ジェンダー、女性差別、貧困、性教育、政治……と各分野に詳しい、映画ライターの折田千鶴子さんがおすすめ作品をセレクト。ストーリー性が高く、楽しみながら考えさせられる作品ばかりです。
映画ライター 折田千鶴子さん
LEEにて映画コーナーを担当。LEEwebでは「カルチャーナビアネックス」としてよりディープな映画情報を発信中。
映画ライターとして数多くの作品を知る折田千鶴子さんが「見たときの衝撃が忘れられない」という作品とは?
「戸籍がない貧困の少年が主人公の『存在のない子供たち』。少年が『自分を産んだ罪で両親を訴える』という展開になるのですが、その罪状を『こんな世界に僕を産んだから』と怒りや悲しみ込めて訴える姿に震えが……!
こんな小さな子どもが尊厳を失わない姿に、目を覚まされる感覚に。公開中の『海辺の彼女たち』はこの舞台が日本であることに衝撃。彼女たちの安い労働力を踏みつけるような形で、日本人が安価に食べ物を口にできている。罪の意識を覚えずにはいられません」(折田千鶴子さん)
このような映画を見ながら、私たちはどんな視点を持つべきでしょうか。
「たまたま自分が平和な日本に生まれただけであって、今後どんな拍子で貧困に陥るかもしれないという意識で弱者を見つめること。どんな小さなことでも、自分ができることって何だろうと模索することも大切なのでは」(折田千鶴子さん)
映画 【存在のない子供たち】
理不尽に虐げられる、戸籍を持たない少年の勇敢さ、健気さ。見ながら終始半泣き状態に!
「主人公は戸籍を持たない12歳の少年ゼイン。中東のスラム街を舞台にした本作の貧困は、11歳女子を親が成人男性に嫁がせ売るといった言葉を失うほどのすさまじさ。絶望的な状況下でも、ゼインは自分を助けてくれた移民の黒人女性の赤ちゃんを命がけで守ろうとする。その勇敢で健気な姿に、終始半泣き状態に!」(折田千鶴子さん)
映画 【海辺の彼女たち】
技能実習生として来日した女性たちのリアルすぎる不安、つらさがやるせない
「東アジアから“技能実習生”として来日した女性たちが、超低賃金で酷使され、医者にもかかれない過酷な状況下に置かれていることを目の当たりにできる作品。ドキュメンタリーかと思うほどに、まだあどけなく見える若い彼女たちの不安、悲しさがリアルな息使いでスクリーンに立ち込めていて……。
おもしろいと言ったら語弊はあるものの、映画としての見応えがすごい。そして、私たちが自覚して変えていかなければと強く感じさせます」(折田千鶴子さん)
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詳しい内容は2021年LEE7月号(6/7発売)に掲載中です。
取材・原文/野々山 幸(TAPE)
※商品価格は消費税込みの総額表示(2021年6/7発売LEE7月号現在)です。
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