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波瑠さん『弥生、三月』は「愛することの苦しさを知る大人の方に観てほしい」

2020.03.19

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等身大の女性を見事に体現し、常に出演する作品を話題作に導いてきた波瑠さん。そんな波瑠さんが「オファーを受けるか悩んだ」と語るのが、主演映画『弥生、三月 -君を愛した30年-』。なんと高校生から50代までをナチュラル、かつ丁寧に演じた。

波瑠さん「愛することの苦しさを知る大人の方に観てほしい」

「震災や身に降りかかる過酷な出来事を間にはさみながら、30年にわたる男女の運命を描く物語を、私が背負うのは無理なんじゃないか、と。でも本来の私のままでいいという、監督の熱意に負けました」

その監督とは、『同期のサクラ』『過保護のカホコ』など、稀代の脚本家として知られる遊川和彦さん。『恋妻家宮本』に次ぐ監督第2作目となる本作で、“今までにないラブストーリー映画”を掲げ、遊川監督のオリジナルストーリーで“30年間を3月だけで描く”ことに挑んだ、まさに意欲作だ。

「クランクアップが高校時代だったり、かなり時間軸が混在した撮影でした。遊川さんが書かれるセリフはとても真っ直ぐなので、その言葉の向こう側にどんな思いがあるのかひとつひとつ考えて言わないと、ただの直球にしかならない。テイクを重ねるごとに100m全力疾走したみたいに息が上がっちゃって(笑)。難しくて大変でしたが、とても濃厚な時間でした」

波瑠さんが演じた弥生、特に高校時代の彼女は、人間として憧れるほどカッコいい。親友サクラの病気を揶揄する級友らに啖呵を切り、“この病気は移らない”とクラス全員の前でキスしてみせるのだ。

「映画の撮影においても、女の子役の女優さんとキスすることはあまりないので本当に緊張しました。特に今回、キスする気のない女子に自分の唇を合わせに行くという、ダーツかなにかをしている感覚というか(笑)。しかもそのシーンが美しくなければ、なんの意味もなくなってしまう。少し男の子の気持ちがわかった気がしました」

そして訪れるサクラの死――。以来、あんなに溌溂とステキだった弥生に、次々と理不尽な不運が降りかかる。実は好き合っていたサンタとも、すれ違いが続く。

「10代で親友の死を経験するなんて……。ずっと弥生はサクラと話したい、声が聞きたい、などいろんな年齢で思い出しながら生きていると思いました。その抱え続ける気持ちを大事に演じました」

それにしても、恋が実らぬまま誰かを30年も思い続けるなんて!

「すごいロマンティックですよね。でも、ひとりの人を愛した時点で、ただ『好き~』とお花畑状態でいられるわけはない。本作はラブストーリーですが、“愛するって苦しいよね”という、愛することの重さみたいなものも、すごく描かれている。だから、それを知る大人の方々に観てほしい作品です」

弥生とサンタの恋の行方は観てのお楽しみ。さて50代に至るまでを役で生き、年齢や変化について波瑠さんが感じたこととは?

「気をつけたのは、典型的な形で、つらい経験を重ねた弥生の50代を演じないこと。今のアラフィフの方は皆おキレイだし、髪をただボサボサにするのも違う、そのバランスが難しかったです。50代まで生きて一番感じたのは、人生の節目が持つ意味の大きさの違い。卒業式にしても、SNSの発達した今とでは、お別れの意味が違う。その場では寂しくなると思いますが、私は携帯やSNSのつながりがなくても大丈夫派ですね」

Profile
はる●1991年6月17日、東京都生まれ。2004年より芸能活動開始。近年の代表作に『コーヒーが冷めないうちに』『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』(ともに’18年)、ドラマ『G線上のあなたと私』(’19年)など。日台合作ドラマ『路~台湾エクスプレス~』が5月放映予定。

『弥生、三月 -君を愛した30年-』

『弥生、三月 -君を愛した30年-』

©2020「弥生、三月」製作委員会

高校生の弥生(波瑠)は、親友のサクラ(杉咲花)を病で喪う。サクラが思いを寄せた太郎、通称サンタ(成田凌)と弥生は惹かれ合いながらも、思いを伝えられないまま時が過ぎる。それから30年、描いた夢とはまるで違う過酷な人生を歩んでいた2人に、思わぬ形でサクラから声のメッセージが届く。3月20日(金・祝)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。


撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/犬木 愛 スタイリスト/黒崎 彩 取材・文/折田千鶴子

ワンピース¥58000/オット デザイン(ルーム エイト ブラック) ゴールドイヤカフ¥10000・ダイヤイヤカフ¥15000/サザビーリーグ(アルティーダ ウード)

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