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【映画】米アカデミー賞最有力候補『ノマドランド』“ノマド=遊牧民”という生き方から見えて来るもの

2021.03.12

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CINEMA

『ノマドランド』

©2020 20th Century Studios. All rights reserved.

©2020 20th Century Studios. All rights reserved.

“ノマド=遊牧民”という生き方から見えてくるものとは――

現在、米アカデミー賞最有力候補として各国映画祭で受賞リストを伸ばし続けている本作。世界をおおう不況や格差の問題を背景に、社会から押し出されたヒロインの生き方に、どこか憧れを禁じ得ないのはなぜか。

本作は私たちの奥底に眠る願望や本音、相反する保身や物欲など、この世界で自分がどう生きたいかを探る旅になるかもしれない。

米ネバダ州。企業の破綻で町そのものが閉鎖され、全住民が立ち退くことに。長年住み慣れた住居を失ったファーン(『ファーゴ』『スリー・ビルボード』のフランシス・マクドーマンド)は、亡き夫の思い出をキャンピングカーに詰め込み、季節労働の現場を渡り歩く生活を始める。

広大な自然の中をドライブしながら、荒野の中の巨大Amazon配送センター、国立公園のキャンプ場、収穫期の農場など、その日の暮らしのために汗を流す。そんな折、親しくするデイブ(デヴィッド・ストラザーン)が誕生した孫の顔を見るため家に帰ることに。誘われたファーンは同行するが、家のベッドで眠ることに違和感を覚え……。

原作タイトル『ノマド:漂流する高齢労働者たち』が示すとおり、ファーンと同じ生活を送るのが高齢者ばかりであることに驚く。だが、なぜか悲愴感はない。社会のシステムから解放されたゆえか、“自由に生きる”すがすがしさに満ちている。もちろん、ファーンの車のタイヤが何もない荒野でパンクしたように、死に直面する危険は常に伴う。病気になって稼げなくなっても、一発でアウトだ。けれど、一緒に暮らそうと懇願する妹夫婦の提案を却下するファーンにも共感してしまう。

孤独と背中合わせだが、自然を感じ、自立し、最小限のモノで工夫する喜びを覚える暮らしの心地よさ。ノマドたちの生をまっとうするたくましさと、自然に帰っていくかのような静かな諦念と達観に魅せられる。俳優2人以外は本物のノマドを本人役で起用し、ドキュメンタリー要素が生む真のリアルを差し込んだ、中国人女性監督クロエ・ジャオの手腕も光る!(3月26日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開)

『ノマドランド』公式サイト

 

『まともじゃないのは君も一緒』

©2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

©2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会



嘘から生まれた真の恋の行方は!? ちょっと可愛い恋物語

数学一筋でコミュニケーションが絶望的に苦手な予備校講師の大野(成田凌)は、生意気な教え子の香住(清原果耶)から、“普通とは何か”を教わることに。

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『あの頃。』公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。


取材・原文/折田千鶴子


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