子どもは夢中になれることがあれば、自発的にそれに取り組み、ぐんと成長するもの。
でも、「夢中になれるもの」って、どうすれば見つかるの? 親はどうサポートすればいい?
生物学者 福岡伸一先生に、夏休みの過ごし方&少年時代のエピソードをうかがいました!
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号の再掲載です。
生物学者 福岡伸一先生に聞く!
夏休みの過ごし方・夢中のタネの育て方
PROFILE
ふくおか・しんいち●1959年、東京都生まれ。京都大学卒業後、米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授などを経て、現在青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員研究者。分子生物学を専攻し、専門書からエッセイまで著書も多数。
気づけばあっという間の夏休み
子どもに挑戦して欲しい、おすすめの過ごし方は?
「夏休みのよいところは自由な時間がいっぱいある、ということです」と福岡先生。
「夏休みのよくないところは、いっぱいあるはずの自由な時間が、あっという間に終わってしまうことです。
私のおすすめは、その自由な時間を使って、普段はこま切れになってしまうような、何か手間暇がかかることをひとつやり遂げる、という達成体験を持つことです」(生物学者 福岡伸一先生)
残りの期間を使ってじっくり何かに取り組もう!
「虫があんまり好きじゃない人は、例えば長い物語を全巻読む、というのはどうですか。私は『ドリトル先生』シリーズに夢中でしたが、今なら『マジック・ツリーハウス』でもいいでしょう。
あるいは、お父さん、お母さんからしばし離れて、ひとりで田舎のおうちで過ごす、というのでもよいのではないでしょうか。とにかく何かをコンプリートしてみましょう」(生物学者 福岡伸一先生)
福岡伸一先生の子ども時代は?
好奇心のかたまりだった福岡少年の、スゴイぞ4伝説!
物心ついたときから虫に魅了され、捕まえ、飼育し、調べまくった少年時代。好奇心はもちろん、行動力もハンパなかった福岡少年の仰天エピソードとは!?
1 顕微鏡について調べようと小学2年から図書館に通いつめる
両親に買ってもらった顕微鏡に魅せられ、「この素晴らしい装置は、いつの時代の、どこの、誰が、どうやって作り出したものなのか?」という源流をたどりたくなり、図書館に通いつめた小学生時代。
そこで、図書館には書庫があることや、本は日本十進分類法に基づいて分類されていることなど、さまざまな知識を得る。福岡少年にとって、図書館は智の宝庫であり、遊び場だった。
「でも図書館の一番すばらしい点は、一生かかっても読みきれないほどたくさんの本があることを知ることだと思います」(生物学者 福岡伸一先生)
2 もしや新種発見!?虫を国立博物館に持ち込む
新種の虫を見つけ、「フクオカクワガタ」のような名前をつけて図鑑に載せることを夢見ていた福岡少年。家の近くで"初めて目にした虫"に心躍らせ、大発見を報告すべく、国立科学博物館へ。
話を聞いた受付の人がバックヤードに案内してくれ、紹介してくれたのが〝研究者"。
結局、「ごくありふれたカメムシの幼虫」と判明し、新種発見とはならなかったが、これが、「研究者という生き方がある」という発見につながった。
3 絶版本を手に入れるべく著者に手紙を書く
小学3年生頃のこと、「この本が私を呼んでいる」と手にした本(タイトルは英語、中は日本語)の1ページ目に載っていたアレキサンドラトリバネアゲハの写真に驚嘆!
手に入れたいと切望したが、本はすでに絶版、しかも禁帯出。
そこで著者に、「手元にあれば譲ってほしい」と手紙を送ることに。返事はきたものの、著者自身、余分な本は持っておらず。
「結局大人になってから古本屋で見つけて、定価の数倍の値段で購入しました」
4 昆虫のエサになりそうな葉っぱは近所のどこにあるかを完全把握!
「小学生時代、採取してきた虫を家で大量に飼っていました。エサとなる植物はベランダで栽培していましたが、それだけでは足らず、時折ご近所でこっそり調達。町内のどの家に、どんな葉があるか把握していたほどです(笑)」(生物学者 福岡伸一先生)
ところがある日、その家の人に見つかり、厳重注意を受けてしまう。このままでは、大量の扶養家族を養えなくなる。
そう危惧した福岡少年は、意を決して、母にこれまでの行為を告白。
すると母は、一緒に謝りに行ってくれ、しかも、「飼っている昆虫のために葉っぱが必要なので」と頼んでくれたとか。以来、葉っぱを採るのはご近所公認に。
イラストレーション/根津あやぼ 取材・原文/村上早苗
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号『生物学者福岡伸一先生に聞く 夏の子ども、「夢中のタネ」の育て方』の再掲載です。
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