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【尾上松也さんインタビュー】「主人公が解放され、成長していく感覚を共有したい」

2021.03.10

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尾上松也さん

ドラマ『半沢直樹』のカリスマIT社長役で、世間を大いに沸かせた歌舞伎俳優・尾上松也さん。現代演劇やミュージカル舞台でも精力的に活躍されてきた松也さんが、ポップで斬新な『すくってごらん』で映画初主演を務めた。東京から田舎へ、というだけでなく、現実世界から異世界に迷い込んだような、ブッ飛んだ世界観が心をくすぐる。

尾上松也さん「主人公が解放され、成長していく感覚を共有したい」

「かなりトリッキーな表現もしているので、脚本だけでは、どんな作品になるのか想像できませんでした。役を作るにあたって、全体のイメージを監督と話し合って共有し、その“芯”だけはブレずに、現場の流れに乗って役の落としどころを見つけていった感じです」

松也さんが演じるのは、左遷されたエリート銀行マンの香芝。細身のスーツに身を固め、前髪を垂らした香芝の、エリートを自負するガチガチな姿が妙におかしい。

「原作コミックのニュアンスを意識し、監督は前髪にこだわっていましたね(笑)。エリートだけど、オシャレに気を使うタイプではない、という見せ方を考えました」

一見ポーカーフェイスのくせに、心の中が言葉としてダダ漏れするのもおもしろい。左遷された心情を朗々と歌い上げたかと思えば、ラップで本音がツラツラ流れたり。

「あのラップシーンは、脚本でも最もワケがわからなかった(笑)。急に全編英語歌詞でラップを始めますから。でもミュージカルの持つ、いい意味での“バカバカしさ”を逆手に取っている、あのあたりも本当に大好きなところです」

尾上松也さん

歌舞伎の若手ホープともてはやされている松也さんが、大胆な変顔を含め、絶妙にダサい香芝を演じるギャップがたまらない。

「いえ、僕自身が飾らず“まんま”で生きている人間なので、カッコつけることが苦手なんです。現代劇ではもちろん、歌舞伎でも二枚目役はいまだに得意でない。二枚目って、クールで感情を表に出さないので。香芝くんも感情を激しく出すタイプではないですが、彼の特異性が出る役なので、僕としてはわりに楽に演じられました」

遊び心たっぷり、和テイストの映像美に目も喜ぶが、“金魚すくい”に引っかけて、香芝が周囲の人を、また自分自身をも“救っていく”展開が心にストンと落ちる。

「彼の偏見やプライドやコンプレックスは、誰もが知らないうちに持っているもの。だから人間的でもあって。忙しく仕事漬けになっていると、人からの見られ方や自分のポジションが気になって、息詰まってしまう。でも彼はこの町で“仕事は仕事、楽しむときはみんなで金魚すくい”ととらわれていない人たちに出会う。彼が解放され、成長していく感覚を皆さんと共有できたらうれしいです」

このコロナ禍で松也さんも、息苦しさにあえいだこともあったそう。それを癒してくれたのが……。

「外出好きでもないのに寂しがり屋の僕は、ネガティブに陥りかけて。そんなとき、いただいたキャンドルをたいたら、すごく気分が落ち着いたんです。それからハマりだし、今はいよいよ自分で作ろうかな、と(笑)。僕は火そのものに癒されるタイプなので、ウッドウィック社の芯がウッド製でパチパチたき火のような音がするキャンドルでリラックスしています。香りが欲しいときは、エステバンのお香をプラスしています」

Profile

尾上松也さん

おのえ・まつや●1985年1月30日、東京都生まれ。’90年、二代目尾上松也として5歳で初舞台。2009年より歌舞伎自主公演『挑む』、オリジナル公演『百傾繚乱』などに取り組む。近年は、連続ドラマ初主演『さぼリーマン甘太朗』(’17年)、『半沢直樹』(’20年)など映像作品でも活躍。



『すくってごらん』

ⓒ2020映画「すくってごらん」製作委員会 ⓒ大谷紀子/講談社

ⓒ2020映画「すくってごらん」製作委員会 ⓒ大谷紀子/講談社

メガバンクのエリート銀行マン、香芝誠(松也)は、失言で小さな田舎町に左遷される。絶望的な気分で到着した日、金魚すくいの店を営む吉乃(百田夏菜子)に一目惚れ。香芝はかたくなに数字だけを信じて生きようとするが、吉乃のことが頭から離れなくなり……。他の共演者に柿澤勇人、石田ニコル。3月12日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開。


撮影/イマキイレカオリ ヘア&メイク/岡田泰宜(PATIONN) スタイリスト/椎名宣光 取材・文/折田千鶴子

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