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LIFE

PTA取材歴9年のライター大塚玲子さんに聞く「令和のPTA事情」「PTAとの正しい付き合い方」

2022.04.23

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新学期が始まりました。そして毎年恒例、憂鬱なPTA活動も……。一体なぜ、PTA活動は憂鬱さを伴うものになってしまったのでしょうか? 著書『さよなら、理不尽PTA! 強制をやめる! PTA改革の手引き』(辰巳出版)では全国のPTAの事例を多数紹介、PTA取材をライフワークにするノンフィクションライターの大塚玲子さんに令和のPTAの実情と、PTAとの正しい付き合い方を教えてもらいました。

さよなら、理不尽PTA!

大塚玲子さん最新刊『さよなら、理不尽PTA!』巻頭描きおろしまんが(おぐらなおみ:著)より

令和のPTAを語る上で外せない「IT化」「コロナ禍」

――近頃はグループLINEやGoogleのアンケート機能などを導入するPTAも増えている、と著書『さよなら、理不尽PTA!』にも書かれていました。IT化が進んだことによって、他にも何かPTAに生じた変化はありますか?

『さよなら、理不尽PTA!』編集(以下編集):PTAの前に、学校自体がコロナ禍の影響で、デジタルツールを積極的に導入するようになったんです。それまでは出欠連絡は全て連絡帳を使っていて、欠席の日はお友達に連絡帳を持って行ってもらわなければならない学校が多かったと思うのですが、そういった学校との連絡がIT化したところが増えました。それを見て「学校がIT化したんだったら、PTAもIT化してもいいのかも?」と気づき、意識が変わったPTAも結構あったようです。

大塚玲子さん(以下大塚):以前から文部科学省が準備を進めていたギガスクール構想(小中学生に一人1台タブレット等の端末を配布)が、コロナ禍で一斉休校になった影響で前倒しで進められたりもして。それまでは学校がIT化に及び腰で、それに倣ってデジタル化を止めていた、あるいは止められていたPTAが多かった。でも学校がやっとIT化に着手したので、PTAのIT化も進めやすくなったのでしょう。PTA活動にデジタルツールを導入することで、間接的にではありますがようやく「PTAのやり方も、実は変えてもいいんだ!」と気づけた、という効果もあったのではないでしょうか。

さよなら、理不尽PTA!

大塚玲子さん最新刊『さよなら、理不尽PTA!』巻頭描きおろしまんが(おぐらなおみ:著)より

――他にも何か、コロナ禍がPTAに及ぼした影響はありますか?

大塚:例年通りの活動をやめてみて「なんだ、平気だった」ということに皆さん気づいて、「はっ!」となっているのが今(笑)。目に見えて影響が出てくるのはもうちょっと先になるのでは、と予想しています。今後どのような影響が出てくるのか……希望的観測ではありますが、無駄なことはやめて、入りたい人が入り、やりたい人がやる、という方向に向かっていくのではないでしょうか。コロナ禍以降、Zoom等を用いてオンラインでPTAの会合を行うようになったことによって、お父さんも参加するようになったケースもよく聞きます。お父さん達が元気に空気を読まない発言をして、お母さん達が引く……といったこともあるようですが、空気を読まずに発言したっていいじゃないか!と思います(笑)。

立地と規模でPTA改革の難易度は変わってくる

——コロナ禍の影響で変わったPTAもあるようですが、全員に役割を与えるために本来不要な作用作業をさせるPTAや、前例を踏襲することに固執するPTAなど、旧態依然なPTAもまだまだ少なくないようですね。

大塚:どちらかというと、都市部の中~大規模校のPTAは改革が進んでいる傾向がありますが、地方の小規模校のPTAなどの話を聞くと「変革は相当難しい」と感じることも多いです。最初から人間関係が濃密にしがらんでいる小規模校のPTAについては、正直、解散しても良いのではないかなと思ったりもします。そういうところは、PTAがあってもなくても「学校と保護者の関係」はほとんど変わらないと思うので。最近はコミュニティスクール(学校運営協議会)や地域学校協働活動などの新しいスタイルを文部科学省が推進しようとしているので、その流れに乗っかってしまう方が良いのかもしれず。

さよなら、理不尽PTA!

大塚玲子さん最新刊『さよなら、理不尽PTA!』巻頭描きおろしまんが(おぐらなおみ:著)より

——都市部と地方では、PTA事情が結構違ってくるのですか?

大塚:それも多少ありますが、大規模校と小規模校、といった規模の差の方が大きいかも? 立地と規模と相まって、かもしれません。「PTA、やりたい人がやりましょう」となったとき、単純に1000人規模の学校だとその1割が加入すると100人。でも100人規模の学校だと10人ですよね。予算規模も10分の1ですし、小規模校だとなかなかやり方を変える勇気が出ないかもしれない。そこに日本人的な「みんなでやらないと!」というマインドが相まって、なかなか改革が進まないのではないでしょうか。最近聞いたとある地方の小さなコミュニティの小学校のPTAでは、役員の方が地元の有力者でもあり、その方が「改革なんて冗談じゃない」と。校長先生もその役員に同調している状態だそうで……地方の場合、校長先生がPTA役員より年下というケースも少なくないですし。

PTAの存在意義を見直す時期が来ているのかも?

