私、「好きなワインがわかりません!」
ワインがお好きな方、挙手をお願いします! ではそのなかで、お店で好みのワインが迷わず選べるという方、どのくらいいらっしゃるのでしょうか……。
そう質問したわたしはというと、恥ずかしながら、ワイン売り場を左へウロウロ、右へウロウロ。「前に美味しかったのはどれだっけ?」「これは飲んだことあるような、ないような」「これはPOPのおすすめ文がなんか良さそう」「ラベルの雰囲気がいい感じ」こんなあんばいでざっくり選ぶわけなのですが、まるでギャンブル買い。ばっちりハマったときはいいものの、ハズレたかも、なんて日もあるわけで。これってつまり「自分が好きな味が自分でわかっていない」ってことなんですよね。
売り場でウロウロ…ワイン迷子をやめたくて
ギャンブル買いをやめたい。もっと好みドンピシャのワインが選べるようになりたい! そんなわたしが最近出会ったのがこちらの一冊。ワイン&フード ジャーナリストの安齋喜美子さんの著書『ワイン迷子のための家飲みガイド』です。ワイン迷子、かつ家飲みが中心のわたしにはピッタリすぎるタイトル。専門書とは一線を画すわかりやすい切り口で、初心者向けにレクチャーしていらっしゃる書籍なのです。
ぜひお会いしてお話を聞いてみたい ! というラブコールが叶いまして、全4回の短期連載で、ワイン選びのコツから安齋さんオススメの一本(勿論リーズナブルなものもあります)までを、こっそり教えていただきます。ぜひ最後までお楽しみくださいね。
ワインに詳しくなろうとしないで、まずは飲んでみよう
──『ワイン迷子のための家飲みガイド』を読んで、間違いなくわたしもワイン迷子だ!って実感してしまいました。今回このような切り口で本を書かれたということは、安齋さんの周りにもワイン選びで悩んでいる方が多いのでしょうか。
安齋さん「そうですね。話をしてみると、皆さんレストランなどで良いワインに触れた経験値はあるのです。でも自分で選ぶとなると、どれを飲んだらいいのかわからない。そういう人がとても多いことに気付きました。でも、こういう方々には“潜在的ワイン通”が多いのです。見ていて思うのは、もっと肩の力を抜いてもいいのに、ということ。LEEを読んでいる方は美味しいもの好きだと思うので、ワイン通になれるはずですよ」
──ワインの世界は奥深い印象で、産地も種類も多いことが一番の理由のような気もします。
安齋さん「それは確かにありますね。でも、どんなプロフェッショナルもワインの産地をすべて完璧に網羅することはできません。どんな読書家の人でも、小説なのか実用書なのかと好みのジャンルがあるものです。本屋さんだって、すべての本を読むのは難しい。それと同じように全部を知ろうと思わず、まずは気軽に飲んでみることからはじめましょう。極端な話ですが、本当に気に入ったものがあれば、いつもそれを飲んでいたっていいんです」
──少し気が楽になりました。この連載では、まず基礎の基礎をこの初回で教えていただき、次回以降の記事では、平日の食事に合わせる方法や、週末のおもてなしに使える一本、気合いをいれたいギフトワインの選び方などを順に学べたらと思っています。
安齋さん「LEE読者の方におすすめの13本をセレクトしました。スーパーや成城石井などに並ぶものもあります。4回にわけてご紹介しますので、まずは飲んでみてください」
赤か白か。ふくよかがいいか、スッキリがいいか。
安齋さん「早速ですが、峰さんはどんなワインがお好きなのですか?」
──白が好きですね。腰を据えてまったり、ではなくて、キッチンで立ったまま軽く飲みはじめることも多くて。なので、水っぽいと表現して良いものか分かりませんが、さらりと飲みやすいと嬉しいです。酸味はしっかりあっても、やわらかくても、どちらでも好きです。曖昧な感じですが」
安齋さん「それで充分だと思いますよ。そこから広げていけばいいんです。まずは基本の4品種を覚えておきましょう。赤2種、白2種なので、好みの方から飲んでみましょう」
