新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のための臨時休校が続いていますね。在宅勤務しながら子どもの面倒を見る働くママ、子ども3人がどこにも行けずにずっと家にいる主婦のママなど、私も周りでも各家庭で大変な状況が続いています。
あまりに急な臨時休校で学校も家庭も学童も大混乱
今回の臨時休校までの流れを一度振り返ってみると、政府が小学校、中学校、高校の約1カ月の臨時休校を発表したのが2月27日(木)の夕方。休校がスタートするのが週明けの3月2日からとあって、学校現場では、金曜日の1日で準備をしなければならない事態となりました。
一方、働く親たちの間でも、1人で留守番をさせるのがまだ難しい小学生の子どもを、いったいどこに預ければいいのか、学童は開くのかと混乱しました。
私が暮らすさいたま市では、朝から、通常の学童の開所時間である14時頃までは学校で預かるという対応がなされています。しかし、学校へ預けても、基本的には友達としゃべるのはだめ、離して置いた机に1人ずつ座りずっと自習という状況(学校によって細かい対応に違いはあるよう)。小学校低学年の児童にとっては、かなり精神的なダメージが大きいことが容易に想像できます。
このように、子どもはもちろん、親も学校の先生も学童の先生も、関係者全員が疲弊するような事態になぜなってしまったのでしょうか。また、急な対応を迫られた学童の運営は、現状どうなっているのでしょうか。保育や教育に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんに話を聞いてきました。
人員、予算…学童現場に大きな負担がかかっている
「今回の突然の休校決定によって、いちばん大きな負担を強いられているのが、学童保育や保育園などの現場です。特に学童は、通常なら午後から開所するものを急に朝から開けろと言われても人員が足りない。そのための予算もつかない。さらには、マスクや消毒剤などの衛生用品も安定的に入手できず…。このままでは、安全に子どもを預かることができないと、全国の学童の運営者や支援員さんたちから悲鳴が上がっています」(猪熊さん)
そもそも、感染拡大を抑制するための臨時休校なのに、学校以上に密度の高い空間に、いつもよりも長時間、子どもたちが滞在するということは本末転倒とも言えます。休校直前に、私の娘が通う学童の先生と話をした際、「こんな状況で、子どもたちの健康と安全を保てるのか不安です」とおっしゃっていました。
学童には、今回の臨時休校の対応のための交付金が出ると聞きましたが、それも一律ではないとか?
「児童の放課後受け入れ事業は3つの種類に分かれていて、当初、交付金が受けられるのは『放課後健全育成事業』として運営されている学童のみとされていました。『小学校低学年児童の受け入れ事業』として保育所卒園児の受け入れをして運営している学童や、『自主事業』として保護者が場所を借り、支援員さんを雇って運営している学童などには、交付金は出されないことになっていたんです。今回は、保護者からお金は取らずに運営する、ということが国から出されていましたので、補助金がなければ全部学童の持ち出しになってしまいます。それはおかしいということで、3月4日に保育園の経営者などで組織している保育推進連盟から自民党の保育議員連盟に要望書が提出されました。その結果、2日後の3月6日に補助金額を1日あたり10200円から30200円に引き上げることになりました。とはいえ、保育園の中で開いている学童などの中にはまだ補助金が出ておらず、月に20~30万円程度の持ち出しになるという施設もあるようです」(同)
急な休校で何が起こるのか、政府は予想していたのか?
とはいえ、お金の面だけではないと思います。感染者が出ないようにという配慮をしながら、普段よりも長い時間子どもを預かってくれている学童の現場は、どんな状況なのでしょうか?
「今回、学童や学校で子どもを預かる際には、1メートル以上離して子どもを座らせること、となっています。しかし、学童の設置基準では、施設の広さは子ども1人当たり1.65平方メートル。たたみ一畳分です。そもそも1メートルずつ離して座らせるのは無理でしょう。また、マスクやアルコール消毒剤なども入手しにくい状況が続いており、このままストックが尽きたらどうすればいいのか、と悩んでいる施設もあると聞いています」(同)
そもそも今回の休校については、あまりにも急すぎて、誰も準備ができなかったと思います。こうなることは、政治家の先生方もちょっと想像すればわかると思うのですが…。
「学校を休校にしたらどんなことが起こるか、政治家の皆さんは具体的にイメージできない部分が大きいのだろうと思います。前述の要望書の提出の前に、自民党の保育議員連盟の政治家に対して、要望書の内容を説明する勉強会が行われましたが、『小学生なら家にいれば、保育園児も一緒に家で留守番できるんじゃないの?』などという質問をされる議員もいたりして、いかに政治家の皆さんが子育ての実態をご存知ないのかと残念に思ったりしました」(同)
子育て中の親からすると、政治家の皆さんは、学校を休校にするということを、ものすごく簡単に考えていたんじゃないか…と思ってしまいます。
これを機に学童のよりいっそうの充実を
そもそも学童は、これだけ共働き世帯が増えた今、なくてはならない施設であるのにもかかわらず、保育園に比べて制度が整っていない印象を受けます。そのため、今回も現場で対応する支援員の方たちに大きなしわ寄せがいっているという側面もあるのではないでしょうか?
「保育園は昭和23年に児童福祉法が定められ、その中で運営されてきました。すでに75年の歴史があるんです。一方、学童は保育園と同じくらい歴史は古いものの、法定化されたのは平成9年の児童福祉法改正からで、保育園ほど制度が統一されていないんです。今の社会において絶対になくてはならない大切な施設なのに、今回のことで初めてその存在を知った方も多いかもしれません。今回の騒動が、学童保育の制度をよりいっそう充実させたり、支援員、指導員の待遇を改善するなどのきっかけになればと思います」(同)
日本国内の感染者はまだ増加しており、いったいいつになったら終息するのか、まったく目処が見えていません。このままでは新学期を無事に迎えることができるのかも、親としては不安。せめて、政府は、どの段階になったら臨時休校が解除されるのか、具体的な目処を仮にでもいいから示してほしいもの。
ちなみに我が家では、毎日学校で約5時間の自習は子どもも辛いのではないかと、3月前半は、私と夫の実家に1週間ずつ預け(なるべく人口密度の低いところへ、という意味もあり)、今はどちらかが家にいる日は学校・学童には行かせずに過ごしています。また、仲のいいママ友と協力しあって、預け合ったりもするようになりました。1日も早く、感染拡大が終息することを願うばかりです。
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相馬由子 Yuko Soma
ライター
1976年、埼玉県生まれ。夫と7歳の娘との3人暮らし。編集プロダクション、広告系出版社を経て独立。ウェブ、雑誌、書籍などで編集、執筆を手がける。最近では、子育て、アウトドア、旅、食などのテーマを担当することが多い。合同会社ディライトフル代表。