『サニー 永遠の仲間たち』『怪しい彼女』と2本の主演映画が日本でリメイクされるほど大ヒットを飛ばした、韓国のトップ女優シム・ウンギョンさん。数年前に日本での活動を始めるや、『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。今やすっかり引っ張りだこに。演技力のみならず、普通に日本語でインタビューを受ける語学力にも驚嘆。
シム・ウンギョンさん「皆さんの心を癒すような映画だと言い切れます!」
「まだまだ不自由です。昨日は舞台の初稽古で、緊張したり言葉を噛んだりして、落ち込みながら夜はバタンキューしました」
しぐさを交えながら話す姿がとってもチャーミング。そんなウンギョンさんが自身をどこか重ねるように、異国から日本へやってきた女性を映画『椿の庭』で演じた。
「私が演じた渚は、シカゴで生まれ育った帰国子女。親を事故で亡くし、富司純子さん演じるお祖母ちゃんに会いにきて。最初は疎遠だったお祖母ちゃんと距離がありましたが、一緒に暮らすことで喪失感や心の傷が癒え、やがてお祖母ちゃんの家が安心できる場所になっていく――という流れを感じながら演じました」
祖母の住む高台の一軒家で、庭の椿をはじめ四季折々の花や草木を愛でながら、静かに時を過ごす2人。そのゆったりした時間、流れるやわらかな空気に魅せられる。
「とても素敵な日本家屋で、タイムマシンに乗って昔の時代に戻ったような感覚がありました。窓から海が見え、バナナの木もあって、夏には異国――どこか東南アジアのような雰囲気も感じられ、夢なのか異国なのか別世界なのか……。その曖昧なところが、私たちの映画の魅力だと思います」
本作を手がけたのは多数の広告写真で賞を受賞、38冊以上の写真集を発表し、世界的に高く評価される写真家の上田義彦監督。
「上田さんの目線による、独特で美しい世界観が集合した作品。初めて手がけられる映画で、どう撮影されるか傍らで拝見できて、とても光栄でした。皆さんの心を癒すような映画だと思います」
実はウンギョンさんにとって、日本での初仕事だったという本作。当然、苦労はあっただろう。
「渚をちゃんと演じられたのは、富司さんのお陰。四季を描くので1年くらいの間、定期的にお会いし、お家で過ごしながら撮りました。富司さんのそばでずっと姿や佇まい、お芝居に向き合う姿勢を拝見して、とても影響を受けました。出来上がった作品を観ても、その自然な姿は演技に思えないほど素敵でした」
人や草木や生き物の命、家族で暮らした家でさえも移ろいゆく――という切なさも映り込む。
「一期一会という言葉が好きで、人生ってまさにその言葉どおりだなと思うんです。映画やドラマの現場も舞台も、始まったらすぐに終わりがきてしまう。そんな小さな別れの連続に、いつも私ひとり切なさを感じていて(笑)。演じた役との“さよなら”も少し悲しい。人生すべて一期一会ですね」
さて、バタンキューするくらい多忙なウンギョンさんは、どうリラックスしていますか?
「必ずイヤホンをして、気分が楽しくなるK-POP系のダンスミュージックを大音量で聴きます。お天気がいいときは、少しの時間でも必ずお散歩に出かけます!」
シム・ウンギョン●1994年5月31日、韓国生まれ。『サニー 永遠の仲間たち』(’11年)で注目される。『怪しい彼女』(’14年)で数々の賞を受賞。日本映画『新聞記者』『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(ともに’19年)で主演。舞台『消えちゃう病とタイムバンカー』が5月1日まで上演中。
映画『椿の庭』
庭に椿が咲き誇る一軒家。夫の四十九日を終えた絹子(富司純子)は、子どもたちを育てたその家で、孫娘の渚(シム・ウンギョン)と暮らしている。東京から参列した娘の陶子(鈴木京香)は、年老いた母が姉の娘と2人きりで暮らしていることを心配している。そんなある日、絹子は一本の電話を受ける――。4月9日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
撮影/イマキイレカオリ ヘア&メイク/Shuco(3rd) 取材・文/折田千鶴子
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