俳優・MEGUMIさんの素顔に迫るインタビュー。ブルーリボン賞を受賞された映画『台風家族』や『ひとよ』などお仕事について伺った前編に続き、後編では美容マニアだという彼女の普段のケアをはじめ、育児、来年40歳を迎える今の心境をうかがいます。
自分で自分のケアをしないとどうしたって老けていく
ーーMEGUMIさんは年齢に関係なく、挑戦する姿勢を感じます。30代になると服やメイクも固定しがちですが、いつも新しいものにチャレンジしています。
好奇心が強いほうだとは思いますけど、停滞期もありました。30代前半、子どもが生まれたころ、いろんなことが何でもいいや、みたいな時期で。
そんな時に金沢で経営しているカフェに、メイクアップアーティストの濱田マサルさんや早坂香須子さんがメイク講座に来てくれたことがありました。二人にメイクしてもらうと、「こんなにきれいにしてもらったの、初めて」「介護に疲れていたけれど、こんなにいい香りに包まれて」って、お客さんが泣くほど感動していたんです。「化粧でこんなに変わるんだ」というのを目の当たりにして。毎日忙しいけれど「自分で自分のケアをしていかないとどうしたって老けていく」ってことがわかってきたんです。
それに自分の顔や身体に触ると、マインドが上向いて選ぶ化粧品も変わっていくんですよね。さらに新商品を取り入れてみたり、似合わないと思っているアイシャドウにトライしてみたりとかは、あえてしています。
ーーワークショップが転換点になったんですね。
それが3年くらい前です。それまではブラウンのアイシャドウ一辺倒な感じだったんですけど、ちょうどミニスカートが穿けないと思ったり、Tシャツのサイズ感が変わった時期だったこともあって。アップデートをしなきゃいけないタイミングとメイクと服の移行期がリンクした感じです。
ーーお仕事でのスタイリングもメイクもご自身でされています。
以前の事務所が「自分でできるようになれ」って、メイクさんをつけない方針で、なんだかんだ20年くらい自分でしています。化粧品を見るのはもともと好きですし、今もドラマや映画はセルフです。やり続けているとさらに好きになっていくし、スキルも上がっていると実感できるので、楽しみながらやれています。
ーー普段のスキンケアを教えてください。
26歳の時、痩せたことでほうれい線が出ちゃったんです。そこから美容の旅が始まりました。番組で共演した佐伯チズ先生の肌があまりにもきれいで、秘訣をお伺いしたら、「安いものでいいから、朝と夜にシートパックを3分ずつしなさい」と。いまだに実践しています。週1回のクレイパックで、たるみの原因になるらしい古い角質はケアしています。体内のサビを解消するために、毎朝レモンを絞った水や白湯を飲んだり、酵素浴に行ったり。ホットヨガと筋トレもやってます。美容は手をかけたぶんだけ結果が出るから、好きです。
ーー日々の食事で気をつけていることはありますか?
撮影に入るとお弁当が続いて、体調が傾くので、普段は粗食です。納豆と五穀米、味噌汁で、できるだけ生野菜から食べるとか。キヌアとかスーパーフードにも挑戦したことがありましたけど、続かなったので、意識的に野菜を食べるようにしています。
冬はやっぱり鍋を作ることが多いですね。韓国料理が好きで、特に青山有紀さんとarikoさんのレシピが好き。スンドゥブとか海鮮キムチ鍋とかサムギョプサルとか、しょっちゅう作っています。
夫にとって大事なポイントを、人の100倍かけて押さえる
ーー彼はMEGUMIさんには家にいてほしかったんですね。
男性が求める理想の奥さん像に、家を守るっていうのがあると思うんです。それは理解していましたし、応えたい気持ちもありましたけど、専業主婦になる自分が想像できなかったんです。かといって、いきなりトップスピードで仕事を再開すると夫も驚くので、スケジュールは少しずつ増やしていきました。息子が幼稚園に入ったら誰かの手を借りて、とかその都度考えて、夫の意思も尊重しつつ、私も自分の考えを伝えつつ、一つずつ説得してゆっくりと今のスタイルができた感じです。
息子が10歳になって思うのは「自分で自分のことを構わないと楽しくない」ってこと。「息子のせいで」「夫のせいで」ってなっちゃうのが一番よくない。できる範囲でいいから、自分が楽しめることを重ねていくことが大切だなって。
ーー女性は出産などで仕事を辞めると再就職したくても家族に止められて、とか耳にします。MEGUMIさんはどうやって説得しましたか?
