年末にふさわしい豪華な布陣が話題の、2夜連続ドラマスペシャル山崎豊子『女系家族』(テレビ朝日系)の放送が、間近に迫ってきました。 大作家・山崎豊子さんの代表作の一つであり、遺産相続問題をきっかけに人間の果てしない欲望や嫉妬、愛憎などを浮き彫りにする不朽の名作。これまで何度も映像化されてきましたが、それぞれ素晴らしい作品として語り継がれています。そんな『女系家族』に、また新たな息吹を吹き込んだ名作が加わります。
寺島しのぶさんと宮沢りえさんという、日本を代表する女優のお二人がW主演! 大阪・船場の老舗木綿問屋「矢島商店」の長女・矢島藤代を寺島さんが、亡くなった父・嘉蔵(役所広司)がひた隠しにしていた愛人・浜田文乃を宮沢さんが演じます。
跡取りの”総領娘”として育てられながら、一度は結婚で家を出て、離婚後に出戻った藤代と二人の妹たちや親戚縁者、番頭などとの駆け引きに、突然、存在が明らかになった愛人・文代が加わり、遺産相続は泥仕合に。そうした騒動の中で見え隠れする、それぞれの立場や悩みを描きながら、あっと驚くラストまで、一瞬も見過ごせない物語です。
今回、総領娘・藤代を華やかに演じた寺島しのぶさんに、『女系家族』という物語の魅力を語っていただきました。
藤代はきっと、とっても不安だったと思うんです。
——『女系家族』の原作は1963年の作品です。読み継がれ、何度か映像化もされてきました。今回、令和の時代となって、また新たに鶴橋康夫監督による『女系家族』が生まれました。主演のお一人として、参加されていかがでしたか。
「原作や以前の映像作品と異なるのは、たとえばスマホといった、ちょっとした小道具だけで、物語の中身は不変というのがすごい。いつの時代でも、人間の根本は変わらないんですよね。山崎さんの作品は、どれも素晴らしいですから、過去に映像化された作品もまた、すべて素敵です。最近、重厚感のあるテレビドラマが少なくなっている印象がありますが、『女系家族』は珍しく重厚感たっぷりで、見ごたえのあるものに仕上がったはず。視聴者の皆様にも、そこを楽しんでいただけたらいいな、と思っています。鶴橋監督の作品には何度も参加させていただいていますが、鶴橋監督のために頑張りたい、という気持ちになるような、人を惹き付ける魅力をお持ちです。特に台本のト書き(セリフ以外の描写説明)に監督の熱い思いがこもっていて、このト書きをキチンとやりたい!と思うんですよ。監督に『大オッケー!』『オーライ!』と言っていただけると、もっとその声を聞きたい、とさらに頑張れました」
——意外にも、宮沢りえさんとは初共演だそうですね。
「よくここまで交わらずに来たな、と思いました。同年代だからこそ、交わらなかったのでしょうか。そんな私たちがこの作品、この役柄でご一緒することに感慨を覚えます。相対して演じる場面は、それほど多くはありませんが、やはり、宮沢さんは間違いなく、日本のトップ女優ですから、ご一緒できて光栄でした。お互いに良いお芝居を引き出し合えるように、と思って撮影に臨みました」
——撮影中、印象深かったシーンはありますか。
「渡辺えりさんとご一緒するシーンは、いつも本当に面白くて。三女の雛子(山本美月)を操ろうとする叔母・芳子役で、監督のウィットに富んだト書きに合わせて”我が我が”という部分を、やりすぎなくらいに演じていらっしゃるんですが、つい、笑いそうになっちゃう。『以前、同じ役を演じた浅田美代子さん風に演じる!』と渡辺さんはおっしゃっていましたが、あれは全然、浅田さん風ではないと思う(笑)。渡辺さんならではの芳子で、今回の『女系家族』の見どころの一つと思っています」
——演じた矢島藤代という女性について。
「私は”女系筋の家”を体験したことがありませんが、女系家族なりの意地の張り合いや同性同士のエゴがあるのではないか、と感じました。遺産相続問題が起こるまでは仲良くしていたのに、遺産相続の分配の権利を争うようになり、ギスギスして、どんどんえげつなくなっていく様は、想像を膨らませて演じました。長女の藤代は、女系家族の総領娘として大事に育てられたけれど、もしかしたら、それがゆえに、婿として入った父親からの愛情をそれほどもらえていなかったのかもしれません。さらに、藤代の本来の性格がもし、跡取りの総領娘に適していなかったとしたら、うまく立ち回るのも苦しいでしょうし、わかりやすく、序列にこだわってしまうのではないか、と思います」
——藤代の気持ちをどう想像しましたか。
「一度、結婚して家を出て、次女・千寿(水川あさみ)夫婦に矢島商店を任せたのち、離婚して実家に出戻った藤代ですから、孤独を感じていたはず。次女には夫が、三女には芳子叔母さんが、思惑はどうあれ、味方としてついているけれど、自分にはいない。結局、自分は一人だと思ったら、藤代は本当に不安だったと思う。だから、芳三郎(伊藤英明)のようないい男のキラースマイルにほだされちゃう(笑)。正直で、騙されやすい面もあります。まっすぐすぎて、うまく立ち回って生きられない、という部分は、私自身と似通っているところかもしれません。そんな藤代をどう演じようか、というのは、悩みどころでしたが、1話と2話でトーンを少し変えています。1話はキンキンしていますが、2話では静かにトーンダウンさせています。トーンダウンさせた演技をどこまでお伝えできているかわかりませんが、うちひしがれた藤代はキンキンしたままではないはずだ、と私は思ったので……」
——今、藤代に声をかけるとしたら、どんな言葉をかけたいですか。
「コロナ禍という事情を考えずに言うと、しばらく海外に行ってらっしゃい、と言いたいかな? いったん、何もかもから自由になってほしい。しがらみから解き放たれた先で、自分がこれからどうしたいかが、きっと見えてくると思うから」
むしゃくしゃしたら、パフェを食べて心穏やかに!
