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【西川美和監督初の原作もの『すばらしき世界』】役所広司演じる不器用すぎる三上から目が離せない!

2021.02.10

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『すばらしき世界』

すばらしき世界

©佐木隆三/2021 「すばらしき世界」製作委員会

粗野だが実直すぎる男の半生に、笑って泣かされる大傑作!

『ゆれる』(’06年)、『ディア・ドクター』(’09年)、『永い言い訳』(’16年)etc.……。清濁併せ持つ人間の多面性、そのおもしろさや不可思議さをユーモラスに描き出してきた西川美和監督。自身のオリジナル脚本にこだわってきた彼女が、初の原作ものに挑戦した『すばらしき世界』は、これまで同様、いやそれ以上に、期待を遥かに超えて私たちを深~い感動と感心の境地に連れていく。

何度も目を丸くしたり噴き出したりしながら、ラスト、涙を流し流し思わず“スゴイ”と呟いてしまう。

13年の刑期を終えて出所した三上正夫(役所広司)は、身元引受人夫婦(橋爪功、梶芽衣子)の助けを借り、今度こそまっとうに生きようと新生活を始める。しかし職探しは難航。さらにスーパーで万引き犯と間違えられ、騒ぎを起こしてしまう。そんな三上に、前科者が社会復帰する様子をドキュメンタリー番組にしようと、プロデューサー(長澤まさみ)の命を受けたフリーの制作・津乃田(仲野太賀)が、“生き分かれた母親を探してあげる”と近づいてくるが――。

教習所教官の後を癖からか行進でついていったり、身元引受人夫婦の優しさに胸が詰まり嗚咽を漏らしたり、かと思えばサラリーマンに絡んでいたチンピラを半殺しにしたり。一瞬たりとも三上から目が離せない! 粗野で短気で考えなしの直情型だが、困った人を見ると放っておけない人情味にあふれた三上の、不器用すぎる生き方しかできない姿に、ジリジリして熱くなり、鼓動がどんどん速くなる。

打算から近づいた津乃田が、取り憑かれたように三上のことで頭がいっぱいになっていく様子は、さながら私たち観客と一緒。果たして三上の運命は――。もはや“うまい”なんて陳腐な表現は使えない国宝級の名優・役所広司が、どうしようもなく人好きする三上をリアルに体現(シカゴ国際映画祭・観客賞/最優秀演技賞受賞)。三上の人生に思いを馳せながら“本当にすばらしい世界とは?”と、自戒の念を込め、自分に突きつけずにいられない傑作だ。(2月11日より全国公開予定)
『すばらしき世界』公式サイト

 

『あの頃。』

映画『あの頃。』

©2020『あの頃。』製作委員会



アイドルヲタ仲間たちの破れかぶれな熱き青春放浪記

バンド活動にどん詰まり、鬱屈した日々を送る劔(松坂桃李)は、友人から渡された松浦亜弥のミュージックビデオに衝撃を受ける。“ハロプロヲタ”仲間と出会い、遅れて来た青春をディープに謳歌しはじめる。

劔樹人の自伝的コミック『あの頃。男子かしまし物語』を、『愛がなんだ』『his』の今泉力哉が映画化。仲野太賀や若葉竜也ら実力派が、超個性的なヲタ仲間を好演。松坂とともに踊り語る姿にドハマリ必至!(2月19日より全国公開予定)

『あの頃。』公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。


取材・原文/折田千鶴子


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