【不妊治療】女性・男性不妊になる原因、検査、治療法…知っておきたい不妊治療の基本
2022.08.11 更新日:2022.10.19
2022年4月から、人工授精や体外受精など、不妊治療の保険適用が始まりました。不妊治療をしている人の多くが悩むと言われるのが、仕事との両立。これから治療を選択する人が身近でも増えるかもしれないからこそ、当事者以外も知っておきたい、不妊治療の実情を考えます。
教えてくれたのは
杉山産婦人科 不妊治療専門医 月花瑶子さん
不妊治療専門クリニックである杉山産婦人科にて、夫婦の不妊相談や治療を行い、講演も多数。共著に『やさしく正しい 妊活大事典』(プレジデント社)。
プライベートケアクリニック東京 東京院 院長 小堀善友さん
男性不妊のほか、男性の性にまつわるあらゆる悩み、症状を診察。著書に『泌尿器科医が教える オトコの「性」活習慣病』(中央公論新社)など多数。
Twitter:bori2555
Q
病院を受診すると、まずどんな検査をする?
不妊原因を探るため、最初にさまざまな検査が。子宮の状態を見る「超音波検査」、血液を採取して行う「ホルモン検査」、卵管に詰まりがないかを見る「卵管造影検査」、おりものと精子の相性を見る「フーナーテスト」など。1〜2カ月かけて行います。(月花さん)
Q
不妊の主な原因とは?
不妊の原因はさまざま。女性の場合は、排卵障害、卵管が詰まったり幅が狭くなる卵管の問題、子宮内膜症や子宮筋腫などの子宮の病気とそれによる臓器の癒着など。男性が原因、男女ともに原因があるケースも。明確な原因がない不妊もあります。(月花さん)
Q
不妊治療はどんな流れで行う?
不妊の定義は「避妊なしで性交して1年間妊娠しないこと」。受診したら1〜2周期は検査をしながらタイミング法を。その後は人工授精、体外受精、顕微授精と進めていくのが一般的。原因、年齢などで判断し、人工授精はスキップすることも。(月花さん)
不妊治療の流れ
Q
人工授精・顕微授精・体外受精の違いは?
人工授精は、女性の卵管に受精に必要な精子を直接届けること。体外受精は、卵子と精子を体外に取り出して培養液の中で出会わせ、受精を手伝うこと。顕微授精は、顕微鏡で確認しながら卵子に精子を直接注入すること。どれが最適かは医師との相談を。(月花さん)
シリンジ法とは?
自分で注射器のような“シリンジ”に精子を採り、膣内に注入するのが“シリンジ法”。セックスレスや男性が膣内射精できない場合などは「セックスしなければ」という義務感から解放されるので挑戦する人が増えているそう。
Q
男性が原因で不妊症になることも?
男性のみが原因、男女両方が原因を合わせると、約半数の不妊原因には男性が関与。特に35歳を超えると、女性だけでなく、男性も精子の運動率が下がったりと不妊の可能性が増加。35歳以上になって半年間、避妊なしで妊娠しなければ早めに受診を。(小堀さん)
不妊症の原因
※WHO(世界保健機関)調べ
Q
男性不妊の主な原因は?
男性不妊の原因の約8割は、精子を作る機能が低下して起こる「造精機能障害」。運動率が40%未満で精子の動きが悪い「精子無力症」、精液中に精子がない「無精子症」も。EDは知られていますが、性交中に射精ができない「膣内射精障害」も近年増加。(小堀さん)
Q
男性不妊の治療法は?
男性不妊の8割を占める「造精機能障害」は半分以上が原因不明。生活習慣の改善やサプリメントなどで対応。「無精子症」は適切な手術を実施。「膣内射精障害」は治療が難しいことも。いずれも泌尿器科、男性専門のクリニックで検査・治療が可能です。(小堀さん)
Enquête
LEE読者にも、働きながらの不妊治療経験者がこんなに!
Q 不妊治療をしたことがありますか?
一般的には約18%の夫婦が不妊治療の経験あり(※7年前の調査が最新)と言われ、今回は特に関心の高い読者が回答してくれたよう。とはいえ、この高い割合は知っておくべき!
※国立社会保障・人口問題研究所「2015年社会保障・人口問題基本調査」より
Q 不妊治療をしながら、仕事をしていましたか?
約6割が仕事をしながら不妊治療を。治療経験者の約4分の1は「頻繁に会社を休むのが心苦しく退職した」というように、休職or退職していて、両立の難しさをあらためて痛感。
Enquête
LEE読者に聞きました
Q 不妊治療をしていて、大変だったのはどんなこと?(複数回答)
通院の多さ、体のしんどさなど仕事との両立を上げる人は多い。お金は治療内容により幅があり、体外受精や顕微授精の回数がかさむと、約600万円かかったケースも。(保険適用前)
経験者の声からわかる、治療の本当のところとは? その実状や難しさを知ることで、治療中の人への見方や対応も変わってくるはず。
Q
不妊治療は何歳から始めましたか?
