何種類ものハーブを布に包み、温かく蒸したものを全身に押し当てるトリートメント「ハーブボール」をご存知でしょうか。ハーブの香りに包まれ全身を芯から温めてくれるため「ハーブのお灸」とも言われており、タイやインドなどのアジア諸国を中心に、昔から伝統医療の一つとして治療で使われています。
今回ご紹介する「和草ハーブボール」は、ハーブボールをきっかけに人生が変わった一人の女性が生み出した日本独自のもの。
自宅で手軽に使えるのに身体の内側から元気になるような独特の心地良さはもちろんですが、私が是非伝えたいと感じたのが「誰かのためじゃなく、ワタシを生きる」というコンセプトと、その背景にある想いです。
家事育児や仕事などに追われ忙しく、ついつい自分のことを後回しにしてしまいがちなLEE世代の皆さんにこそ手に取ってほしい。
「ハーブ×温め×香り」の力を活かした日本ならではのハーブボールと、それを生み出した物語について、たっぷり取材してきました!
ハーブの専門家が作る「和草ハーブボール」って?
日本の文化を大切に、ひとつひとつ手作り
一般的にハーブボールというとタイやインドのハーブで作られたものが主流ですが、日本にも、日本人が昔から使ってきた効能高く馴染み深い薬草がたくさんあります。
「生まれついた風土のものほど、自分の身体にもっとも合う」という「身土不二」という考え方のもと、日本で日本人のためのハーブボールを作りたい。そして日本の文化や産業を大切にし魅力を伝えたいという想いから生まれたのが「和草ハーブボール」で、一つ一つ丁寧に全て手作業で作られています。
日本全国を巡り厳選した、農薬不使用の国産ハーブ
取材を通してまず驚いたのが、使っているハーブへのこだわりです。
日本全国各地の提携先を実際に訪れ、栽培方法や環境を確認し、生産者の方々からお話を丁寧に伺った上で納得したものだけを厳選しているそうで、全て農薬不使用。食べられる品質の安心・安全なハーブのみを使用しており、日本で唯一のハーブボール国内製造工場があるというお話も印象的でした。
レンジで1分!手軽に使えることも魅力
そんなこだわりの詰まった「和草ハーブボール」ですが、使い方はとっても簡単!
家で使う場合は、丸い部分を水で濡らしラップで包んだ上で、レンジで約1分加熱するだけでOK!
私は毎回、まず服の上から肩回りに当て、直接肌に当てられるくらいの温度になってから耳や目の上から優しく押し当てるのがお気に入りです。ころんとしたフォルムが可愛く触り心地の良さにも癒され、どこか懐かしさのある香りを嗅ぐだけでもリラックスできます。
人生を変えたハーブボールの魅力を、日本にも伝えたい!
衝撃の出会い、退職し単身タイとインドへ
今回お話を伺ったのは、株式会社MavivRe®(マヴィーブル)代表取締役で一般社団法人ハーブボールセラピスト協会代表理事の永田舞さんです。
ハーブボールを日本に紹介し、ハーブボールセラピスト協会を作られた永田さんはLEE世代でもあります。
タイでハーブボールに出会ったのは全くの偶然だったそうですが、「この素晴らしさをどうしても伝えたい!」という一心で、帰国後すぐに当時勤めていた大手企業を退職。その当時は今から10年以上前でまだ日本でハーブボールを学べる場所はどこにもなかったため、自分で研究や開発をするしかないと思い立ち、突き動かされるようにタイとインドに行き学びつくしたというから驚きです。
「当時20代半ばだったのですが、新卒の頃から会社での激務と家族の介護が重なる中で体調を崩していき、その後大切な人の死に直面したことで支えを失い、生きる意味さえわからなくなっていました。そんな中で縁あって初めてタイへ行き、偶然訪れたスパで受けたのがハーブボールによる施術でした。
そのスパでは自分たちの畑で作った無農薬のハーブを毎朝採り、体調や気候に合わせてふかふかのハーブボールにしていました。それを当てられた時に、自分の感覚が一気にぱっと開いたような身体に電気が走ったような…その香りと柔らかさと温かさに安心感や受容力を感じ、自分は生きてきて良かったんだと存在意義を取り戻せたような衝撃がありました。まさかそんな気持ちになるなんて思ってもいなくて、涙が止まらなくなってしまった私のことを、タイ人のセラピストの方がおろおろしながら見ていました(笑)。」
タイへ何年か通いながら「ハーブボール」と名前の付く講座は全て通ううち、もともとはインドのアーユルヴェーダの考えに基づいていると知り、今度はインドへ。僧侶の方々もたくさんいるような場所でアーユルヴェーダやハーブについて学び、さらにはスリランカやバリなどアジア諸国へも訪れ、その土地に根差した独自の療法やハーブについての知見を深めていったといいます。
日本で日本人のためのハーブボールを
永田さんは長野県出身で祖父母に育てられていたこともあり、小さい頃から ヨモギやドクダミといった薬草を食べたり触ったりする機会が多かったそう。
