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現代の広島にある牡蠣工場から西部の町“ヒロシマ”へと場所を移しながら、さまざまな社会の不条理を問う作品『広島ジャンゴ2022』で2年半ぶりに舞台に立つ鈴木亮平さん。劇中で演じる二役のうちのひとつは馬(!)、さらに歌やラップを披露する場面もあると聞けば、興味を持たずにはいられない。
困難に直面したときは、作戦を練りながら機が熟すのを待ちます
────鈴木亮平さん
「僕の中にある、しゃべる馬のイメージといえば『みどりのマキバオー』というマンガ。役作りにそれを読みまして……っていうのは冗談なんですけど(笑)。僕が演じる役は、とにかく周囲に翻弄されるお芝居が多いので、ひとつひとつ柔軟にリアクションしていきたいですね。
舞台で歌うのは、初めて。ミュージカルのように歌い上げるわけではなくて、セリフの延長線上みたいな感じだから、周りの皆さんは大丈夫だと言ってくれていたんですけど……歌に自信があるわけではないので稽古が始まる前はビクビクしていました。ラップは、過去に映画で経験があるゆえに難しさを知っていて。アーティストの方が歌われるようなカッコいいラップとは違うからこそ、伝わるものがあればいいなと思っています」
困難の多い今の時代にそれでも諦めずに戦う人々に向けて、「明日が少し元気になるように」という想いが込められた今作。鈴木さんの元気の源になっているものといえば?
「アメリカにモチベーショナルスピーカーという職業があるんです。スピーチで鼓舞してくれる専門家の方なんですけど、最近はそういう人たちのスピーチをインターネット上で聞くことにハマっています。“やらなきゃダメだ!”とか“時間は限られてるんだ!”という言葉に背中を押されながらジムに向かうと、その後の自分との闘いに勝てるんです」
ストイックな役作りで知られ、英語が堪能で、世界遺産検定1級も取得。多才で完璧なイメージのある鈴木さんにも、そんなふうに自分自身を叱咤激励する瞬間があるとは意外。そう伝えると、ほかにも次々と知られざる弱点を教えてくれた。
「僕、クロールの息継ぎは何回やってもできないんです。プールに行く機会があると、そのつど本気で練習するんですが、鼻に水が入るし沈んでいくし、どうも仕組みがわからなくて。どこでもすぐに眠くなるところも、なんとかしたい悩みです。台本を開いてセリフを覚えようとしても部屋だと寝てしまうので、ファミレスや喫茶店に行くようにしているんです。それでも寝ちゃうこともありますが、さすがに外だと10~20分すると起きるので(笑)」
物語には、不条理な事態に直面したとき、ルールに従う人、戦う人、流される人……と、いろいろなタイプのキャラクターが登場する。鈴木さんなら、そんなときどうしますか?
「僕は、困っている人みんながいい方向に変わっていけるように時間をかけて作戦を練りながら、機が熟すのを待ちます。本当は織田信長や豊臣秀吉タイプになりたいんですけど、どうも自分は徳川家康タイプみたいで。僕のそういうやり方には、いいところもあると思うのですがスピード感に欠けるんですよね。相手の立場を必要以上に考えて言葉を選びすぎてしまったことで、肝心のメッセージが伝わらないパターンもあるので、ときには感情のままにぶつかっていくのも大事なんだなということを日々実感しているところです」
すずき・りょうへい●1983年3月29日、兵庫県生まれ。2006年に俳優デビュー後、数多くの話題作で幅広い役柄を演じる。最近の主な主演作にドラマ『レンアイ漫画家』『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』ほか。『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』が2023年に公開予定。
Twitter:ryoheiheisuzuki
公式サイト:https://sp.horipro.jp/talents/detail/8?m=pc_8prof/
『広島ジャンゴ2022』
牡蠣工場で働くシフト担当の木村(鈴木亮平)は、周囲に合わせることをしないパートタイマーの山本(天海祐希)に手を焼いていた。そんなある日、木村が目覚めると、山本は子連れガンマンのジャンゴ、自分はその愛馬の姿に。ふたりは、ワンマンな町長が牛耳る西部の町“ヒロシマ”の騒動に巻き込まれていく。東京公演は4月30日まで、大阪公演は5月6~16日に上演。
撮影/峠 雄三 ヘア&メイク/古久保英人(Otie) スタイリスト/八木啓紀 取材・文/吉川由希子
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