ポイントでものすごい尽くしています。夫の誕生日には、家中飾って、その1年間撮り溜めた写真をアルバムにして渡して、と思いっきり演出します。ツアーがファイナルを迎えたら「お疲れ様でした!」ってねぎらいます。そうすると、めちゃくちゃ喜んでくれるんです。で、次の日、「じゃあ、ちょっとロケ行ってくる」みたいな感じです(笑)。
夫にとって大事なポイントを、人の100倍かけて演出すると、その効果はしばらく続く気がしています。夫婦にはそれぞれスタイルがあると思いますが、盛り上げていくのがいいのかなって。「なんでやってくれないの」「私だってやってるじゃない」って言っても埒が明かないので。「働かせてくれて、ありがとうございます!」みたいな気持ちです(笑)。
ーー最初からそのスタイルでしたか?
最初は「なんでわかってくれないの」でした。ただ、お互い一人っ子なので、けんかのやり方がわからないから、いわゆる夫婦けんかをしたことがないんです。
ーー夫婦一緒の時は何をしてすごしていますか?
アートが共通の趣味なので、一緒に美術館へ行ったりしています。女性は特に付き合い始めは相手とすべてを共有したくなりますよね。でも全部を共有するとお互い苦しくなるんだなって。ふたりの形も変わってきましたよね。
息子の進路は本人次第
ーー育児に関してはどうですか?
もちろん意見が合わないこともあります。夫は幼稚園、私は保育園に通っていて、自分が育ってきた環境によって考え方は違ってきますよね。最初は夫が言うことを聞いて、立てていたんです。でも送り迎えもお弁当作りも私だし、このまま続けていくのは無理かも……と。それで途中から切り替えて、私がリサーチして、いいと思ったものを報告するスタイルになりました。
ーーMEGUMIさんの義父、ご主人と芸能一家です。先日息子さんが映画デビューされましたけど、芸能界に入れたいという希望はありましたか?
まったく思っていませんでした。だから映画のお話をいただい時に、本人に確認したら「やりたい」と。そこで初めて息子は芸能界に興味があったんだ、と知りました。本人は続けたいみたいですけど、まだ10歳ですし、いろんな可能性があるので、海外も含めていろんな経験をしてほしいです。私は芸能界の道を選んでも選ばなくても、本人の意思で決めてほしいと思っています。
ーー演技のレッスンをさせていたわけではないんですね。MEGUMIさんとしては息子さんにこうなってほしいとか、願望はありますか?
息子に何が向いているか、わからないので、柔道、サッカー、英語スクールと、小さい頃からいろいろ経験させました。どれも瞬殺で止めました(笑)。残ったのが、ドラムだったんです。息子は2月生まれの一人っ子ということもあって競争心がないみたいです。ドラム教室はマンツーマンで自由にやらせてくれる先生だったこともあって、個人プレイでできますし、叩けば音は出るし、ライブもたくさん見ていますし、いろんなことがあいまって興味がキープできているんだと思います。もう3年くらい続けているので、大人並みに演奏できます。ドラムにしても演技にしても、本人ががんばって選ぶことですから。
育児のエンディングが見えてきて、子離れの準備が始まった
ーーそうして一歩引いた目線で見られるのは、息子さんが10歳になったからですか?
それはあるかもしれないです。もちろん食事を作るとかはしていますけど、選択させないとだめだなって。もう少しで息子が離れていく、育児のエンディングが見えてきたというか。私もその準備をしなければいけない。いつまでも甲斐甲斐しくしていると息子もだめになるし、子離れできずに自分が立ち直れない姿も想像できるんで。親子ですけど、個人同士になっていかないと。
ーーその意識はいつから生まれましたか?
小学4年生あたりから、別人のように大人びた発言をし始めたんですね。こないだなんて、いきなり「一人暮らしがしたい」って言い出して(笑)。自立したいんだなって。寂しいけど悪いことではないから、そこは伸ばすしかない。そのへんで子離れの準備が始まった感じです。
ーーこれまでの育児は振り返るとあっという間でしたか?
そうですね、後悔ばかりですけど。周りのママたちは時間をかけて3Dのお弁当作ったり、きちんと目をかけて育児したりしているので。もっとこうすればよかったな、っていうのはあります。
ーーでも仕事しながらだと、そこまで手をかけるのは厳しいじゃないですか。
そうなんですよね。私は自分のしたいこともやるっていうタイプだし。それは申し訳ないなと思いますけど、夫や私の姿を見て学んでほしい気持ちもありました。だから現場もたくさん連れて行ってました。
ーーいろんな大人と触れ合わせていると人見知りしなくなりますよね。
まったくしないんです。私の現場だとマネージャーと二人の時間も多いですし、夫が現場に連れて行くとロックな人に囲まれて、また違った環境なので、人見知りは皆無ですね。
減点方式ではなく加点式にして、自分を追いつめない
ーー俳優、経営、母業。お話を聞いていると、無駄な時間がなさそうですね。
疲れきって何もしない時もありますけどね。昔は休むと怠けている気がして嫌でしたけど、35歳すぎると疲れも溜まっているし。今日は休むってスケジュールを決めて休みます。
ーー私、8時間は寝なきゃだめなのってタイプではないんですね。
そんなことないです。最低7時間は寝てますよ。いろいろ挑戦して「これで人生盛り上げてんな」って自分を洗脳している感じ。どMなんだと思います(笑)。
ーーそのスケジュールでしっかり寝ているのがすごい。
海外も1泊でいいからでも行きたいタイプ。2泊でキューバに行ったりもしました。
ーーフライト時間のほうが長いんじゃないですか。旅行が息抜きですか?
