寒い、寒いと思っていても、日毎「昼間」が長くなっていくのを実感する初春。ところであまり見慣れないかも知れませんが「啓蟄(けいちつ)」という季節をあらわす言葉があります。「啓」は「ひらく」、「蟄」は「土の中で冬ごもりしている虫」を表し、「春の訪れにより、冬眠していた虫が地表に這い出してくる(時期)」という意味で、今年2021年は3月5日~19日がこれにあたります。
つまりは、私たちの身の回りに、望むと望まざるとに関わらずいろいろな「虫」たちが現れ出すのも、この時期からというわけで……。
暮らしのTips、今月は虫たちの中でも群を抜いて人気のない……「あの」イニシャルGの先取り対策のお話です。
意外と知らないG(ゴキブリ)のこと
世界中では3,600種類、国内でも数十種類いるというGの仲間ですが、私たちの暮らしに頻繁に出没するのは、その中でも2種類ほど。おおむね「クロG」か「チャバネG」だと言われています。
とはいえクロGの成虫の体長は4センチ、チャバネGは1.5センチほどと、かなり差があり、一見して分かるいかにもな「G」は、クロGの方だと思われます。なので今回は主にクロGについてご説明していきます(以下G)。
Gの一生。最初は卵の時代が約1か月。1匹のメスが一生に15~20回産卵する、ひとつの卵鞘(らんしょう)という22個から28個の卵の入った鞘(見た目は少し大きめの小豆のようなもの)のなかで育まれて孵り、まず5ミリほどの幼虫になります。
そこから8~12か月かけて大人になり、大きな成虫になってからさらに6~7か月生きます。幼虫時代の気温がまだ低ければゆっくり育ち、その分長く生きるので、おのおの一生の長さは環境によってばらつきが出ますが、ざっくり1匹の寿命は約2年ほどと考えられます。意外と長生きですよね。
さらに成虫は真冬を生き延びることができます。屋内(キッチンなどの電化製品の近く、食器棚などの裏)のほか、屋外であってもベランダやガレージに積み重ねられた段ボールや新聞紙などの隙間などが越冬の住処になりやすいです。
一方、卵が孵化し始めるのは気温がもっと上がった6月ごろからですが、冬を越した成虫はまさに啓蟄の3月ごろから活動しはじめます。つまり、この春のうちに適切な対策を講じないと、初夏から夏にかけて一気に増加してしまいかねないというわけなのです。
先取りしたいG対策その1~ゴミを減らす~
さて昨年から引き続くコロナ禍。どうしてもウイルス対策に気が行きがちとなり、実はG対策としては悪手を打っているケースがあります。その一つがステイホームの宅配活用にともなう段ボール、紙ゴミの増加です。
とにかくGは「暗くて」「暖かくて」「狭くて」「湿った」状況が大好きだということを覚えておいてください。特に「湿った紙」というのはGをわざわざ飼育する環境と同じなので、家の内外でそういう状態にしないことが大切です。
生ゴミを含め、あらゆるゴミは、すみやかに収集に出すこと。ベランダや軒下などに一時置きしているゴミの周囲も、できるだけ清潔にしておきましょう。
ゴミ以外であっても、プランターや鉢植え、傘立て、エアコン室外機、季節外のタイヤなどなど「暗くて」「暖かくて」「狭くて」「湿った」状態になりやすい箇所。家の中であっても閉め切った納戸や収納などの内部にも注意し、できるだけ頻繁に掃除など、「手入れ」をして、Gにとっての快適環境を維持しないようにしましょう。
先取りしたいG対策その2~毒エサを仕込む~
知られているようにGは雑食性です。私たちの出す食べ物カスのほか、本や壁紙、仲間の糞に至るまで何でも食べます。
しかしより美味しいものに惹かれます。そのため毒餌剤(どくじざい)と呼ばれる殺虫のためのエサ(すごくおいしい)の設置が効果的な対策になります。
市販の毒餌剤の良いところは、積極的に殺虫活動をこちらがとる必要がなく、ただ「置くだけ」で済み、かつ、ほとんど死骸の始末をする必要もないことです。毒エサを食べたGは苦しんで水場を求め下水などに降りてそこで息絶えるよう。想像すると残酷ですが……。
また硬いプラスティックケースに入った市販の毒餌剤は一回設置すると半年ほど効果が持続する点も便利です。
子どもやペットの誤食もしにくいくふうをこらされた製品が多いですが、くれぐれも設置の際には子どもやペットのおもちゃにならないよう十分注意してください。
毒餌剤を置く際のポイントは数を多めに置くこと。そして屋内用のみならず屋外用も仕込んでおくこと。
住まい内外の「暗くて」「暖かくて」「狭くて」「湿った」場所にまんべんなく置くことです。
玄関、洗面所、トイレ、寝室……ぜひGの気持ちになって居心地よさそうなところを探してみてくださいね!?
LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!
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藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。
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