厚生年金の人は4月・5月・6月の給与明細に注目を
少しずつ日常が戻ってきています。街にも駅にもずいぶん人が出ていますが、引き続き在宅などのリモートワークを推奨する企業も多いようです。満員電車に乗る必要がなく、自分のペースで仕事ができるのは歓迎すべき変化。ただし、ちょっと気になることもありました。
#ステイホームの働き方のせいで、将来受け取れる年金額が変わるかもしれない――という点です。会社員が支払っている社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)は、その人の「標準報酬月額」によって決まっています。この数字は4月・5月・6月に受けた報酬の平均額から算出されるのですが、報酬には基本給のほか通勤手当や残業手当なども含むので、「この時期にはなるべく残業しないほうが社会保険料が安くなる」なんて“裏ワザ”もよく聞きます。
ここで、おや?と気づいた人もいるのではないでしょうか。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、今年4月の一般労働者の給与のうち残業代や休業手当を示す「所定外給与」が前年同月比で12.2%も減ったそう。ちょうど4月から始まった緊急事態宣言により休業や在宅勤務などが増えたために残業代の支給が減ったことが影響しているのでしょう。その結果、給料から引かれる社会保険料が昨年よりも少なくなる人が出てくるかもしれません。
負担する額は減るが、年金額も減るかも
「社会保険料が安くなるならいいことじゃない」と喜んでばかりもいられません。国民年金ではたくさん稼いでいる人もそうでない人も、払う保険料も受け取れる年金額も同じですが、厚生年金の場合は違います。保険料が安くなるということは、将来受け取れる年金額も減る可能性があるのです。決定した標準報酬月額は原則として9月~翌年8月まで使用され、10月の給与明細から反映されます。その時期の給与明細で厚生年金保険料が変化していないか、ぜひ確認を。
新型コロナにより、この先の働き方はテレワークや間引き出社が当たり前になるかもしれません。そうすれば、通勤手当などの手当の見直し議論も起きるでしょうし、会社の業績が悪化すれば賞与の減額も考えられます。会社員の給与や賞与は将来の年金額ともつながっています。この先の働き方が変化すれば、将来のお金事情も変わってくるのです。後で「こんなはずじゃなかったのに」と慌てないためにも、受け取った給与明細にはしっかり目を通しておきましょう。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。