「もしものときに備えるために、将来を見越して積み立てておかなくちゃ!」
そんな風に、すすめられるがまま、保険に加入していませんか?
高い保険料を払っているのに、いざというときに使えない危険性も。いえ、そもそも、その「保険」、あなたにとって本当に必要なもの・・・?
"保険貧乏"で老後困らないために、スペシャリストに、保険との正しい向き合い方をうかがいました!
この記事は2019年11月7日発売LEE12月号の再掲載です。
噂のプロがジャッジ!
就職、結婚、出産・・・「とりあえず」保険に入っていませんか?
保険に対する心構えは?
保険を少し知るだけで、「必要と思える保険」との付き合い方がわかる!
「とりあえず」で保険に入っていると、知らず知らずの内にお金を失っている可能性も!そうならないためには、「必要な保険」を見極めることが大切です。
LEE読者397人に「保険」について緊急アンケート!※LEEweb会員(25〜45歳)に調査
Q 保険に入っていますか?
大半の読者が保険に加入。「家族や友人」のすすめのほか、「就職・結婚・出産」のような人生の変わり目が加入のきっかけに。加入理由では"将来が不安だから"という方が多数。
Q どんな保険に入っていますか?(複数回答あり)
加入トップは「医療保険」。長期入院や手術を心配してか、医療保険のみという人も目立った。年金保険の加入者が意外と多いのは、公的年金に対する不安の表れかも。
Q 月々の保険料はどのくらいですか?
平均保険料2万1498円
「医療保険で400円」から「死亡・医療・年金保険で計14万円」まで、さまざま。学資保険や年金保険などの貯蓄性がある保険だと、掛金が高くなるよう。
「保険に入る」のは当たり前?
まずは、そこを疑ってください
オフィスバトン「保険相談室」代表、後田 亨さん
「そもそも保険とは、まれに起こる、“自分では用意できない大金が必要になる事態”の備えに向いているもの。わかりやすいのが、現役世代の死亡に備える保険。月々数千円の掛金で、数百万円から数千万円の保険金が受け取れます。
つまり、保険はお金を調達する手段のひとつ。なので、預貯金や親からの援助など、別の方法でお金が用意できるという人は、入る必要があるのか疑問です。実際、私は民間の保険には入っていません」(後田 亨さん)
保険に入っていないということは……、多額の資産が!?
「いや、そうではありません(笑)。保険について知れば知るほど、私には必要ないと思ったのです。周りに流されるまま、いろいろな保険に入っていては、保険料がかさむ一方で、いざというときに必要な保障が得られないということもありますよ。
この先の長い人生を考えるために、ここで一度保険についておさらいを。ちょっと知るだけで、保険との付き合い方がガラリと変わるはずですよ」(後田 亨さん)
後田さんが解説!
