「専業主婦は立派なキャリアになる」
現在LEEでの連載「育児書を捨てよ、子どもを見よ!」も人気を集めている薄井シンシアさん。海外勤務の夫について25年間海外で暮らし、17年間の専業主婦生活の後、「給食のおばちゃん」から5つ星ホテルの幹部にまで登りつめ、著書「専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと」(KADOKAWA)は、NHKでドラマ化もされ大きな話題となりました。
今回は、そんなシンシアさんによる新プロジェクト「First Step」によるトークショー「シンシアのグッドモーニング」のレポートをお送りします!
プロジェクトを通してシンシアさんが伝えたい事って?
実はこの記事を書いている私自身も、専業主婦期間を経てライターとして再び仕事を始めました。(詳しくは…「出産離職組の私が見つけた“ここちよい働き方”」「子育て中だからできる働き方もある!」)
また新型コロナの影響で延期になりましたが本来であればこの夏、夫の海外転勤に家族で帯同する予定だったため、元「専業主婦」で「駐在妻」でもあったシンシアさんのご活躍や発信を興味深く拝見してきたイチファンでもあります。
再び社会で活躍する「カムバック」した専業主婦はたくさんいる!
そんな私がまず惹かれたのは、この新プロジェクトを立ち上げたきっかけが「シンシアさんのように専業主婦から再び社会でも活躍の場を持つようになった女性がたくさんいるということを伝えたい」という想いだったことです。
「カムバックして成功した専業主婦」として、著書出版をきっかけに様々なメディアから取材を受け、数多くの講演会を引き受けてきた一方で、手応えをいまひとつ感じられられないでいた部分もあったというシンシアさん。
「講演会などに参加していただき、その時はモチベーションは上がっても次のアクションになかなか繋けられず、そのうち気持ちが萎えてしまうという方が少なくないと感じています。
またよく言われるのが『シンシアだから出来たのよ』という言葉。私は決して特別ではなく、同じようにカムバックした専業主婦はたくさんいますが、その存在が知られていないだけなのです。
『シンシアのグッドモーニング』を通して、ただ私の話を発信するだけでなく、彼女たちの存在を世の女性にもっと広く知ってもらいたい。そして『カムバック主婦』のファーストステップをどんどん紹介し意見交換を重ねることで、仕事復帰をするためのヒントを得ていただきたいと考えています。」
今回のゲストは、駐在妻キャリアサポートコーチ、飯沼ミチエさん!
私が取材させていただいた第6回目のゲストは、飯沼ミチエさん。
シンシアさん同様、ミチエさんも5年半に渡り駐在員の妻として2カ国に滞在。13年の専業主婦期間を経て、2015年に夫の海外赴任に同行する「駐在妻」の方々を対象にコーチング事業をスタート、悩める「海外駐在妻」をメンタルとキャリアの両面からサポートされています。
駐妻向けの情報発信や交流の場を目指したポータルサイト「駐妻café」の運営など幅広く活躍されており、実は以前ミチエさんが主催する渡航前オリエンテーション「海外生活を人生のチャンスにする5つのヒント」についてLEEwebで記事にさせていただいたこともあります。
専業主婦→起業までの、気になる道のり
特に現在、駐在妻や専業主婦の立場で将来的に再び仕事をしたいと考えている方にとって一番気になるのは、ミチエさんがどうして起業するに至ったかという道のりではないでしょうか。
一流大学ご出身で海外経験を活かし起業…というと手の届かないような存在にも思えますが、シンシアさんとの対談を通して一番心に残っているのは、ご自身の生き方やキャリアについてずっと模索を続けてきたミチエさんの等身大の試行錯誤でした。
シンシアさんからも「私が駐妻だった時に欲しかったリアルな情報、実際に現地で役立つアドバイスがたくさんあり感動した!」という太鼓判を押されていた渡航前オリエンテーションを始め、多くの駐妻の方々の支えとなり活躍されているミチエさんですが、これまでの紆余曲折全てが、今のミチエさんのお仕事に繋がっていると感じます。
結婚、夫の海外転勤をきっかけに専業主婦に