——少しだけ、プライベートについて教えてください。ブログ「ほどほどに」のざっくばらんな文章と内容は、寺島さんを身近に感じます。たとえば、文明堂のモンブランパフェを食べたら、むしゃくしゃした気分が吹き飛んで心が穏やかになった話や、地方ロケで買い込んだおいしそうなものが近所の成城石井に売っていてがっかりした話など、共感して「ふふっ」となりました。更新も頻繁ですね。お忙しい毎日でしょうに、更新は大変ではないですか?
「全然、大変じゃないですよ。むしろ、書くことで自分の感情や状況を可視化できて、バランスがとれる気がしています。日々、そりゃいろんなことがありますが、モンブランパフェを食べて、自分の機嫌をとるのも、とても大切ですよね? ささいな日常を書き記すことが、私にとって今は自分自身のバロメーターになっています」
——昨年来のコロナ禍で、たくさんの気づきがあったのではないでしょうか。その中から、何か教えていただけますか。
「それはもう、身体のメンテナンスの大切さ、です! これは特に私のように人前に出る仕事の場合、顕著だと思うんですが、明らかに顔や身体がゆるくなってしまいました。最初は鬱陶しいと思っていたマスクも、ずっとつけなければならない状況になったら、逆にマスク頼りになるというか、お化粧も適当になるじゃないですか(笑)。ある日、鏡を見て、びっくりしました。このままではいかん!と痛感しましたよ。それから、いつ仕事がまた忙しくなってもいいように、ふだんからメンテナンスをしっかり心がけるようになりました。もう一つ、コロナ禍でちょっとだけ、やりくり上手になりました。家にこもるから、料理する頻度が上がり、昨日の残りの野菜をどう使おうか、といった、これまで私があまりうまくできていなかった、残り物で何か作る、といったことができるようになったんです。とはいえ、私は面倒くさがりですから、家族のために、しばらくやりくり上手で頑張ってみても、すぐに外食に行きたくなってしまうんですけどね(笑)。だから、自ら専業主婦として家を切り盛りしている方はプロフェッショナルだなあ、と思いますし、仕事と両立している方も本当にえらいなあ、と心からリスペクトしています」
テレビ朝日 2夜連続ドラマスペシャル
山崎豊子『女系家族』
宮沢りえ/寺島しのぶ W主演
12月4日(土)、5日(日) 2夜連続 21時スタート(テレビ朝日系列)
<あらすじ>
大阪・船場で老舗の木綿問屋を営む矢島家。代々娘たちが暖簾を守り続ける“女系筋”である『矢島商店』の四代目・嘉蔵が総額数十億円の遺産を遺して亡くなり、その遺言状が大番頭の大野宇市によって読み上げられる。
“出戻り”でもある長女で総領娘の矢島藤代(寺島しのぶ)、養子となる婿を迎え、矢島家を継ぐ気でいた次女の千寿、やや世間知らずなため、叔母である芳子の後ろ盾を得ている三女の雛子らが見守る中、明かされた遺言状の中身――それは矢島家の女たちの誰も想像すらしていない内容だった。
なんとそこには嘉蔵の愛人である浜田文乃(宮沢りえ)の名が。そして愛人である文乃にも遺産を分配するように、と記されていたのだ!
もちろんそんな遺言に納得するはずもない藤代ら矢島家の女たち。さらには文乃が嘉蔵の子を身ごもっていることまで明らかに…。藤代が懇意にする日本舞踊の師匠・梅村芳三郎、千寿の婿・良吉、そして大番頭の宇市といった、姉妹を取り巻く男たちも巻き込み、遺産相続だけではない、人間の欲望と嫉妬にまみれた激しい戦いが繰り広げられていく……。
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その他 スタイリスト私物
撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/光倉カオル(dynamic)スタイリスト/中井綾子(crêpe) 取材・文/中沢明子
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