保険に対する心得5カ条
1|「保険に入れば安心!」を捨てる
「保険に入れば安心という落としどころは疑問。なぜなら、保険はお金を失いやすい仕組みだからです。私は、極力利用を控えたほうがよいと思っています」(後田 亨さん)
商品設計の専門家によると、例えば、人気の医療保険の場合、保険料のおおむね30%程度が保険会社の運営費に充てられている見込みだという。
「つまり、ATMに1万円入金すると、3000円の手数料が取られるようなもの。安心感で判断せず、冷静に考えてほしいですね」(後田 亨さん)
2|最強の医療保険は「健康保険」
国民全員が公的な保険に入っている日本。「民間の保険を検討する前に、皆さんがすでに加入している国や会社、健康保険組合の保障について知ってほしい」と、後田さん。
治療費の自己負担が1~3割で済むのは健康保険のおかげだし、世帯主が死亡した際、遺族年金が支払われるのは、皆さんが社会保険料を払っているからです。
● シーン別公的保障
病気になる・ ケガをする |
健康保険 (自営業者など第3号被保険者は国民健康保険) |
病院での治療費は70歳未満なら3割負担。 高額療養費制度もあり、年収に応じて1カ月当たりの支払い上限が決まっている。 70歳未満で年収約370万~約770万円の場合8万100円+医療費−26万7000円)×1%)。 会社によっては健康保険組合から「付加給付」が支払われることもある。 |
家計を支える 人の死亡 |
遺族年金 | 18歳未満の子どもがいる場合、年額78万100円+22万4500円×子の人数(ただし第3子以降は各7万4800円)が給付される。 会社員は、遺族厚生年金も上乗せされる。 |
障害を負う | 障害年金 | 障害等級が1級の場合、年額78万円×1.25+22万4500円×子の人数(ただし第3子以降は7万4800円)が給付される。 |
病気やケガで 働けなくなる |
傷病手当 | 欠勤4日目から最長1年6カ月まで、支給開始以前の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3を給与支払いがない日数分給付。 |
※公務員・会社員・自営・専業主婦などで違いがあります。
「特に健康保険には高額療養費制度があり、一般的な収入の人の場合、1カ月あたりの自己負担の上限は約9万円。すでに最強の医療保険に加入しているわけですから、さらに民間の医療保険に入るまで必要があるのか、慎重に考えてみてはどうでしょうか?」(後田 亨さん)
3|入るなら少ない掛金で大きな保障の「死亡保険」
「少ない掛金で、もしものときにまとまったお金を得られるという保険のメリットを生かせるのは、掛け捨ての死亡保険。積み立てではない分、保険料は安くなります」(後田 亨さん)
注意すべきは、保障額の設定の仕方。教育費にいくら、家にいくらなどと、項目別に積み上げていくと、不安も膨れ上がる結果、保障額が多く、保険料も割高に。
● 民間の保険で用意すべきお金
【必要と考える保障額】
{毎月の生活費( )万円 × 12カ月 ×一番下の子が自立するまでの年数( )年}-遺族年金-(勤務先の保障)- 広義の自己資金
「教育費にしても住居費にしても、皆さんはいつもの収入の範囲内でやりくりしているはず。保障額も同じように、現実的に月々いくらなら万が一のときでもやっていけるのかを想定して計算するほうがいいのでは?
その額を一番下の子が自立するまでの年数分確保することが目安になります」(後田 亨さん)
4|預金金利と返戻率は比較するべからず
読者の中には、「預金金利より返戻率(払った保険料に対する将来受け取るお金の割合)が高いから」と、貯蓄性のある保険を、預貯金代わりにしている人も。
「貯蓄性保険は、『確かなこと』と『不確かなこと』で評価します。将来の返戻率は不確かなこと。110%や120%といっても、物価や税負担が上がると、実質的にはマイナスにもなるからです。
確かなことは、手数料などが高く、契約当初から、長期間元本割れが続くこと。したがって、元本割れしない預貯金との比較は禁物。お金を確実に増やせる方法は誰にもわからないので、せめて確実に発生するマイナスを避けることが大事だと思います」(後田 亨さん)
5|"一生涯の保障"で将来は安泰ではない
保険の保障期間は、「10年間」や「60歳まで」のように期間限定の"定期"と、一生涯保障が続く"終身"の2タイプ。後者のほうが安心かと思いきや、後田さんは、「契約時点で想定したリスクに対応した保障内容が、数十年後も有効でしょうか?」と。
「以前と比べると、日帰り手術が増えていますし、入院日数も短くなっています。それに新しい治療が健康保険の適用になることも。長期契約になればなるほど、現在の契約内容が時代に合わなくなる可能性が高いんですよ」(後田 亨さん)
"一生涯の保障"より、「当面は大丈夫」という"期間限定の安心"を、少ない保険料で買うほうが賢い選択かも!
イラストレーション/カツヤマケイコ 取材・原文/村上早苗
この記事は2019年11月7日発売LEE12月号『あなたにとって「必要な保険」×「いらない保険」』の再掲載です。
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