●気になる症状があるときは鏡に映して見る
かゆみがあったり皮膚の状態がおかしいと感じたら、鏡に映して確認。ただし膣内にまで指を入れることはせず、中が気になる場合は婦人科へ。
放置すると、婦人科系トラブル悪化の可能性あり
これら4つの症状がないか意識して!
特に以下4つを意識して、ケアを習慣化することでトラブルや悩みを解消できたり、病気のサインに早い段階で気づけることも。
① かゆみ・ニオイ
(ムレ・かぶれなどの肌トラブル)
② 膣まわりの乾燥
(乾燥によるかゆみ、肌色のくすみ、性交痛)
③ おりものの変化
④ 尿もれ・頻尿
これら、自分でも改善できる可能性のある
4つの症状の予防&対処法を、次回以降の記事で解説!
ほかにもこんな症状が…
●不正出血
〈疑われる病気の例〉
子宮周辺のがん、子宮頸管ポリープ、子宮内膜症、ホルモンの乱れetc.
月経時ではないときに、膣や子宮、外陰部から出血するのが「不正出血」。性交後に出血していたり、おりものに血が混ざっていないかも要確認。自己判断せず、なるべく早く婦人科へ。
●排便痛
〈疑われる病気の例〉
子宮内膜症、チョコレート嚢胞
子宮の病気では、排便時に痛みが出る場合が。特に子宮内膜症では、直腸の奥が痛くなる。普段から便秘ぎみだと見逃がしがちだけれど、排便時に痛むかどうか、注意深く確認を。
イラストレーション/mio.matsumoto 取材・原文/遊佐信子
こちらは2022年LEE10月号(9/7発売)「婦人科系トラブルのサインを見逃さないために…もっと意識したい! 私たちの「デリケートゾーン」」に掲載の記事です。
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