——旧態依然なPTAが現状打破するために、何かできることはないのでしょうか……?

大塚:PTAは学校と完全に別の団体ですが、最近PTAが敢えて学校組織の一部になるようなケースを、たまに聞きます。要は、「加入届」を配りたくないんですね。でも、活動の強制もしないし、お金も取らないならいいじゃない、という考え方です。でもそれってアリなのかナシなのか……? 微妙だなと。いつ何時、そういう組織が会費徴収や活動を再び強制し始めるか、わからないので。

さよなら、理不尽PTA!

大塚玲子さん最新刊『さよなら、理不尽PTA!』巻頭描きおろしまんが(おぐらなおみ:著)より

どうして加入届を配らないかというと、「PTAに加入する人としない人がいると、分断を生み出すので良くない」というのですが、それもよくわからないなと……。たとえ加入者が2、3割でも、すべての子どもを対象に、非加入者も含めた保護者みんなの声を拾っていれば、問題ないと思うので。これまでのPTAは、役員さんの声=保護者の声ということにして、一般会員の声を聞かないことも多かったので、むしろそれよりずっといいのではないかと。

——学校組織の一部になる、コミュニティスクール等々、PTAという形以外の活動スタイルも少しずつ増えている動向について、どう分析されますか?

大塚:そろそろ、「PTAは何をするものなのか」を見直さなければならない時期に来ているのかもしれません。保護者同士や、保護者と教職員のつながりは何かしらあった方が良いと思いますが、それはPTAじゃなくてもいいかもしれない。保護者同士、または保護者と教職員で意見交換できるような場や枠組み、それさえ提供できれば、形はなんでもいいのではないでしょうか。正直に言うと「PTA(Parents〈親〉Teacher〈先生〉 Association〈組織〉の略)」という名前も離れて、新しい名称にした方が使い勝手が良さそうな気もします。「PTA、1回無くしたら、もう保護者のつながりはできないよ」という慎重派な方も結構いらっしゃって、それも可能性ゼロでなく、一理あるとは思うのですが、「PTA」という名前をつけている限り、なんかこう、すごい吸引力があるので……強制のお手伝い組織に逆戻りしてしまいそうな懸念もあります。PTAにまつわる諸問題って、白か黒かきっちり割り切れないことがすごく多くて、なんだかスキッとしたことを言えなくてすみません。でもそういう部分が面白かったりもして、だから私も取材を続けているんだと思います。



PTA会長にならなくてもPTA改革はできる

——最後に、PTAに関わっているLEEweb読者と、この春から初めてPTAに関わる予定のLEEweb読者に、激励のメッセージをお願いします。

編集:PTA会長にならないとPTAは変えられない、なんてことはありません。積極的なアクションを起こす勇気がなくても、例えば役員を決めるにあたり「無記名で推薦してください」と書いてあっても誰も推薦しないとか、アンケートにおかしいと思ったことを書くとか。あとは、もし自分以外の誰かが「それ、おかしいんじゃないですか」と声を上げたときに、その人を白い目で見るのではなく、「そうだよね、私もそう思ってた」と賛同するとか。そういった、少しの勇気を持ってほしい。一人の強い人が言い出しただけだとなかなか変わらなくて、その他大勢の人が一緒に、ちょっとずつ変わっていかないと、PTAを変えるのはなかなか難しいと思うので。積極的な方法ではなくても良いから、勇気を持ってアクションを起こしてほしいですね。

大塚:こう言うと反発もあるでしょうけど、PTAってやっぱり少なからず、我々保護者、特に母親たちが、勝手にやっている部分もあって。「もっと手放そうよ! 怖くないから」とお伝えしたいです。実際、PTAを退会したり変えようとしたりしたことによって「じゃあ、お子さんに運動会の記念品をあげません」などと言われてしまうこともまあまああるのですが、でも言われないことのほうがたぶん多いので、我慢するのは止めましょう。お父さん達にも(PTAを)他人事だとは思ってほしくないです。どんどん妻の代わりに参加したり、参加を断ったり、してほしいですね。

『さよなら、理不尽PTA! 強制をやめる! PTA改革の手引き』

さよなら、理不尽PTA!

大塚玲子/著 おぐらなおみ/巻頭漫画

繰り返される悲劇……!! 春になると盛り上がる「PTA問題」を本気で解決するためのノウハウがこの一冊に。法にすら触れかねない「理不尽PTA」の問題点を指摘し、役員/一般会員/非会員としてPTAを変える方法をPTA問題のスペシャリストが提言します。いい加減、負の連鎖を断ち切りましょう!

大塚玲子さん

大塚玲子(おおつか・れいこ)ノンフィクションライター。PTAなどの保護者組織や、多様な形の家族について取材・執筆。著書は『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)、『ルポ 定形外家族』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAがやっぱりコワイ人のための本』(以上、太王次郎社エディタス)、共著に『子どもの人権をまもるために』(晶文社)、『ブラック校則』(東洋館出版社)など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

大塚玲子さん公式サイト

大塚玲子さんの過去インタビュー記事はこちら!

『定形外家族』。当事者の子どもへの取材で見えてきた「大人はさっぱりわかっていない」事実【前編】

「ふつう」の家族って? 自分たちが心地いい家族について考えてみる【『定形外家族』著者インタビュー後編】

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