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LIFE

性差別や性被害、ハラスメントなど、女性の自尊心を削る出来事を減らしたい。長田杏奈さんインタビュー

  • LEE編集部

2021.06.27

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長田杏奈さん

引き続き、美容ライターの長田杏奈さんのインタビューをお届けします。美容部員の母の影響で幼い頃から美容に親しんできたものの当時は美容を仕事にするつもりはなく、大学時代は司法試験の受験勉強に勤しむ日々。受験断念後、IT企業2社を経て週刊女性誌の記者に。ライターの仕事に手応えを感じ、「やっぱり美容が好き」と再認識します。妊娠を機にフリーランスの美容ライターに転身。ワンオペ育児と執筆活動の両立で多忙を極めくじけそうになっても、決して仕事を辞めようとは思わなかったといいます。

今回は、初著書『美容は自尊心の筋トレ』執筆裏話や、責任編集を務めたフェミニズム雑誌『エトセトラ』の制作秘話をじっくり語ってもらいます。長田さんが「女性の自尊心を応援することをライフワークにしよう」と社会運動を始め現在に至るまでの経緯は「ウェルネスをたどる旅」そのものでした。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む

花を生活に取り入れたら、体調が持ち直した

「2017年年末から2018年の頭にかけて、疲れが溜まって体調を崩してヨボヨボになったんです。ライターって、自分とは違う視点や価値観の他人の話を聞き、そのエッセンスを抽出し、文章として吐き出す鵜飼の鵜みたいな仕事で。入れ込みすぎたり仕事を詰め過ぎると、心身ともに疲弊しちゃうんですよね」。病院や代替医療でも回復しなかった長田さんが行き着いたのは、花でした。

「花を生活に取り入れたら体調が持ち直しました。花の癒やし効果は絶大です。人の話を聴き過ぎた時のなんとも言えない疲れがを、花の力で追い出せるようなりました。おかしな例えかもしれませんが、自分の中に降ろした、インタビューを受けてくれた人の残留思念がひゅーっと抜けていくような(笑)。私は凝り性な一方で飽きっぽくもあるのですが、花は長続きしてますね。思い返すと週刊女性誌の記者時代もベランダを花だらけにしていました(笑)」

そして花にまつわるとある出来事が、長田さんの転機となります。女性限定のイベントに友人と出店。リクエストに応じてその場で花冠やピアスを作り、持参したリップパレットの中から似合うリップを選んで塗って、チェキを撮るという生花を使ったアクセサリー屋さんを開きました。嬉しさのあまり頬が紅潮し目がキラキラしている女性たちを見て、これまでにない達成感を覚えたといいます。これを機に長田さんは「女の子の自尊心を応援することをライフワークにしよう!」と決意。この時の友人と誘い合わせて、性暴力に反対する「フラワーデモ」に足を運ぶようになります。

「モテ」乱用への苛立ちや怒りを原稿にぶつける

長田杏奈さん著書

長年、裏方として自分を出さないことを美学としてた長田さんが考え方を変えるきっかけとなったのが、雑誌で依頼された連載コラム。編集担当者に長田さんのことを推薦してくれたのは、同業の亡くなった友人。原稿に「自分を出す」ことが苦手な長田さんとは対照的に、自分をさらけ出して書くことでたくさんの人を救うタイプの書き手でした。その友人の残してくれたメッセージを受け取るつもりで、「自分を出すことから逃げるのはやめよう」と思うようになったといいます。

少しずつ自分の気持ちや考えを書く練習を続け、2019年には書籍『美容は自尊心の筋トレ』を執筆。当時はインターネット記事に「モテ」という単語が氾濫していました。より多くの読者数を獲得するため、記事内容と直接関係ないにもかかわらず、タイトルに「モテ」という単語が使われることもしばしば。

「正解の美に近づけるためにダメ出ししたり努力を煽る作りのコンテンツが多かったし、アンチエイジングの旗印の元ずっと若くいることや、自分の心地よさや好きに背を向けてたくさんの人に愛されることがそんなにいいことなのかな?ってフラストレーションを感じていました」。大好きな美容のはずが、正解を押し付けたりコンプレックスをあおってしまっていることも……。長田さんの思う「美容」と、世間が思う「美容」とのズレへの違和感や、「モテ」「アンチエイジング」乱用への苛立ちや怒りを原稿にぶつけました。

『エトセトラ』アンケート集計しながらボロ泣き

長田杏奈さん

「書籍を読んで救われたという人、これまで辛い思いをしてきた人、容姿についてひどい言葉を投げかけられて長い間傷ついていた人……お手紙やDMを読んで、思っていた以上に悩んでいた人が多かったことを知りました。私は気に入らん!みたいな自分事で終わらせるのではなく、この人たちのためにちゃんと長い目で見てやらなきゃいけないな、と思うきっかけになりました」

『美容は自尊心の筋トレ』の出版後、フェミニズム雑誌『エトセトラ』の3号で責任編集を手がけることに。テーマは「私の私による私のための身体」。幼少時に母が買ってきてくれた雑誌『MORE』に掲載されていた、女性の身体にまつわるアンケート企画「モアレポート」の現代版をやろうと思い立ち、アンケート企画「エトセトラレポート2020」を敢行します。資料として『モアレポート』の古本を取り寄せて読んだとき、当時に比べて今の女性向けメディアでは女性の身体についての語りが不足しているのではないかと危機感を覚えたそう。

「1300人もの女性から回答をいただきました。アンケートひとつひとつに目を通して集計しながら『こんなに辛い思いをしている人がいるの?』とボロ泣きして作業が進まなくて……。今でも記事を作るときは、この時に集まった声を思い出します。辛い思いをする人が少しでも減るマシな社会にするために、自分のいる場所からできることは何かなって」



「#8891」と「#8008」あなたは知っていますか?

