「年々、志向がアジアに回帰しているかも」という石井さん。そこで、気になる上海アールデコ家具を扱うショップへ。なんと店主は、インテリアメーカー時代の後輩! 思い出話に花を咲かせつつ、奥深いオリエンタルな世界を探訪します。
石井佳苗さん/Kanae Ishii
今回訪れたショップ店主の谷さんと同じ「カッシーナ・イクスシー」に勤務後、インテリアスタイリストとして独立。「最近、中国茶を習い始めました。無意識に中国の伝統文化に惹かれてる?」(石井佳苗さん)
Instagram:kanaeishii_lc
公式サイト:https://kanaeishii-stylist.com
vol.5 | area: 早稲田 | Hunting item: 椅子
東西文化が融合。上海アールデコのお店で「椅子」をアップデート
見慣れたヨーロッパの家具とは一線を画すたたずまい。「中国の古い家具には、その国土の大きさからか、おおらかな空気が漂います」(石井佳苗さん)
Hint-1
ダイニングチェアは、背もたれの形やデザインに着目して選ぶ
「食卓用の椅子を揃えるときは、背もたれの形に注目を」と石井さん。
「すっきりとしたベースにこのカーブ。アールデコ全盛だった頃の上海らしい表現です」(石井佳苗さん)。1920〜30年代の上海は、欧米の影響を受け、上海アールデコ(老上海(ラオシャンハイ))と呼ばれる建築や家具が多く生み出されたそう。「ダイニングでは、テーブルからのぞく背のフォルムが大切。妥協せずに選びます」(石井佳苗さん)
「デザインはもちろん、風合いでも存在感を示してくれる椅子ですね」(石井佳苗さん)。老上海の椅子¥88000
木の表情がそれぞれ違って迷うなあ
「ヨーロッパの家具とはひと味違うたたずまい。サイズもやや小ぶりだから、日本の住宅向きかも」(石井佳苗さん)
Hint-2
座面が平らで、背が垂直だと“飾るコーナー”としても活用しやすい
こちらの椅子は、中国北部・山東省のアンティーク。「高い背もたれは昔の官吏の帽子をモチーフにしたデザインだそう。座面がフラットかつ、背もほぼ垂直で壁にくっつけて置けるから、ディスプレイ台としてもよさそう」(石井佳苗さん)。
さらに、谷さんおすすめの、座面を裏返すと平らになる椅子もハント!
クッション座面の裏は平らな板!
「座面を張り替えやすいよう、外せる椅子が多いんですよ」と谷さん。「裏側もきれいな板状になっているタイプは希少」(石井佳苗さん)老上海の椅子¥99000
なかなか座り心地よし!
「曲線の美しさに一目惚れ!」(石井佳苗さん)山東省の椅子¥385000
Hint-3
置くだけで絵になる“スツール”は何脚あっても便利
「上海アールデコの家具は、このディテールがいいんですよ」とスツールを手に少々興奮。
「脚がほんのり広がったフォルム。そして、座面下に施された小さな意匠。なんとも言えない味わいです」(石井佳苗さん)。スツールは、座ってよし、ディスプレイ台にしてもよしだから、迷わず持ち帰り。「丈夫で働き者の、いい表情。古びた木の味わいも◎」(石井佳苗さん)。
シンプルに、ラインの美しさだけでここまで魅力的なのはすごい! さて、どこに置こうかな?」としばし考えて……「そうだ、あそこがぴったり!」と何やらひらめいた様子。スツール¥66000
このタイプのかご、珍しいですよね!?
椅子を探しに来たはずなのに、好物のかごを手に取っているのが石井さん。「1960〜70年代に山東省で使われていた農器具だそう」(石井佳苗さん)¥22000
こんな素敵な建物がまだ残っているなんて。実際にこの目で確かめたい!
上海アールデコの写真集を眺めながら、現地での買い付けの話を聞き、興味津々。「上海はまだ訪れたことがなくて。行ってみたい!」(石井佳苗さん)
Hunting item 椅子
「実はわが家のテーマは“コロニアル”(植民地様式)。東西のテイストが融合した椅子たちも、きっとなじむはず」(石井佳苗さん)
飾り方1
チェア一式のテイストを変えると、ダイニングの雰囲気はがらりと一変
「テーブルってプレーンなデザインがほとんどだから、ダイニングの印象のカギを握るのは、実は椅子。モダンなものを選んだり、アンティークで揃えたり。思いきって模様替えしたいなら椅子を替えるのがおすすめ」(石井佳苗さん)。
老上海の椅子3脚で、ぐっと落ち着いた雰囲気に。
イタリアのポストモダンデザインの椅子を、老上海のものにチェンジ。「西洋アンティークのテーブルやベンチともマッチ。替えたのは椅子だけなのに、雰囲気が一変!」(石井佳苗さん)。座面の黒で空間が引き締まる
飾り方2
飾るものを引き立てるか、椅子そのものを愛でるか
板状の背もたれの椅子(左)は、まるでフレームのように飾るものを引き立ててくれる。
「枠からはみ出したかのような、グリーンの伸びやかさがきわだちます。一方、背もたれの凜としたデザインが美しい椅子(右)は、そのものの存在が引き立つように、白壁の前へ」(石井佳苗さん)
(右)白壁の前で木目の美しさが引き立つ、山東省の伝統的デザインの椅子。抜け感があるため、サイズのわりに圧迫感なし (左)座面がリバーシブルの直線的な椅子は、板面を上にしてディスプレイ台として玄関に
飾り方3
美しいスツールに、あえて実用的な役割を任せる
これまで小さなベンチを置いていた場所に、アンティークのスツールを。モノトーンのタイルが醸し出すレトロモダンな印象と、ヨーロッパの空気を取り込んだ老上海は相性ぴったり。
「白い空間にぽつんと置くことで、アールデコのデザインの美しさが映えます」(石井佳苗さん)
入浴後に使うタオル類をのせて。実はスツールは、ストレスなく手を伸ばせるほどよい高さ。「脱衣所などは、ついおざなりになりがちな空間。そこに気を使うと、空間の洗練度がぐんとアップします」(石井佳苗さん)
今回のHuntのまとめ
“西洋でもなく東洋でもない。“老上海”は不思議な魅力”
Kanae Ishii
私とオーナーの谷さんが働いていた「カッシーナ・イクスシー」は外国の顧客も多く、自宅への納品の際などに西洋と東洋をミックスするインテリアはよく目にしていたものでした。だから、お互いそのテイストに惹かれるのも納得。東西が融合された“上海アールデコ”の家具やテイストは、LEE読者にも今後注目してほしい存在です。
Hunting Spot
on the shore(オン ザ ショア)
DATA
上海アールデコ家具を中心とした、オーナーの谷俊介さん独自のセレクトが光る。東京都新宿区早稲田鶴巻町251 ☎︎03・6228・0657 営業時間:12:00〜17:00(月・火・金曜)、12:00〜18:00(土・日曜、祝) ㊡水・木曜
https://on-the-shore.com
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2022年LEE9月号(8/5発売)「スタイリスト石井佳苗さんのINTERIOR Hunting!」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
![](https://lee.hpplus.jp/wp-content/uploads/2023/01/26/9f4324186747355a7283982a9af5260f.jpg)
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