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CULTURE NAVI「今月の人」

永作博美さんインタビュー「今後は脚本の読み方が、明らかに変わると思います」

2020.10.22

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美魔女と呼ばれ始めて久しいが、相変わらず愛くるしさと美しさが絶妙に溶け合った魅力の永作博美さん。

主演映画『朝が来る』では、特別養子縁組で子どもを迎える佐都子を演じた。

不妊治療をする中で、夫・清和の無精子症が判明。夫婦の葛藤、子どもを諦める決断、養子を考える過程など、何度も夫婦の絆が試される。

永作博美さん
「今後は脚本の読み方が、明らかに変わると思います」

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「佐都子は、子どもを授かりたかったけれど授かれなかったキャリアウーマン。若くして子どもを産んだけど育てられなかったひかりと、女性2人の人生が、とても色濃く描かれている原作に、すごく充実した読後感を持ちました。ただ、いざ演じようとしたとき、佐都子が少しデキすぎた人間に感じられ、逆に難しいなぁ、と思って」

『あん』『光』などの河瀨直美監督は、“役そのものを生きる”まで役者を追い込み、そのリアルな息づかいをドキュメンタリーさながらに写し取る演出で有名だ。

「この役はセリフを覚えさえすれば、スルッと演じられてしまう役でもある。でも、誰もそんなものを望んではいないので、この作品の本質は何かを常に考えていました。クランクイン前、役上の関係で生活する“役積み”という準備期間もあって。例えば思い出話で登場する清和と佐都子のデートも、デート内容は清和(つまり井浦新さん)が決め、実際に宇都宮に餃子を食べに行き、清和へのプレゼントは私自身が選んで持っていく、と。そうすると早い段階で、“演じる”感覚は消えていました」

息子・朝斗と幸せに暮らしていたある日、産みの親・ひかりを名乗る女性から「返せ」と電話がくる。サスペンスフルな展開で観る者の心をつかみながら、現代日本が抱えるいろんな問題を照射し、ラスト、落涙必至の感動へ!

「最初に赤ちゃんを渡す際、ひかりが言う“ごめんなさい”が、ラストで佐都子に反転する展開には痺れましたね! 人って物事の本質に、時間をかけふっと音もなく気づく瞬間があるんだな、と。気づきによって生まれる感謝というか。命の誕生の奇跡と尊さ。血がつながっていなくても特別養子縁組で子どもを授かれた奇跡のようなご縁。身近なものへの愛しさ、シンプルな言葉の大切さや重さを、あらためて感じさせてもらえました」

演技力は周知のとおり、百戦錬磨の永作さんにとってさえ、今回の現場で得たものは大きかったそう。

「行間にいろんなものが詰まっていて、そこから出てくる本当にシンプルなひと言。例えば“ごめんなさい”に、本当にたくさんの意味が込められていて。これまで私、こんなふくよかな言い方ができていただろうか、と。明らかに今後、脚本の読み方が変わると思います」

もちろん“子育てあるある”もたくさん詰まった本作。実際に子育て中の永作さんも、日々の奮闘を笑いながら語ってくれた。

「自分の思ったとおりには何も進まないので、毎日が恐ろしいほど大変ですよ(笑)! 佐都子が朝斗の言葉を信じるか否かに直面しますが、似たようなこともありますし。子どもって語彙が少ないけれど、“あなたの言葉でちゃんと説明して”と私はとことん聞き出します。“適当な言葉で濁してはいけない”と、小学生相手に日々とうとうと言い聞かせて(笑)。そういうことが、これから必要なコミュニケーション能力につながると思うんです」

PROFILE

ながさく・ひろみ●1970年10月14日、茨城県生まれ。ドラマ『陽のあたる場所』で’94年に女優デビュー。近年の代表作に『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』(’10年)、『八日目の蟬』(’11年)、『四十九日のレシピ』(’13年)、『夫婦フーフー日記』『ソロモンの偽証 前篇・後篇』(ともに’15年)など。

映画『朝が来る』

©2020「朝が来る」Film Partners

清和(井浦新)と佐都子(永作博美)夫婦は、「特別養子縁組」という制度を通し、赤ちゃんを迎え入れる。それから6年、朝斗と名付けた息子と幸せな日々を送っていたが、産みの母親を名乗る女性から「子どもを返して」と電話がかかってくる。辻村深月のヒューマンミステリーを、河瀨直美が映画化した感動作。10月23日より全国ロードショー。


撮影/フルフォード 海 ヘア&メイク/重見幸江(gem) スタイリスト/安野ともこ(コラソン) 取材・文/折田千鶴子

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