英語が好きで国際的な仕事に興味があり、またご自身の経験から留学をサポートするような仕事に就きたいという思いを持っていたミチエさん。卒業後は学習塾、留学生派遣団体、マー ケティングリサーチ会社に勤務。それぞれの場所で、組織の在り方や、毎日深夜に及ぶような働き方などに対して迷うことも多かったことから数回の転職を経験し結果的に様々なお仕事に携わることになりましたが、特に2社目では実際に高校生~社会人の留学に携わり、人の成長に立ち会えるお仕事に対してやりがいを感じていました。
そして結婚された旦那様の北京転勤を機にお仕事は退職され、半年間の北京生活から帰国後に妊娠、出産。日本で第一子を子育てする中で最初に「あれっ?」と思ったのが、周りのママがどんどん復職していく様子を見た時だったそう。
「児童館などで出会って仲良くなり、お互いの家を行き来し一緒に親子で遊んでいたママ友がだんだん復職し、ひとりふたりと減って行く。でもうちの夫は商社勤務で、いつまた転勤があるかわからない。会社内では『幼稚園の制服を買ってしまったのに急に転勤が決まった』みたいな話をよく耳にする中、娘を幼稚園に入れる段階になっても『うちはどうなるんだろう…』と先が見えず、とても私が仕事を探すような状況ではありませんでした」
「いつ居場所を奪われるかわからない」駐妻ならではの不安との戦い
そして赴任が決まった上海では、精力的にボランティア活動をするなど日々とても充実していたそうですが、2年後に今度はシンガポールへの転勤が決まります。
もともと3~5年は上海と言われていたため、顔が半分動かなくなる顔面神経麻痺になってしまうほど、非常にショックを受けたそう。
「どうしてそんなふうに突然自分の人生が変えられてしまうのだろうと、とにかく急に動くこと自体がショックでした。今思うと、これまで自分が懸命に形作ってきた居場所を奪われてしまうようで悲しかったのだと思います。」
シンガポールでは最初の半年間くらいは全てにやる気が出ず「上海に帰りたい、もうここでは友達ができなくてもいい…」とまで思いつめていたそうですが、少しずつ繋がりが生まれ友人ができ、色々な場所に出かけるようになり徐々に気持ちが上向きに。中国にいた時から習いたかったお琴を始めたり語学の勉強を再開したりして、再び毎日の暮らしが楽しくなっていったといいますが、トータル3年過ごしたところで日本への帰国が決まります。
「また居場所が奪われてしまった感覚があり、日本に帰ったものの次にいつ海外転勤があるかわからない状況。『私の人生、夫についていくだけなの?子どものお世話だけで終わっちゃうの?子育てと転勤が終わったときには、もう仕事するなんて無理じゃないの?』と、自分がこれからどんな働き方、生き方をしていきたいのか毎日悩んでいました。」
自身の生き方に悩む中で見つけた「自分にしかできない仕事」
そんな中でも行動を続けるのがミチエさんの強さ!
その頃、またいつ転勤があるかわからないならば自分で何か始められないかということを漠然と考えはじめ、「何もしないで悩んでいても仕方がない」と、まずは図書館で興味ある分野の本を次々と借りては読んでいたそうです。
ただ当時、シンガポールで出産した第二子である息子さんは幼稚園入園前の年齢。子育てしながらたくさんの量を読むことが難しいからと、今度は速読の教室に通い始めたことが転機に。
「身近に『自分で教室を開いて仕事をしている方々』がいると知ったことも新たな発見でしたし、何より、教室で勉強している時にふとしたきっかけで『とにかく仕事がしたい』という言葉が口をついて出てきたことに、自分でもはっとしました。ただ、またいつ海外に行くかわからないことを考えると、息子を保育園に入れてどこか会社に勤めるというまでには至らず、子育てシェアを目指す組織に登録し自宅で子どもを預かるママサポーターの活動などを頑張っていました。」
その後、今度はコーチングに興味を持ち体験講座に参加したところ、行ったその日に「これ好きかも!やってみたい!」と感じ勉強を開始。
そしてこのスキルを活かしてやりたいことはやはり、自分自身が経験してきた駐妻に向けてのサポートだと考え、そこからFacebookなどを通して最初はお友達の繋がりから「駐妻向けコーチング」をスタートさせました。
模索を続けてきたことが、現在のお仕事に活きている!
