

ファンタジーなのに、保活、育児分担、母の呪縛などリアルな描写が話題の漫画『伝説のお母さん』。
作者のかねもとさんに、作品や自身も縛られた母親の呪いについてお話を聞きました。

『伝説のお母さん』¥920(KADOKAWA)
魔王を封印した伝説の魔法使いが、待機児童を抱えるお母さんに! 再び戦うため、 保活、夫との育児シェアなど難関に立ち向かう。前田敦子さん主演でドラマ化されたことでも話題!
出産することで「女性の力が埋もれてしまう」と感じるようになったから。待機児童問題では、点数次第で保育所に入れず親が仕事を辞めるしかない状況。家庭環境での公正な判断だとは思うのですが、現状を知ったときはショックでした。そして、辞めるのは大体女性です。それが「世界を救った伝説の魔法使いでも、待機児童問題の壁に当たる」という物語のきっかけになったと思います。
私自身、小学1年生と3歳の子どもの母親。出産前は漫画家を目指して、漫画の投稿をしながらパートを。長男の産後数カ月くらいで収入を目当てに、家でできるゲームのシナリオライターの仕事を開始。その頃には夢は諦めて、漫画は描かなくなりました。長女出産の頃、育児イラストやエッセイ漫画が流行っていて、友達のすすめで描いてみることに。SNSで多くの人が話題にしてくれて、応援の力でここまで広まったのだと思います。

©かねもと/KADOKAWA
一番は、離乳食やごはんは親がきちんと作れば子どもは絶対食べる、というもの。一時保育をお願いした保育士さんから「嫌いだからって食卓に出さないと食べなくなる」と言われたのを今でも覚えています。律儀に守って野菜を出していたものの一切食べず、残された食材を見るたびに憂鬱に。「子どもが食べないのは食事を作る親のせい」のようなものが本当につらかった。偏食を気にしなくなったら、野菜でもなんでも食べるようになっていました。
子育て世代はずっと「お母さん」のイメージに縛られています。社会や他人の視線はもちろん、自分自身がとらわれていることも。『伝説のお母さん』でも、子育ては女がするものだと思っていた魔法使いが「やっぱり自分が魔王を倒したい」と本当の気持ちに気づきます。そこまで大げさでなくても、「母親なら~べき」というものの中で、自分がつらいことはやめてみる。ファッションでも生活習慣でも、自分を解き放てるものはあると思います!

©かねもと/KADOKAWA
育児には評価がなく「何をやっているんだろう」とむなしく感じてしまうことも。仕事は完成させれば対価として報酬が発生します。最初は、頑張ればおもしろいと言ってもらえて、評価されることがうれしかった。今は、子どもを育てながらでも、漫画家になる夢を叶えることができた私のことを知ってもらえたらと。"母親はこうあるべき"と縛られている人に、こんな形もあるんだよと伝えられたらと思っています。それが今、漫画を描く理由です。
次回は「犬山紙子さんと堀越英美さんによる対談【なぜ母親は罪悪感を感じてしまうのか?】」をご紹介いたします! 詳しい内容は2020年LEE5月号(4/7発売)に掲載中です。
イラストレーション/かねもと 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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