「#8891」「#8008」告知のステッカー

「#8891」「#8008」告知のステッカー。一見ポップですが、よく見るとモチーフの花瓶が割れていたり、果実が傷んでいたり。「イラストを描いた友人は、ただのハッピーな感じにはしたくなかったそう」

コロナ禍の影響で性暴力が増加していた2020年10月、性暴力被害者のためのワンストップセンターの短縮ダイヤル「#8891」が開通。各都道府県の最寄りのワンストップセンターに繋がるナビダイヤルです。性暴力の話題になった時にこの短縮ダイヤルの存在を知らない人が多いことに気づき、友人と「もっと知られてほしいよね」と、告知用のステッカーを作成することを思い立ちます。

SNSで「このステッカーを欲しい方に送ります」と発信。店舗、自治体の地域センター、「まだ女性がものを言える場所じゃないんです」という個人など、全国から応募が殺到しました。とある自治体の役所のDV相談窓口からも問い合わせが来たことがきっかけで、DV相談の短縮ダイヤル「#8008」バージョンのステッカーも作ることに。DVについての解説を掲載したデジタル冊子も併せて作成し、ダウンロードして利用できるようにしました。

「このステッカーをきっかけに全国から『こういう相談を受けるんです』『ここにステッカーを置いたら減ってました!』『私たちの住んでいる地域ではこんなことが……』といった具体的な話を聞く機会が増え、女性の置かれた状況について改めて色々と考えさせられました。最近気になるのは、性暴力の二次被害。『そんな格好をしていた方が悪い』『隙があったから悪い』『許した方が楽だよ』といった二次被害を減らしたい。言った人は悪気がなくても、被害者は命に関わるダメージを受けることもあるんです。海外では二次被害について解説して啓蒙するカードもあったりして、日本でも実現できないか、可能性を探っています」

美容の仕事と社会活動の両立、自分の中では矛盾ない

長田杏奈さん

愛犬のちょんまげちゃんでパワーチャージ中。

仕事の依頼内容や性質が変わるにつれ、長田さん自身の関心もより広範かつ硬派に。性被害について学ぶうちに女性の身体について知識を深めることの重要性にも気づき、近頃は「フェムテック」という切り口で、生理や女性の身体について記事執筆や企画監修をする機会が増えました。とはいえ先日、久々に雑誌『BAILA』のベストコスメ大賞の記事を執筆した折には、コスメの持つ、綺麗な色や質感にも癒やされたといいます。

「これまでは美容を媒介に読者に話しかけていましたが、今では美容を介せず話すことが増えてます。美容は自分を慈しむトリートメントやケアであり、自己表現の手段でもあります。一方で、女性の身に起こる性差別や性被害やハラスメントなど、自分ではどうにもならないような自尊心を削る出来事を減らしたい。どちらも私にとって、女性の自尊心を応援するための行動。一見かけ離れているようだけど、自分の中では矛盾なく繋がっているんです」

また法律の勉強をしようかな…?

長田杏奈さん

社会運動に関わるうちに、いわゆる「リベラル」な人でもジェンダーについて話すと急に感覚がおかしくなったり、社会的に「良いことをしている」とされる活動の中で女性関連の話だけが立ち後れていることを痛感した長田さん。司法試験の受験勉強を通じ机上で触れた法律の理想と、社会に出てから実際に触れる法律との間の乖離を感じ、法律の勉強を再開しようか検討中です。

「せっかく上がった声を潰すために法律が使われたり、良い弁護士をつける経済力のある人の主張が正義とされてしまうことで、苦しんでいる人が多くて。自分が飽きっぽいことを自覚しているので燃え尽きてしまうかもしれないし、全部をそっちに捧げるのは怖い。まだ自分の中で踏ん切りがつかない状態だけど、『ライターが本業で、こっそり法律にも詳しい』という立ち位置で弱い立場に追い込まれている人に助太刀できたらいいな、とちょっと妄想してます。人に知られたいとか影響力を持ちたいとは思わないけど、発信する内容を気にかけてくれる人が少しでもいるんだったら、なるべく良い影響を与えたいという責任は感じています」

長田さんに聞きました

身体のウェルネスのためにしていること

養命酒ホットミルクとジュースクレンズ

ジュースクレンズ

「夜寝る前に必ず、養命酒を牛乳で割って温めてアルコールを飛ばしたものを飲みます。身体がポカポカするし、飲むと就寝モードに切り替わります。また、生理前に体調不良でご飯が食べられなくなる時期があり、半日だけSUNSHINE JUICEのリセットイエスタデイセットでジュースクレンジングをします。いつも注文するのはナーリーグリーン、デトックスウィズビート、リハーブショット。飲むと体調が良くなります」

心のウェルネスのためにしていること

メンタルヘルスケアアプリで感情を記録

「ここ1年ほど、メンタルヘルスケアのアプリ『Awarefy』で感情記録を付けています。感情をメモし、アプリからの質問に答えたりタグ選択したりすると、自分が不安になるのはどういうときなのかなど分析できるようになります。毎日ではなく、心が動いたとき、調子の悪いとき、不安なときに使います」

長田杏奈さん

撮影/高村瑞穂 取材・文/露木桃子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
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