お話を伺う中で伝わってきたのが、新卒~ご結婚前の20代の頃も、子育てしながらの駐在中も、帰国後も、ミチエさんが常に自分が納得できる人生を探して精一杯努力されてきた真剣な姿勢でした。
「自分が興味を感じたことや、目の前にある自分のもとにやってきたチャンスに対して一所懸命対応しているうちに、未来が拓けていく経験を何度もしてきました。大変なことも多かったけれど、何一つ無駄なことはなかったと感じています。」
例えばミチエさんが運営されているポータルサイト「駐妻café」は、駐妻のための情報提供と交流の場であるだけでなく、ビザの関係で仕事をしてはいけない場合も多い駐妻の方たちが、ボランティアとして運営に関われるというところもポイント!海外での暮らしを活かして活躍できることが、駐在生活の中で大きな張り合いになっていると喜ぶ方がたくさんいらっしゃるといいます。
ご自身の経験を活かして駐在妻ならはの立場や悩み、不安に寄り添う姿勢や、「海外赴任が、駐在員本人はもちろん家族全員にとって素晴らしいチャンスとなるようサポートしていきたい!」という熱い想いは、ミチエさんだからこそ持てる良さであり魅力です。
そんな、自分にしかできないお仕事を見つけることができた大きな理由は、与えられた状況の中で、常に自分にできることを探し少しずつでも歩みを止めずに行動を続けてきたからこそだと感じます。
ただ、そんな生き方を自分らしいと話す反面、今後現在の活動をもっと広く展開していくために変化して行くことも重要だと考えているそうです。
「世界中の駐妻が必要としているとても良いコンテンツだからこそ、より多くの方に届けるために、活動を拡げて行くべき」というシンシアさんからのビジネス面での具体的なアドバイスにも、持ち前のひたむきさで真摯に耳を傾けられていました。
働く上で、お金と同じくらい重要なことって?
「仕事をして、その対価としてお金をもらうということが一般的な考え。でも私はこれまでの経験から、お金と同じくらい重要なのが『経験と人脈』をもらうことだと思っています。みんな『働く』ことにこだわるけれど、例えば駐在妻という立場にいる場合はそう簡単に働くことはできないので、海外にいる間は『お金にならない働き方』をすればいい。」
そうやってシンシアさんが話してくださったのが、バンコク駐妻時代にしていた美容レーザークリニックでの通訳のエピソードでした。
美容大国で、当時から美容レーザーが普及していたバンコク。腕が良いと評判が高いけれど日本語が話せないお医者さんのもとに通いたいという方が多く、ご主人の職場である大使館の知人の繋がりで通訳を頼まれたといいます。
基本的に「お願いされたことは断らない」がモットーのシンシアさんは、そのうち様々なお客様と一緒に先生のもとに足繁く通う様になったといいます。
バンコクでも通訳でお金をいただくわけにはいかない状況でしたが、頼まれた駐在員のご家族など周りの方との関係も深まり、クリニックに通ううちにレーザーの知識もつき、お医者様からも感謝され無料で最新の施術をしてくださることもあったとか。学校の集まりに顔を出した時には、周囲の方がシンシアさんの変化にザワザワするくらい(笑)の美容効果だったといいます。
お金以外にも、そうやって人生で見ると貴重な経験や繋がりを得られることは多く、特に駐妻の方は海外にいるからこそ普通では得られない色々なチャンスがあるはず、というお話はとても心に残りました。
またそれは、「専業主婦という『仕事』」で培った力は必ず社会での仕事でも役立つという、これまでシンシアさんが繰り返し発信されてきた考えにも通じるものがあると感じました。
「外資系ホテルでは営業の仕事に携わりましたが、結果が出せた理由のひとつは25年間ずっと外交官夫人をやってきて、様々な方と会って色々な話をしてきたことだと思います。目の前にどんな方が現れても、だいたい話ができる『ネタ』があるんですよね」
もちろんこれはシンシアさんだからこそ成し得た部分も多いとは思いますが、一見自分のキャリアと関係がなさそうなことでも積極的に取り組むうちに新たな展開に繋がって行くというのは、シンシアさんとミチエさんおふたりの共通した部分だと感じました。
動き続けることが未来に繋がる
シンシアさんという傑出した存在のリードによって、一人の女性の半生じっくり耳を傾け伺いながら向き合ったひととき。お話を通して私自身のこれまでを振り返ることにも繋がり、未来に活かす様々な学びがありました。
最後にミチエさんからのメッセージとして「小さなことでも構わないので、とにかく行動してみることが大切。そこでの気づきや出会いが、新たな展開につながって行くと思う」という言葉がありましたが、これは第一回目からのゲスト全員に共通した意見なのだとか。そして僭越ながら私自身もまた、これまでの人生の中で強くそう感じています。
新型コロナを始め、今は本当に少し先の未来も読みづらい時代。
駐在妻や復職を考える専業主婦の方に限らず、この先たくさんの方が、これまでの世の中に比べて変化の多い人生を歩む可能性が高くなるのではないでしょうか。
今回のミチエさんのお話のように、シンシアさんと毎回のゲストの方々が繰り広げるトークの中には、そんな時代を生き抜く様々なヒントがあるのではないかと思います。
興味を持たれた方は是非、日曜朝の1時間半を自分のために使ってみませんか?
毎日忙しい中でご家族の都合などもあり、時間を作るのは大変なこともあると思います。
でもまずはそれが、より良い未来のへの第一歩、まさに「First step」になるかもしれません!
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。