映画『サンドラの小さな家』シングルマザー、サンドラの大奮闘と究極の“DIY”に心奪われる感動作! 他1編
2021.04.13
『サンドラの小さな家』
究極の“DIY”を通して人生の再建と尊厳を奪還する感動作
アイルランドが生んだ新たな才能、クレア・ダンのオリジナル脚本、主演による本作は、サンダンス映画祭で大絶賛。シングルマザー、サンドラの大奮闘に、熱くならずにいられない珠玉の感動作だ。
激しい夫のDVからついに逃げ出したサンドラは、女性支援グループの助けを借り、幼い2人の娘と仮のホテル暮らしをはじめる。清掃員やパブの仕事をかけ持ちしても生活はギリギリ。ホテルでも蔑むような扱いを受けるうえ、公営住宅は何年先かの順番待ち。そんなある日、サンドラは娘の寝物語から、自分で家を建てるアイデアを思いつく。
激しいDVを受けながら、娘との合言葉で脱出に成功する冒頭から心臓バクバク! ホッと安心も束の間、3人を取り巻く厳しい状況や、娘を抱えて孤軍奮闘するサンドラの姿から目が離せない。
意外にも、偏屈で高圧的な人とばかり思っていた清掃の雇い主ペギーが裏の土地を提供。さらに偶然知り合った土木建設業者エイドの協力で、ついに家づくりが始まる。恐る恐る声をかけたパブの同僚やママ友らが集まり、少しずつ夢の家づくりが軌道に乗りはじめるが――。
土台からつくっていく究極のDIY映画としてのお楽しみの傍らで、元夫の存在がサスペンスを盛り上げる。娘と夫の面会日を律儀に守るサンドラに、時に猫なで声、時に恫喝し復縁を迫る彼に鳥肌が立つ。しかも法は、体裁のため親権を奪おうとする夫に味方。その理不尽!
何の罪もない被害者や女性に、社会も世間もなんて冷たいのか。そんな怒りに相反し、次第に増え、強まっていく仲間の絆や優しさに胸が熱くなる。手を貸すのはさまざまな人種、失業や病などいろんな事情を抱えた“痛みを知る者”たち。その連帯――今、世界に訴えたいすべてがここにある。そしてエイドが語る“助けることで、俺たちも助けられている”、アイルランドの“メハルの精神”が身にしみる。
生きづらい今を生きる私たちの背中を、本作がほのかに示す希望が優しく押す。(新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中)
『サンドラの小さな家』公式サイト
『パーム・スプリングス』
今度はそうきたかとひざを打つタイムループ・ラブコメディ
結婚式出席のためカリフォルニアの砂漠リゾート、パーム・スプリングスを訪れた見知らぬ男女が、目覚めると式当日の朝に戻るタイムループに陥る。
永遠に「式当日」が繰り返される中、2人は恋に落ちるが、女性は元に戻る方法を考え、男は彼女とこのまま一緒にいることを望み……。オスカー俳優J・K・シモンズが謎の老人役で登場。
おなじみのタイムループなのに新鮮、かつ男女のすれ違いに胸キュン。(4月9日より新宿ピカデリーほかにて公開)
『パーム・スプリングス』公式サイト
※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。
取材・原文/折田千鶴子
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。