「当初から、日本で日本人のためのハーブボールを作った方が馴染みもあり身体にも合うはずだし、おうちなど身近な場所で必要な時に気軽に使うことができるのでは考えていました。 まずは海外でハーブボールについて学びつつ、日本のハーブの勉強と研究も並行して進め、身近な日本の薬草を使い調合するなど試行錯誤を重ねました。」
そうやって2年ほど過ごしたのちに2011年、29歳の時に開業し今年10年目を迎えました。
北海道~西表島まで!日本のDNAを入れたい
日本は南北に長く土地によって気候が大きく違うため、各地に独自の良いハーブがあるといいます。
「本当はそれぞれの県のハーブボールがあった方がいいんだろうなと思っているくらい。だからこそ、色々な産地のものを使って日本のDNAを入れる様な気持ちで作りたいと考え、様々な地域のものを見るようになりました。
生産者の方々は皆さん、 自分たちが一所懸命作られたものだからこそ、その想いを共有する人に使ってほしいと考えると思います。だからこそ実際に現地へ足を運び、その活動や想いに触れ、どう協力し合えるか共に考えるというスタイルを大切にしています。まさか北海道から西表島まで、こんなにたくさんの方々と良い関係が築けるとは想像もしていませんでした。」
「誰かのためじゃなく、ワタシを生きる」
自分の心とに身体に目を向けるきっかけに
「自分も20代30代を精一杯過ごしながら仕事を通して多くの女性を見てきました。
仕事や育児・介護など毎日慌ただしく過ごしていると、どうしても自分のことは後回しになってしまいがち。自分ではない『誰か』のために生き過ぎてしまうと、自分の心と身体が置き去りにされ、どんどん本来の自分から遠ざかってしまうと思うんです。」
母・働く女性・娘…色々な「役割」を果たしながら誰かのために頑張ってる中で、ハーブボールを通して1日5分でもいいので自分に還れる様な時間を過ごしていただけたら嬉しいと話す永田さん。
「周りのためにという気持ちはもちろん素晴らしいことですし、子育て中等そうせざるを得ない時期もあると思います。でも、一番最初にあるのはやっぱり自分の心と身体ではないでしょうか。『ワタシ』が元気で笑顔だからこそ周りに還元できる。ハーブボールを使うことで短い時間でも自分に軸を戻し、『自分』を主語にしてより生き生きと過ごして欲しい…そんな想いを込めて『誰かのためじゃなく、ワタシを生きる』をコンセプトに掲げています。家族も、やっぱりお母さんが笑顔でないと家族は笑顔になれないですよね。」
そんなご自身も、今年末からは長野と東京の二拠点で活動を始める予定で「『ワタシライフ』を更に謳歌していきたい」と話します。
コロナ禍で家族同士のケアなど、ニーズの高まりも
また、自粛が長引く中で家族同士のコミュニケーションとしてもニーズが高まっていることを感じるといいます。
コロナ禍で人気が高まっているのが、仕事や家事をしながら使える首肩パッド。男性からの問い合わせも増えているそう!大人はアイピローとして使える小さなサイズは、お子さん用としても。夏やお熱の際は冷やして使うこともできるのだとか。
「人に当ててもらうのも気持ちが良いのですが、例えばお腹が痛いというお子さんにママが当ててあげると、お子さんはちゃんとそれを覚えていて今度はママにしてくれる。思春期など距離感が難しい時期でも、ハーブボールがひとつあるとワンクッションになり顔を見なくても当てながら少しおしゃべりができて会話が増えたといった感想もいただいています。あとは会えないご両親にプレゼントするなど、親子・夫婦・家族の中でコミュニケーションのツールとして使われることが増えたと感じています。」
最後にこれからの季節のオススメを伺ったところ、女性に特化したブレンドでもある「愛」という答えが。
「夏冬などのはっきりした気候の次に来る春や秋は、前の季節の疲れが出やすく次の季節に向かう準備も必要で、心身共に不調が出やすい時期。特に秋は肺をケアしてあげると良いと言われており、胸に当てて深呼吸するのがおすすめの使い方です。
そして秋も深くなると寒さがでてくるためいわゆる『首』といわれる場所、手首足首の内側の血管に当たる所に当てると身体が温まりやすくなります。女性の場合は、ハーブボールの上に座るというのが最高のセルフケアだと思っています!」
私も実際にやってみましたが、「ヨモギ蒸し」のような感覚が手軽に味わえる衝撃の気持ち良さで、身体の芯がこんなに冷えているのだとびっくりしました…。
自分や家族、そして地球環境にも優しく、温かな想いと日本ならではの良さが詰まった「和草ハーブボール」。
気になった方は是非一度、その温もりを試していただけたら嬉しいです!
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。