子どもたちに伝える難しさを感じていた
東日本大震災から10年、あの日、皆さんはどう過ごしていましたか?
私は出産のために、東京から神戸に里帰り中でした。5日後に長男を出産し、みんなが悲しみと不安でいっぱいの時に「明るいニュースをありがとう」と皆さん我が事のように喜んでくれたのを覚えています。
もう一つ、震災関連でいうと、私は高校生の時に阪神淡路大震災を経験しました。水道、電気、ガスとライフラインは止まり、もちろん、交通機関もストップ。液状化現象で自宅は傾きましたが犬もいたので避難所へは行かず、水の配給や炊き出しが行われるまでは備蓄食料で過ごしました。余震に怯えながら、日常生活を取り戻すまで短くても数ヶ月かかり、高校生活はずっと仮設校舎でした。何よりも目の前で、大好きだった街や思い出を一瞬にして破壊する自然の力と、全く太刀打ちできない人間の無力さを思い知らされたのです。
母となってからは子どもたちに「防災の大切さ」「いざという時の行動」「自分の命を自分で守る術」をなんとしても伝えたいのですが、どれだけ言葉で伝えても難しい。折に触れて、ニュースが流れた時に説明したり、私が被災後に作った「震災日記」を見せ、宮城県石巻の大川小にも足を運び、できる限り想像しやすいように伝えてはいるのですが、どこまで伝わっているのか…。すると、日本科学未来館で特別企画「震災と未来」展 -東日本大震災10年-が開催中とのこと。
震災を忘れず、教訓を未来へ伝えるために「震災の記憶」「その後の人々が生んだ絆」「未来への課題」という3つの切り口で構成され、NHKがこれまで災害に向き合ってきた膨大なデータから作られています。子どもたちも日本科学未来館は大好きなので、ひと足お先に見てきました。
地震発生時の映像を大画面で…リアルすぎて涙が止まらず
まずは入り口すぐのZONE1「震災の記録」へ。そこには発生時の映像「押し寄せる大津波」が大画面で放映されています。地震の揺れの映像や津波の映像は何度も報道で見ていますが、これだけ大きなスクリーンと音響設備の整った空間で見ると、想像以上の衝撃。見たこともない真っ黒な波があっという間にすべてを飲み込んでしまう、その様子を「なにこれ…」と見ているだけしかできない、現場に居合わせた人たちの無力さや恐怖が、嫌というほど伝わり、自分の体験も重なり、もう涙が止まりませんでした。そのくらい、地震や津波に対する圧倒的な自然の力を目の当たりにできる展示なので、子どもと見るときは本人と相談しながら見たいと思います。
次に「地震発生から72時間」はNHKのニュース映像を時系列で視覚化され、同時多発的にさまざまな混乱が起こっていた様子がよくわかりました。さらに、印象的だったのが、被災前の街を1/500の模型で復元する東日本大震災復興支援「失われた街」模型復元プロジェクト。「この幼稚園出身でした」「学生のデートコース」など、手書きの旗があり、その土地の人にとって大切な思い出がびっしりと刻まれています。街としては失われてしまったけれど、人々の心には記憶の街として大切に残っているのです。
「こころフォト〜忘れない〜」では東日本大震災で亡くなられた方の写真と家族からのお手紙がデジタルアルバムに。10年経った今、残された方たちがどう生きようかを綴ったお手紙を読んでいると、苦悩の日々を暮らしながら、必死に前を向いている切なさが伝わってきて、ここでも号泣してしまいました。
羽生選手からレディー・ガガまで、復興のあゆみをダイジェストで
ZONE2に入ると2011年「今年の漢字」に選ばれた「絆」の文字が。現在のコロナもそうですが、改めて、人と人のつながりの大切さを思い知らされましたね。ここでは東北における復興のあゆみをNHKのニュース映像とともに、国内外のサポートやメモリアルアイテムが展示されています。
中でも皆さんも記憶にあると思いますが、レディー・ガガが書いた「日本の為に祈りを」ティーカップが展示されています。親日家としても知られる彼女は、震災翌日からチャリティリストバンドを販売するなど復興支援に積極的に取り組んできました。3ヶ月後には日本を訪れ、直筆のカップをオークションに出品。(現在は落札者の手を離れ、宮城県に寄贈されているそう)ほかにもNHK復興支援ソング「花は咲く」や羽生結弦選手が演技で着用した衣装、「あまちゃん」のゆかりの品々、東北楽天イーグルスの優勝の品々なども展示されています。
じゃぁ、これから私たちはどう考え、どう行動すれば?
そしていよいよZONE3は未来に向けて、どう行動すれば良いのか。これから起こりうる自然災害やその後の生活に備えて、私たちはどうこの教訓を生かすかを考えるフェーズに入ります。「防災クロスロード・その時どうする?」では、災害時に迫られるさまざまな「選択」を体験。自然災害時やその後の被災時には正解のない答えを自分で考え、選ばなくてはなりません。考え方も違う、抱えている問題も違う、そういった環境の中で、乗り越えなくてはならない課題が次々と出てくるので、難しさを改めて考えさせられました。
ほかにも、「つくってまもろう」では非常時のスリッパの作り方やおむつの作り方など、日本中で生み出された防災アイデアを展示(コロナ禍における災害の想定で飛沫感染防止テントも)。最後に小さなお子さんもわかりやすく「ざわざわ森のがんこちゃん」から避難行動を学べるようなコーナーもあり、大人から子どもまで、非常に学びの多い展示となっています。
かなり見どころの多い展示ですので、まずは子どもたち自身が興味や関心がある部分で触れて、そこをきっかけに震災や防災について考える良い機会になると思います。今月28日まで開催しているので、春休みに入ったらぜひ、子どもと改めて訪れたいな、と思います。入場料無料で事前予約制なので、詳しくはHPでご確認ください。
【特別企画「震災と未来」展 -東日本大震災10年-】
■会期:2021年3月6日(土)~3月28日(日) ※3月9日(火)、3月16日(火)は休館
■開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
■会場:日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン
■入場料:無料・事前予約制(展覧会公式サイトよりご予約)
この連載コラムの新着記事
-
【神戸】2泊3日の家族旅行へ行ってきました!ネイチャーライブ六甲、神戸須磨シーワールド…おすすめスポットをご紹介【2024年】
2024.11.17
-
【40代ママライターが試して実感】汗冷え・ムレ・におい…冬の汗悩みは、あったかインナー「ファイヤーアセドロン」で解消!
2024.11.08
-
【無印良品】話題の美容液、化粧水…マニアが選ぶ「使ってよかった!」スキンケアアイテム5選【2024年秋冬】
2024.11.01
-
車の香りどうしてる?話題の「TAMBURINS(タンバリンズ)」カーディフューザーを使ってみた!
2024.10.23
-
【ユニクロ×マリメッコ】2024秋冬を40代ライターが試着!ヒートテックやキッズなど注目アイテムが目白押し
2024.10.22
飯田りえ Rie Iida
ライター
1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。