最近私が気になっていることのひとつが、『子供の姿勢』です。
小学校1年生の長男が宿題をしている姿、食べる姿勢を見ていて、よく注意をしています。「お背中まっすぐね!」何度注意しても、すぐに元通りで……。口もポカンと開けていることが多くて、どうしたらいいのかわからず、気になりながらも対策がありませんでした。
そんなとき、同級生で歯科医の西川岳儀さんが足についての本を出しているということを聞いて、「歯医者さんが足の本!? 何かヒントがあるかも」と読んでみました。これがもう、目から鱗というか……足の状態が姿勢や呼吸に関係していて、さらには歯並びにも影響するというので西川さんにインタビューをしてきました。
自身の猫背コンプレックスから知った、足と口呼吸の関係
上紙「歯科医の立場から、足の本を出すというのは珍しいことですよね。きっかけはどのようなことだったのでしょうか? 」
西川「小児歯科の学会で姿勢の変化と鼻の通りについて発表して、歯科雑誌に寄稿したものが、編集者の方の目に止まったのがきっかけです。私のコンプレックスは猫背。幼少期からいつも口をポカンと開けていて、歯医者である父親からは「口を閉じろ!」とよく注意されていました。でも気づけばまたすぐに口が開いちゃうんです」
上紙「わ!私も同じことを長男に言ってます。鼻が詰まっているのかな?と思うんですが……」
西川「多くの人がそう思っていますよね。口がポカンと開いちゃうのは鼻が詰まって苦しいからだとか、口の周りの筋肉が弱いからだと僕もずっと思っていました」
上紙「違うんですか!?」
西川「舌の位置異常が原因です。それには実は『足裏・足指』が関係していたんです。ご縁でシューズ&フットケアアドバイザーでファイブコンフォート代表の松藤文男氏に出会い、人間の全体重を支える足裏・足指の大切さを学ばせてもらいました。自分で研究してきたことと、これまで多くの人から学んだことによって、口腔機能は横隔膜(呼吸)と舌位(舌の位置)と足底接地(足が地面と接触する箇所)が重要だと確信したんです」
西川「頭位前方姿勢、いわゆる猫背になってしまうのは、足指に歪みや変形などが原因であることが多いです。イラストに描いてみるとわかるのですが、足の指にトラブルがあって浮いている状態だと、重心は後ろになります。後ろへ倒れないようにするために頭を前に出す姿勢をとるから、猫背になるんですね」
上紙「なるほど。この姿勢だと口呼吸になりやすいんですか?」
西川「その通り。この姿勢だと、口を開ける筋肉(開口筋) が優位に働いてしまって、口呼吸を誘発しています。呼吸によって姿勢はできあがるのですが、そこに外的因子である靴下や合わない靴が加わることで、さらに呼吸を浅くしてしまうのです。正しい呼吸『鼻呼吸- 腹式呼吸』でしっかり立つためにも、転倒を予防するためにも、足指を伸ばすことがとても重要なんです」
上紙「(上の)図の右側が猫背の状態ですね。首が前に出て、顎が下がるから口がポカンとなるんですか。私も子育て真っ最中で、子供の姿勢が気になる母の一人ですが、具体的にどんなことに気をつければいいのでしょうか?」
西川「たとえば、毎日お子さんはしっかりご飯を食べて、そして毎日ウンチが出ていますか? 出ていない子はトイレで足を接地し踏ん張れていないのかもしれません。 食事の際にも足は地面にしっかりついていますか?足がぶらぶらしていると、口呼吸になってしっかり咀嚼して飲み込むということができないので、お水で流し込む食べ方になることが多いです」
上紙「食べるとき、排せつするときはしっかりと地面に足をつけることが大切なんですね」
西川「はい。家では裸足で生活しましょう。そして足に合った靴を選ぶことが重要です。兄弟間の靴のお下がりはやめましょう。靴のかかとが磨り減り、歩き癖がついています。」
次のページでは、すぐにできる鼻呼吸を促す方法をご紹介します!
口呼吸になると、どんなことが起きるの?
上紙「西川先生、口呼吸だとどうなるのですか?」
西川「本来、舌は上あごについているべきなのですが、口呼吸の方は舌の位置が上あごにはつかず下がってしまうんです。舌の位置が正常でないと、歯並びにも影響します」
上紙「歯並びにまで⁉︎」
西川「鼻呼吸が正しい呼吸です。鼻毛はフィルターの役割をし、直接細菌やウイルスが体内に入らない役割をしていますが口呼吸の場合はもろに体内に入ってしまいます。そのため体温も低くめで免疫力の低下にも繋がるというわけですね」
即席『口テープ』で鼻呼吸にする方法
上紙「そうなんですね!でも、姿勢って急に変わらないと思うので……どうにか、速攻で口呼吸を阻止できる方法ってないですかね?」
西川「それがね……あるんですよ!」
上紙「ああ、よかった!!教えてください」
西川「それは『口テープ』。写真のように、テープを貼るんです。寝る前に貼ってください」
上紙「なるほど!物理的に口を開かないようにしてしまうんですね。薬局に売っている、ガーゼを留めるようなテープでいいんですか?」
西川「はい。かぶれにくいテープが良いでしょう。ミッフィーのように×の形に貼ってもOK。鼻の穴は塞がないでくださいね。大人にもおすすめ!次の日喉が全然違いますよ」
上紙「ほほう!」
西川「口テープはいろんな役目があるんですよ。矯正している子は口が閉じにくいので、みんな口テープをさせます。口呼吸の子が多いので、インフルエンザ予防や矯正していない子にもすすめているんです」
上紙「ほかにはどんな人におすすめですか?」
西川「例えば歯ぎしりする人。舌の位置が下がることによって口が開くから、歯ぎしりをするのですが、口テープすると予防になります。あと、僕は風邪などで発熱したときに、口テープ+水飲み摂取で食べ物は1日だけ取らずにいると大体1日半で復活しています!」
上紙「ええ!発熱時にも鼻呼吸が有効なんですね。早速試してみます!」
西川「ぜひ!鼻呼吸は免疫力UPです。あと、口テープのほかにもすぐに実践してほしいことがあります。それは、『冷たい飲み物を控えること』。冷たい飲み物は舌の位置を下げてしまいます。体温ほどの飲み物を飲むと舌が上がるのがわかるかと思います。食後に温かいお茶を飲むのはいいですね。お寿司屋さんでも最後にあがりを飲むでしょ。本来鼻呼吸しかできない赤ちゃんも体温の母乳や体温ほどに調整したミルクを飲みますよね」
上紙「そうなんですね。いつも温かいお茶は大人にしか出していませんでしたが、子供も一緒に飲むようにしてみます。西川先生、最後にこれから実現したい夢を教えてください」
西川「私は幼少期からお口ポカンで猫背でした。我が子もそうでした。今多くの子どもが誤った呼吸である口呼吸をし胸で息をしています。歯並びは誤った呼吸や舌位の結果です。 子どもは地域の宝。地域で守る子どもの健康。子どもの発育の1分1秒がこれからの人生の土台形成期間ですお口ポカン撲滅。それが私の夢です!」
みなさん、いかがでしたか?いま一度、足・姿勢・呼吸を見直して、健康な生活を送りましょう。
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上紙夏花 Natsuka Uegami
ライター/ビューティープランナー
1977年、大阪府生まれ。吉本新喜劇の女優を経て、ライターに。現在は化粧品の商品開発やPRを手掛けるほか、ベビーマッサージ講師としても活動している。夫・息子9歳、3歳