銀行の通帳のデジタル化が進んでいます
大手都市銀行は、紙の通帳を発行せず、ネット上で閲覧できるデジタル通帳への切り替えを進めていますが、これまで利用者は紙かネットかのいずれかを選ぶことができました。しかし、みずほ銀行は2021 年 1 月 18 日以降に新規で開設する口座については、通帳を発行する際に手数料を取ると発表しました。一冊発行するにあたり1100円(税込)と、結構な金額です(1月18日以前に口座開設した場合や、通帳発行・繰越時に 70 歳以上の人にはかからない)。
また、今後毎年 1 月末時点で 1 年間以上記帳をしていない口座は、自動的に通帳レスの「みずほ e-口座」に変更するとのこと。新型コロナを受けて、「通帳レス」・「印鑑レス」・「ペーパレス」というデジタル化を進めるので、なるべく来店せず取引をしてほしいとの説明ですが、一言で言えば通帳管理にかかるコストをはじめ、様々な負担を削減したいのが本音でしょう。
他行では、三菱UFJ銀行「Eco通帳」、三井住友銀行「Web通帳」という名称で同様のサービスを進めていますが、デジタル通帳に変えればATM手数料を優遇する(三菱UFJは自行ATM無料に。三井住友はSMBCポイントバック契約口座をWeb通帳にした場合、コンビニATMが月3回まで無料など)などのメリットを受けられます。そっちの方がいいですよ、と利用者を誘導しつつ、デジタル化・効率化を進めていこうというのでしょう。
取引履歴は最長10~30年分が閲覧可能
とはいえ、通帳がネット閲覧だけになると不便はないのかと気になります。必要なのは過去のお金の流れ=取引履歴ですが、いつの分まで確認できるのでしょうか。
先のみずほでは最大10年分の明細を見ることができるダイレクト通帳のサービスを予定しています。三菱UFJではEco通帳及び取引推移表の申し込みで10年分、三井住友のWeb通帳は最大30年分(2019年10月1日以降の明細は30年の予定。それ以前のものは25か月)となっており、必要な部分はPDFやテキスト(エクセルで読めるCSV形式)化して印刷しておくことになるでしょう。紙の通帳のように開けば取引が一目でわかるという利便性はありませんが、なるべくペーパーレスにしたいとか、ネットやスマホで好きな時間に取引の確認をしたい人には抵抗はないかもしれません。ウエブ上で通帳の明細にメモができるなど、紙と同じような機能もあります。また、先日発生した「ドコモ口座」などの不正引き出しが発生した際にも、ネットですぐに過去の引き出しを調べられるのはメリットと言えるでしょう。
そういえば昨年、三菱UFJ銀行が2年間取引がない口座に口座管理手数料をかけることを検討しているとの報道があり、予定では2020年秋からとも言われていました。不稼働口座への手数料や通帳の廃止・有料化、他にもATMや振り込み手数料の値上げという流れは今後既定路線となっていくでしょう。使っていない口座は解約し、ネットバンキングをうまく使いつつ、上手に手数料を節約していくほかなさそうです。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。