数年の妊活を経て治療に
31〜35歳が最多。20代後半〜30代前半に結婚して「あまり急がずと考えていたけれど、2年たってもなかなか妊娠せず受診した」(marinicoさん)といったケースが多いよう。「2人目ができず、40歳目前で開始」(リリーさん)など、2人目不妊の場合は比較的高齢に。
Q
不妊治療を始めたきっかけは?
年齢、持病などさまざま
不妊の定義である「避妊なしで1年間妊娠しない」と、治療を考える人が多数。その他「35歳を過ぎても妊娠しなかった」(うさママさん)、「10代の頃から婦人科疾患があり、妊娠できるか不安で」(あやたかさん)、「夫がEDぎみだった」(なつさん)など各々の理由が。
Q
現在は不妊治療を続けていますか?
授からずにやめた人は約3割
授かって不妊治療をやめた人が約6割ではあるものの、授からずにやめた人も約3割と、決して少なくはない割合。「顕微授精まで進んだが、自分たちで決めないと終われないと、夫婦で何度も話し合った」(ミルさん)と、夫とのコミュニケーションも不可欠に。
Q
どんな不妊治療を行いましたか?(複数回答)
条件によるものの「まずはタイミング法から」と考える人が大多数
排卵日を予測し、その時期に性交渉をもつ「タイミング法」から始めるケースが多いものの、原因や年齢でその期間には幅が。「3年ほど自己流で妊活したが、授からずステップアップ」(みるくさん)、「結婚時に36歳で焦りもあり、タイミング法は2回で、すぐに人工授精へ」(ほたてさん)などの声が。
Q
不妊治療の費用はどのぐらいかかりましたか?
体外受精、顕微授精は高額に
「人工授精を5回で費用は20万円ほど」(ゆっこさん)、「体外受精で1人目130万円、2人目は150万円」(ハイビスカスさん)と治療内容や通っている病院によりさまざまで、体外受精、顕微授精を繰り返すと300万円以上になるケースも少なくない(いずれも保険適用前)。
Q
不妊治療をしていることを、職場の上司や同僚に伝えられましたか?
職場での話しやすさには差がある
「伝えていない」と「一部の上司や同僚には伝えていた」がどちらも44%。職場の理解度や、「上司に治療をしている親戚がいて相談しやすかった」(りつさん)といった個人的事情によっても、打ち明けやすさは変わってくるよう。
Q 不妊治療をしたことがない人に聞きました
上司、先輩後輩、同僚など、職場に不妊治療をしていた人がいましたか?
約4割が「身近にいる」と回答
職場に治療の経験者がいる読者は、約4割に。「私がまだ結婚前の25歳の頃、40歳で結婚した先輩が不妊治療のことを教えてくれて勉強になった」(ざきさん)、「忘年会で隣にいた上司にポロッと打ち明けられた」(pomikoさん)などのケースが。
※LEEメンバー254名にアンケート
ほかにもこんな声が…
- 2人目不妊で体外受精を。仕事が終わってから受診すると第1子の保育園のお迎えが遅くなるので、仕事の休憩時間に採血だけして終業後に診察。早く帰れるようにするのが大変だった。(たっちゃんさん)
- 職場で事務職から営業職への配置転換の提案が。不妊治療のことはオープンにしていたので「40歳までは治療を頑張って、できなければ仕事に専念したいです」と相談し、猶予をもらった。(桂子さん)
- 教員で裁量労働制のため授業のない時間は休みを取りやすいが、仕事のタスク量は変わらない。忙しいと、治療の待ち時間に院内でパソコンを開いて仕事をしたことも。(ヒッポさん)
- 不妊治療の時間調整のために、キャリアの中断を覚悟する必要があり、人生の優先順位に悩んだ。(ほたふーさん)
- 治療のために時間の都合がつきやすい働き方に変えたが、収入がガクンと減ってしまった。反比例して、治療にかかる費用は増える一方なので悩ましかった……。(SUSUさん)
- 上司に異動したいと相談したが「妊娠したら協力できますが、今のままだと先が見えないので難しい」と言われ、理解のなさに絶望的な気持ちに。治療中に生理がきて落ち込んでも、顔色ひとつ変えず出勤しなくてはならず、自分の感情を見失いました。(あやたかさん)
【特集】働きながら“不妊治療”をするということ
詳しい内容は2022年LEE9月号(8/5発売)に掲載中です。
イラストレーション/きりふみこ 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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