──2種から好みを選ぶのですね。それぞれの特徴を簡単に教えていただけますか。
安齋さん「はい。ふくよかな白が飲みたいときに、シャルドネ。さわやかですっきりな白がお好きな人にソーヴィニヨン・ブラン。すっきり華やかな赤が気分ならピノ・ノワール。深みのある赤がいい日はカベルネ・ソーヴィニヨン。という感じでしょうか」
──なるほど。今回は4つの品種を飲み比べるための4本を選んでいただきました。味わいながら安齋さんにも選んだ意図を解説いただこうと思います。
安齋さん「普段ワインを飲まない方に手にしていただきたくて、入手しやすい4本にしました。スーパーで見かけるものもあります。ネットで買う時は、もし自社サイトで買えるならそこから、もしくは公式サイトで提携店を紹介していることがあるので、できればそこから手に入れると(管理や品質上)安心です」
※記事巻末に問い合わせ一覧を掲載しています。
──では、さっそくいただいてみたいと思います。※今回は4種に絞りましたが『ワイン迷子のための家飲みガイド』では、トレンド品種を網羅した全18種を紹介しています。より詳しく知りたい方はぜひご参照ください。
ワインの基本4品種を飲み比べよう
【ソーヴィニヨン・ブラン】ミッシェル・リンチ・ブラン
生産国/フランス
「トロピカルフルーツや白桃の香りが感じられます。ふくよかでフレッシュ、複雑味があり、魅力的でアロマティックな香りに溢れています。白い花のニュアンスがある余韻が続きます」(公式サイトから)
「フランスのワイン格付けメドック5級のワイン『シャトー・ランシュ・バ―ジュ』のオーナーが造るカジュアルラインです。イメージとしてはハイブランドで買う上質な白Tシャツのよう」(安齋さん)
【シャルドネ】カッシェロ・デル・ディアブロ シャルドネ
生産国/チリ
「しっかりした骨格のふくよかな辛口白ワイン。香りをかいだ瞬間からパイナップルやピーチなどのフレッシュなフルーツを感じます。フレンチオーク樽からもたらされるへーゼルナッツの香りがほんのり漂います」(公式サイトから)
「チリの大手ブランドがつくるワインで、上質のブドウを使って緻密につくられています。雑味のない味とクリアな酸味でバランスが良い」(安齋さん)
【ピノ・ノワール】ルイ・ジャド ブルゴーニュ ピノ・ノワール
生産国/フランス
「ふくよかなフルーツらしさと絹のような舌触りと優しいタンニンを持った、穏やかで調和のとれた香味。ブルゴーニュの高貴なピノ・ノワールの魅力を存分に味わえます」(公式サイトから)
「歴史と由緒ある名門ルイ・ジャドのスタンダード赤ワインです。これだけ品質の良いワインがこの値段で楽しめるのは驚きだと思います」(安齋さん)
【カベルネ・ソーヴィニヨン】ボデガ・ノートン レゼルヴァ・カベルネ・ソーヴィニヨン
生産国/アルゼンチン
「古樹のブドウをオーク樽にて熟成、さらに瓶内でも熟成させてからリリース。 豊かな黒系果実味とタンニン、ほのかな樽香のバランスが良い。濃厚な赤ワイン好きの方に」(公式サイトより)
「アルゼンチンはコストパフォーマンスの良いワインが多く、注目の国です。ボテガ・ノートンはスワロフスキー社のオーナーファミリーが所有しており、ハイクオリティなワインが揃っています」(安齋さん)
ラベルは読めたら読む。苦手な人は瓶の形を観察して
──ラベルで苦手スイッチが入ってしまう人も多いのかな、と思います。
安齋さん「フランス語や筆記体がそう思わせますよね。上記の写真を見てもらいたいのですが、シャルドネ・ピノノワール・チリ・フランスといった単語はきっと読み解けるのでは、と思います。キーワードを拾うような感じでいいのではないでしょうか。あとは、レストランなどで美味しいものと出逢ったら、写真を撮っておくと、あとで同じものを手にいれやすいですね」
──どうしてもラベルが苦手で、お店でもぜんぶ同じに見えてしまう。そんな人に必殺技はありますか?
