毎日必ず目にしているけれど、毎日掃除をする人はかなり稀な場所……それは、住まいの「壁」「天井」。そして、意外と掃除方法を知らない人も多い「壁」「天井」。
今回は住まいの「壁」「天井」の基礎知識から、正しいお手入れ方法、張り替え(リフォーム)の目安までご説明します。
住まいの「壁」「天井」基礎知識
近年、ステキな壁のおうちが増えています。雑誌やSNSで披露される、色合いも模様もテクスチャーも多様な壁たち! とはいえ日本の住まいの約9割もの壁には「ビニールクロス」(ポリ塩化ビニール)が使われているのだそう。壁紙と呼ばれてはいますが「紙」ではなく、「クロス」といっても「布」ではない「ビニールクロス」は、ビニールゆえに比較的掃除のしやすい素材で、「天井」にも使われています。
残り1割の壁の素材には、「紙クロス」「布クロス」、また塗り壁と呼ばれる「漆喰」「珪藻土」。また木質系の「無垢材」や「化粧合板」、調湿や消臭機能があるものもある「タイル」などが使われます。
「ビニールクロス」の上などに「ペンキ」を塗るのも近年人気ですね。
ところで仮に12畳(20平米弱)のリビングがあるとすれば、天井も20平米弱。そして壁は50平米程度もの面積があります。
床面積の3倍近くもあるボリュームの壁、天井! 広いですよね。ですから掃除がなかなかできていなくても、無理もありません。また実際のところ床のような激しい汚れ方はしにくい場所です。
ただ、時間をかけて少しずつ汚れがたまってしまうポイントというのはいくつかあります。
「壁」「天井」の汚れポイントとは?
多くの方が気づきやすい壁汚れに、テレビや冷蔵庫といった家電の近くの黒ずみ、いわゆる「静電気汚れ」があります。稼働し続けている固定電話機、エアコン、PC、DVDプレーヤーなどの周りの壁に煤煙などの微粒子が引き寄せられ、薄っすら黒くなってしまいます。
換気をこまめに行う昨今のライフスタイルでは、風の通り道からそれた空気が滞る「壁」と「天井」のきわなどにホコリ汚れが溜まりやすく、背の高い家族などの指摘で気づいたりします。
真夏など、エアコンの稼働時間が長いと冷風がずっと当たり続けるような、天井近いポイントにも同様にホコリが集まってきます。こういったホコリにはキッチンから出る油煙が混じっていてベタベタすることもあります。
またドアノブに接している壁、スイッチプレートの周囲などの壁には手垢による皮脂汚れが付きやすいものです。喫煙するご家族がいる場合、ヤニ汚れが。小さいお子さんがいる場合には、鉛筆やクレヨンなどによる落書き汚れなども気になりやすい汚れです。
「壁」「天井」の基本の掃除方法
素材を問わず、「壁」「天井」にもっとも付着しやすい「ホコリ」。ホコリ汚れを落とすだけであれば、伸長する柔らかな不織布モップなどでのホコリ取り、やさしい乾拭きが基本で、それで十分です。
広域に汚れが付いている場合には、ハンディタイプの掃除機のヘッドにタオルなどを巻きつけて保護し、壁を撫でるように吸引してもよいでしょう。
「ビニールクロス」(ポリ塩化ビニール)の場合は少々の水気にも耐えますので、煤煙、油煙、手垢、ヤニを含んだ汚れに対しては、弱アルカリ性の住居用洗剤を含ませた柔らかい布(タオルなど)で、軽く叩くように拭くことができます。
ただしクロスがよれたり剥がれたりするのでくれぐれもゴシゴシ力を入れないようにしましょう。洗剤拭きの後は水で濯いで固く絞ったものでの濯ぎ拭きを忘れずに。
落書き汚れ、鉛筆の場合はまず消しゴムをあてます。クレヨンでの落書きには前述の住居用洗剤、なければ食器用の中性洗剤でも構わないので、原液を塗って少ししてからボロ布かキッチンペーパー等で拭き取り、濯ぎ拭きをします。ただ、ビニールクロスが凹凸の多いタイプの場合は、完全に白くは戻らない可能性があります。
壁にはカビが生えてしまうこともあります。壁のカビは、消毒用エタノールで拭き取るのですが、基本的に水回りではない場所のカビには市販の次亜塩素酸ナトリウムを主成分としたカビ取り剤は使わないようにしてください。
低い位置以外の「壁」、高所や「天井」の掃除には転落、転倒のリスクがあり、危険です。少しでも無理だと感じたら止め、プロへの外注を検討してください。
「壁」「天井」の寿命って?
一般の住宅の壁、天井に貼られた「ビニールクロス」(ポリ塩化ビニール)の寿命(耐用年数)は、20年程前の通説ではおよそ7~10年程度、近年では10~15年程度と言われています。
その年数を左右するのはお手入れの頻度以外にも、通風や日照、湿度、カビの有無やペットなどによる破損、突っ張り棒の使用の有無など、さまざまな要素が絡むもの。一概に何年と言えないところがあるのです。
暮らしは365日24時間休みなく、また家族のライフスタイルは刻々と変化するもの。そこで暮らす私たちを、おおらかに見守ってくれている「壁」「天井」。
忙しさの中いまいちお手入れが行き届かなくても、子どもたちがやらかしてしまっても。あまり苦にせず、「いずれ貼り替えるもの!」と割り切ってしまうのも、上手な暮らし方なのかもしれません。
LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!
藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。
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