そうですね。芸能界も長くなってきて、その中での役割が増えているし、経営面でも社員が私にジャッジを求めてきますし、家の中もそうですし。一人の時間が皆無だから、たまに頭の中がカオスになるんですよね。そういう負のスイッチが入った時は、旅行に行かせてもらいます。
ーー旅行はお子さんが何歳のときからできるようになりました?
息子が2歳の時、仕事を理由にL.A.に連れて行ったのを皮切りに、私は海外旅行に行く人ってイメージをじょじょに家族の中に植えつけました(笑)。ただ自分の中の線引きがあって、長く一人旅をするのは避けているので、L.A.でも2泊とか。
ーー一人旅の間、息子さんは彼が見ているんですか?
そうですね。それは感謝しています。とはいえ、ふたりの子どもなので。
ーー責任感が強いママもMEGUMIさんの言葉でいい具合に肩の力が抜けそうです。
我慢して自分を追いつめてもいいことはないと思っているので、いい意味で適当に考えることは自分にも課しています。洗い物が溜まっていても「トイレ掃除したし、いっか」って。減点方式じゃなくて加点式にしないと私も家族も疲れちゃいますよね。
相手を褒めていると人間関係がよくなる
ーー今年39歳。来年はついに40歳ですね。
生々しい年になりますが(笑)、先輩方に聞くと、口を揃えて「40代、楽しいよ。許せないことが減っていく」と言うし、30代はやりたいことがなかなかできなかったのもあり、ちょっと楽しみにしています。きちんと美容に取り組めば見た目をキープできるのに、中身は成熟していていい年代かもしれないですね。
ーーMEGUMIさんが28歳のときに出演していたバラエティ番組で「42歳の気持ちでいる」っておっしゃっていて、わざとおばさん風な感じを出していました。そろそろ内面と年齢の数字が合い始めている感じがします。
毒を吐いて笑いを取ることを求められ、30人の芸人中で紅一点とか、20代はそういう役割だったと思っています。構えて斬って笑いをとって「おっしゃ!」って感じだったので、可愛くいることや甘えることがまぁ苦手。でも年齢を重ねると、人の弱さがわかるようになり、見える景色が変わってきました。女っぽい役を求められることも多くて「だったら女っぽいほうがよくない?」って考えるようになって。
大好きな中野信子さんの著作を読み漁っている中で「相手を褒めると良好な関係になる」と書かれていたんです。そこから意識して共演者やスタッフを褒めていたら、おのずと女らしくなっていったというか。褒めると、みんなうれしそうなんですよ。作品で共演する方々もそうです。みなさんスターなのに実はなかなか褒められていないみたいで。スターだから声にしなくてもわかるでしょって前提があるから、みんな褒めないんでしょうし、そもそも言葉にするのが苦手な人も多いですよね。私も大の苦手でしたけど、言ってみると意外と楽です。いい関係が築けると、人としても仲良くなれると思うので、これからも積極的に褒めます。
ーー褒めることの効能ってどんなことがありますか?
ずっと仕事し続けて40代も近くなると、自分軸ができますよね。でも自分軸で行動していると、妙に圧が生まれたりして……。バラエティ番組の打ち合わせに行くと、手が震えているスタッフさんがいるんです。私のこと、ビビってるんですよね(笑)。怒っているつもりなんて全然ないのに! いかに要らない圧を排除するか、そのために褒めているところもあるかもしれません(笑)。
MEGUMIさん
1981年、岡山県出身。グラビアアイドルとしてデビュー後、バラエティタレントとしても活躍。2009年に出産後、本格的に俳優業にも進出。ドラマや映画を中心に存在感を示している。俳優業のほか、金沢にある、古民家パンケーキカフェ『Cafe たもん』の経営、『ジェミーブロッサムズジュエルリップ』のプロデュースなど、芸能界以外の分野でも才能を発揮している。
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撮影/川上 優
津島千佳 Tica Tsushima
ライター
1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。