安齋さん「ありますよ。それは瓶の形で選ぶこと! 例外もありますが、ボトルの形でおおよその味わいが予測できます。今回の4本のうち2本はいかり肩。これはフランス・ボルドーに多い形で、赤なら濃厚でタンニンしっかり、白ならすっきりな味わいが予測できます。そしてもう2本はなで肩。これはブルゴーニュに多くみられるタイプで、赤ならタンニン少なめの柔らかな味わい、白なら酸味が少なくフルーティーな味わいのものが多いです。覚えておくと便利です」
──なるほど。『ワイン迷子のための家飲みガイド』では、ボトルの形による味の違いなどをさらに詳しく知ることができますので、気になった方は是非ご覧ください。ところで、安齋さん。ワインショップに足を踏み入れるとき、どうしてもぎこちなくなってしまうのですが上手な買い方はありますか?
安齋さん「ワインショップでは予算と好みをはっきり伝えることです。例えば、すっきりした白で2千円以内とか。その程度で大丈夫ですよ。お店の方もプロなので喜んで選んでくださるはずです。専門店でないスーパーやコンビニは一か八か、と悩みますよね。デイリーで飲みたい千円台のワインはチリやオーストラリア、アルゼンチンなど、ニューワールドと呼ばれる国のものを選ぶと失敗が少ないと思います。お気に入りのワインがもし見つかったら、同じブランドの中でこんどは赤やロゼを買ってみよう、などと深めていくと、好みの味わいのなかから上手に世界を広げられると思います」
──ありがとうございます。次回は平日のふだんご飯をアップデートするワインの飲み方を教えてください。次回vol.2「平日の食事で気分を上げるワイン」もお楽しみに!
ワイン迷子のための家飲みガイド
安齋さんの著書『ワイン迷子のための家飲みガイド』では、ワインの基礎知識にはじまり、全18種の品種を解説するほか、安齋さんおすすめの家飲みワインを紹介しています。ぜひ記事と併せてご覧ください。
『ワイン迷子のための家飲みガイド』
1760円(税込)/集英社
四六判/208ページ
安齋喜美子(あんざいきみこ)
ワイン&フード ジャーナリスト。一般誌やワイン専門誌で料理やワイン、旅、お取り寄せなどを幅広く執筆。国内外のワイナリーや醸造家、レストランの取材も多数。日経電子版『SPIRE(スパイア)』で「家飲みが楽しくなる! お酒に合う絶品お取り寄せグルメ」を連載中。著書に『葡萄酒物語』(小学館)。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。
お問い合わせ先(商品写真左から順に)
●ミッシェル・リンチ・ブラン
アサヒビール株式会社
お客様相談室 0120-011-121(平日10~12時、13~16時)
https://asahiwine.com
●カッシェロ・デル・ディアブロ シャルドネ
メルシャン(株)
お客様相談室(フリーダイヤル)0120-676-757
https://www.kirin.co.jp/alcohol/wine/
●ルイ・ジャド ブルゴーニュ ピノ・ノワール
日本リカー株式会社
03-5643-9770
https://www.nlwine.com/ (代表)
https://drinx.kirin.co.jp/wine/lj/pino18-2/ (通販サイト ドリンクス)
●ボデガ・ノートン レゼルヴァ・カベルネ・ソーヴィニヨン
エノテカ株式会社
(フリーダイヤル)0120-81-3634
https://www.enoteca.co.jp/
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峰典子 Noriko Mine
ライター/コピーライター
1984年、神奈川県生まれ。映画や音楽レビュー、企業のブランディングなどを手がける。子どもとの休日は、書店か映画館のインドアコースが定番。フードユニットrakkoとしての活動も。夫、5歳の息子との3人家族。